失敗を「許容」することが大切
――本書では、企業「文化」の重要性を語っています。本書の内容を見て、日本のIT企業の問題点はどこだと思いますか? また、どのように変わっていけばいいと思いますか?
「日本のIT企業の問題点」などという、十把ひとからげにわかりやすいものは存在していないとは思うんですが……。文化という言葉だと、日本のIT企業にも立派な文化があると思います。真面目に責任を果たそうと努力する、上からの指示にはできるだけ従おうとする、身内の横のつながりが強い……。そうした文化を無視して、どこかから持ってきたやり方や哲学をドカンと押し込もうとしても、うまくいくわけがない。日本に限らず、ITに限らずそうだと思いますけど。
本書から学ぶとよさそうな点を1つ挙げると、実験しようという考え方だと思います。新しいことをやってみる、結果をちゃんと検証する、失敗したらすっぱりあきらめる、失敗を心配しないですむ環境を作る、自分の環境でうまくいくやり方を模索し続ける。「日本の文化は失敗を許容しない」とか言いがちですけれど、きっとそんなことはなくて、アメリカだって誰もが失敗を恐れ避けようとするし、それを変えるのはすごく大変だとリッチも言っています(「7章 恐れと戦う、変化を抱擁する」など)。
アリスター・コーバーンが2002年来日した際の講演で、こう言っていたのをよく思い出します。「よく、『アジャイルがいいのはわかったけど、うちでは無理だ。どうしたらいい?』と聞かれる。私はこう答える。勝ち残る企業は一握りだ、と」。
――最後にCodeZineの読者に、訳者からのメッセージをお願いします。
内容は素晴らしいです。日本語も、できるだけ読みやすくしました。1人のファンとして、燃え尽きるまで全力を傾けたつもりです。
最後のメッセージは、本書から借りたいと思います。
「僕にとってうまくいったやり方が、あなたにもうまくいくとは限らない。あなたの世界に喜びの文化が作られたとしたら……あなた自身でそのことを考えてほしいと、僕は心から願っている。」
安井力(やすい・つとむ)
アジャイルコーチ、コンサルティング、ファシリテーター、ゲームを使ったワークショップのデザインと提供を中心に、開発者、翻訳者、柴犬の飼い主などをしています。柴犬はきなこ(5歳♀)、その娘のくるみ(2歳♀)の2人を部屋で飼っており、仕事に疲れたときに癒やされたり、仕事中に絡まれて癒やしたりしています。好きなものはアジャイル開発とテスト駆動開発(TDD)、Python、指輪物語、日曜大工です。犬と奥さんのおかげで元気に働いています。

