名前を持たないクラスを定義する — 無名クラス
ただし、先ほどのような例では、メンバクラスを利用するだけでは不十分です。というのも、HelloListenerクラスはsetOnClickListener()メソッドでしか利用しない使い捨てのクラスです。そのような場合には、最初から名前付けすらせずに、クラスの定義からインスタンス化までを一気にできてしまった方が便利です。これが以下のコードです。
View.OnClickListener listener = new View.OnClickListener() { @Override public void onClick(View view) { …中略… } }; button.setOnClickListener(listener);
ここでは、OnClickListenerクラスを定義し、インスタンス化する代わりに、インターフェースを実装したクラス定義を「new View.OnClickListener() {…}」として、直接記述しています。定義したクラスに対してHelloListenerのようなクラス名がありません。名前がないことから、このように直接クラス定義を書いたクラスを無名クラス、あるいは匿名クラスといいます。無名クラスは、他で再利用できない代わりに、定義からインスタンス化までをまとめて表せることからシンプルであるのが特長です。
もっとシンプルにするならば、無名クラスをsetOnClickListener()メソッドの引数として直接に引き渡すことも可能です。これが冒頭のコードです。
button.setOnClickListener(new View.OnClickListener { @Override public void onClick(View view) { …中略… } });
[Note]ネストクラス
ネストクラスは、正確にはメンバクラス(staticメンバクラス、非staticメンバクラス)、無名クラス、ローカルクラスに分類できます。以下に、分類と簡単な説明の図を記載しておきます。
クラスメンバの位置に定義されたインターフェース −メンバインターフェース
最後に、以下のコードで表された
「button.setOnClickListener(new View.OnClickListener {…});」
について解説します。クラス名.クラス名のように見えますが、その通り、これはクラスの中で定義されたクラス(インターフェース)です。このようなインターフェースは、いわゆるメンバクラスの一種で、メンバインターフェースと呼びます。疑似的なコードで表すならば、以下のように定義されています。
public class View { interface OnClickListener { void onClick(View v); } …中略… }
なぜこのような記述をするのでしょうか。インターフェースの場合は外部ファイルとして定義されていても、クラスメンバとして定義されていてもpublicです。したがって、前節で解説した再利用の防止には当たりません。ここでは、もうひとつの管理の意味合いに注目してみましょう。
注目するのは、setOnClickListener()メソッドの引数の型です。このメソッドの引数はOnClickListenerインターフェースを受け取ります。ここで、もしOnClickListenerインターフェースがあくまでsetOnClickListener()メソッドの引数専用で使うことを想定しているのであれば、外部ファイルとして定義するのではなく、Buttonクラス(正しくはその親クラスであるViewクラス)内部に記述したほうが管理がしやすく、メソッドとの結びつきが強いことがより明確に把握できます。そのために、メンバインターフェースがあります。
メンバインターフェースを利用する方法
では、これらメソッドとメンバインターフェースを使う場合、どのような記述が便利なのでしょうか。先ほどのコードが一つの答えです。
button.setOnClickListener(new View.OnClickListener { … });
メンバインターフェース型を指定する場合は、「.」でつなぎ、View.OnClickListenerのようにします。ただし、import宣言でView.OnClickListenerまでインポートしたならば、以下のようにも書けます。
button.setOnClickListener(new OnClickListener { … });
まとめ
本稿では、Androidアプリ開発で頻出の無名クラス、メンバクラス、メンバインターフェースについて解説してきました。実際のAndroidアプリサンプルではリスト1 MainActivity.javaで示した無名クラスだけでなく、リスト4 MainActivity3.javaのようなメンバクラスのものもあります。ところが、この両者は記述方法が違うだけで同じ処理を実現できます。開発するアプリに応じて、無名クラス、メンバクラスを自由に使い分けられるようにして、一段上のプログラマを目指してください。