師匠に気付かされた自分の良くないところ
そんな当時、メンター(ビズリーチでは新卒研修後、新卒一人に一人ずつ師匠がつきます)のタナカさん(仮名)に、毎週金曜日に、コードレビューをしてもらったり、開発の相談をする面談を受けたりしていました。
しかし、タナカさんにいつも言われるのは、技術的なアドバイスではなく、
「なんでそれやるんだっけ?」
「今やらないといけないのは本当にそれなんだっけ?」
「その機能は、いつ、誰が、何のために使うんだっけ?」
といった問いかけでした。
はじめは、「なぜ今そんなことを聞かれるんだろう、タナカさん物分りが悪いのかな」と思っていましたが、段々とその問いかけにきちんと答えられない自分がいることに気づきました。
私:「それはたぶんXXXだと思います」
タナカさん:「それは君が勝手に思ってるの? 事実なの? 他の人の意見なの? 自分でよく考えた結論なの?」「動くプログラムを量産するのは簡単だけど、その前に本当に解決したい問題が何かを考えなさい。手を動かす前に考えないとゴミを作るだけだよ」
見当違いのものを作って、書いたコードの半分以上がばっさりカットなんてことがあったのは、こういうことだったのでは!?とハッとした瞬間でした。
ただよくよく振り返ると、研修でも目的やゴールを常に意識することの重要性は何度も語られており、それが開発をする上で重要なことだということを私は聞いていたのです。それにもかかわらず、多少のプログラミング経験程度で調子に乗って、大事なことを聞き流す失態を犯していたことに気付かされました。
新卒研修を「受ける」立場から「作る」立場に
年が明けた頃、社内で「翌年度の新卒エンジニア研修を作ってみないか?」という募集がかかりました。
ビズリーチでは新卒エンジニアが次年度の研修を作るという習わしがあり、その担当者に立候補することができるのです。前述の通り、当初新卒研修の内容に不満を抱きつつも、配属後に改めて研修の有り難さを実感していた私は、自分の感じていた不満をさらに良い研修へと活かせるのであればと思い手をあげました。
ところがいざ研修を作るための打ち合わせが始まると、研修課目やその内容、講師に日程、教材など膨大な物事を決める必要があることが分かりました。
ビズリーチは新卒採用を開始してからまだ4年目であり、研修やサポート体制にはまだまだ至らない点もあります。しかし裏を返せば今後続く制度や文化のスタイルや方向性を決められる立場に立たせてもらえるということで、歴史に名前を刻む機会であるともいえます。
想像以上の重責に「これは大変なことになりそうだ……」と思いつつも、自分の裁量で作業を進めていくという点ではHRMOSチームでの業務に通じるものがあり、これまでの経験を活かす絶好の機会と考え、内心はワクワクしながら研修内容の検討を進めていきました。
「何のための研修なのか?」をわすれない
ビズリーチの新卒研修の目的は新卒エンジニアを即戦力に育てることではなく「ビズリーチだけでなく、どこででも活躍できるエンジニアの基礎を育てる」という点にあります。
これはただ単に実務に必要な情報を詰め込むのではなく、基礎知識をしっかりと学び、壁に突き当たったときにどうやって解決すればよいかという問題解決能力を育てるということです。したがってプログラミングについても基礎をしっかりと教えますし、ソフトウェアだけでなくハードウェアに関する講義もあります。
研修カリキュラムの検討を進めていく中で、研修後に新卒が配属される予定のマネージャたちとも意識合わせを行うのですが、
- 現場で使用するツールの使い方を教えておいて欲しい
- フレームワークを使った開発手順もカリキュラムに入れて欲しい
など、さまざまな意見が飛び出します。これは配属後の業務効率を考えれば現場からは当然の要望です。しかし新卒エンジニア研修の目的は即戦力を育てることではありません。同じツールでもチームによって運用方法が違い、使っているフレームワークもさまざまです。原理や必要性を理解しないままツールやフレームワークの使い方を覚えても意味がありません。現場の意向は最大限反映しつつ、研修本来の「エンジニアとしての基礎を育てる」という目的から逸脱しないようカリキュラムを構築していきました。
また、研修を受ける新卒エンジニアたちにも研修の目的がきちんと伝わるよう、研修の初日および各講義の最初に講師から研修の意図や目的を説明してもらうようにしました。
一人ひとりをきめ細やかにサポートするための体制も
さらに今年の新卒研修の参考にするため、同期入社のエンジニアたちに去年のエンジニア研修に対するアンケートを取ってみたところ、以下のような不満が数多くあがりました。
- 講師の人数が少ないため、詰まった時に質問しづらかった
- 座学が多く、集合研修で行う必要性を感じない講義があった
これらの不満を解決するために以下のようなサポート体制を整備することにしました。
サポーター制度
各講義にはメインの講師だけでなく、受講者をサポートするためのサブ講師を配置し、詰まった受講者をフォローできるようにしました。
ワークショップ形式の講義
完全な座学にならないよう、なるべく手を動かすワークショップ形式の講義を増やすようにしました。