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高度IT人材を育成する産学連携の架け橋「トップエスイー」(AD)

4人の修了生が語る「トップエスイー」での学びからもたらされた「さまざまな変化」

高度IT人材を育成する産学連携の架け橋「トップエスイー」 第6回

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密度の高い講義についていくには本人の「努力」と周囲の「サポート」が重要

吉岡:みなさん、同僚の方から評判を聞いたり、会社での勧めを受けたりして受講を希望してくださったのですね。しかし、通常の業務を行いながらの受講ということで、時間のやりくりには苦労されたかと思います。仕事との両立という点で、会社側からサポートはありましたか。

明神:部署の方針として「トップエスイー」の受講を勧めているということもあり、ある程度、仕事量を配慮してくれるといった形でのサポートはありましたね。

関口:私の場合も、所長が推薦しているということで、受講に対する職場での理解は得られていました。受講がある場合、そちらを優先的に認めてもらえるというのはありがたかったですね。職場としての勤務形態も自己裁量制になっているので、その範囲内で修了することができました。

藤澤:講義のスケジュールはあらかじめ決まっているので、講義がある日の外出や出張などは、基本的にほかのメンバーに事情を説明して、交代してもらっていました。同僚のサポートもあり、講義には休まずに出ることができました。

杉本:私も上司に考慮してもらい、講義がある日は、そちらを優先することが認められました。ただ、ちょうど年初の修了制作が佳境に入るタイミングと同時に業務が忙しくなり、その時期だけは連日夜中まで起きて、業務と修了制作をこなさざるを得ませんでした。こればかりは、仕方がないですね。

個性豊かな講師陣が展開する実践的な講義やアドバイスは「独学」に勝る

吉岡:実際の講義や指導の内容については、いかがでしたでしょうか。

関口:講師のみなさんには、エンジニアとしての実務経験が豊富な方も多いので、授業がいわゆる「テキストの読み上げ」にとどまらず、現場でのリアルな問題意識に基づいた話が聞けた点がとても勉強になりました。

 少しマニアックな話になってしまうのですが、私には「クラウド実践演習」の中で学んだ「Infrastructure as Code」についての知見が興味深かったです。これはクラウドの運用管理を人手で行うのではなく、コードを利用して自動化するといった、近年注目を集めている考え方です。講義の中では実際に「Jupyter Notebook」というフレームワークを使って受講生がクラウドを作り、運用手順を体験しました。これまでも、そうした手法やツールがあるという知識は持っていましたが、実際に手を動かして、コードとドキュメントを一体化し運用効率を高めていくアプローチを習得できたことは良かったと思います。

藤澤:私も、「クラウド」や「ビッグデータ」に関するトピックは、業界全体の動向として、自分でも多少は勉強していました。しかし、普段の業務とあまり関係がないこともあって、実際に使って何かを作ってみるところまでは進めていませんでした。トップエスイーの講義として受講したことで、実際にそれらを使いながら理解を深めたり、業務の中で扱っている方の話が聞けたりしたのは良かったと思います。

明神:私の場合は、夏期休暇中の集中講義として開講された、証明支援システムである「Coq」に関する授業(定理証明と検証)が良かったですね。実は以前、Coqに関心を持って独学でやろうとしたことがあるのですが、難しすぎて挫折してしまいました。トップエスイーでもCoqに関する講義を受けてみて、やはり難しかったのですが(笑)、一人で取り組むよりも理解が深まったと感じています。

「トップエスイーの講義を受けて、独学で取り組んだ際よりも理解が深まりました」(明神氏)
「トップエスイーの講義を受けて、独学で取り組んだ際よりも理解が深まりました」(明神氏)

 ほかにも「アーキテクチャ」系の講義は、関心の高い受講者が多く、授業での議論が盛り上がって面白かったですね。実際に分析、設計を行う演習では、自分のやり方と人のやり方を見比べながら、違いがどこから出てくるのか、どうすればより良くできるのかと、考えるきっかけを得ることができて勉強になりました。

藤澤:トップエスイーには、さまざまな企業から受講生が参加しているため、そうした方々と知り合い、情報交換ができたのは良かったですね。修了後に交流会を開いて、SNSでグループを作ったり、一部の人で旅行に出掛けたりなど、活発な交流が続いているケースもあるようです。

個々の業務課題の解決に向けて取り組める「修了制作」

吉岡:トップエスイーコースの修了要件には、講義での単位取得のほかに「修了制作」を発表する必要があります。(編集部注:2017年度の第12期よりソフトウェア実践開発演習に変更)みなさんの修了制作のテーマと進め方について、教えていただけますか。

藤澤:私の修了制作のタイトルは「カバレッジとミューテーションスコアの収束を元にした最適な因子間の組み合わせの強さの特定手法の提案」というものです。私は業務の中で、ソフトウェア開発における「単体テスト」の重要性を啓蒙しています。修了制作では、テスト手法のひとつであるオールペア法をとりあげ、オールペア法で生成したテストパターンに対し、妥当なテストケースを得るためには、どのくらいの因子を組み合わせる必要があるのか、その判断のための手法を作ることに取り組みました。

吉岡:藤澤さんの修了制作は、第11期の最優秀賞を受賞されましたね。修了制作は受講期間終盤の3カ月を使って行いましたが、具体的にはどのように進められたのでしょうか。

藤澤:取り組みたいテーマについてのアイデアは持っていたのですが、ゴールをどこに設定するかがなかなか決まらず、最初の1カ月半は指導教官とひたすら議論をしながら方向性を決めることに費やしました。テストそのものについては、私が日ごろ扱っている製品を使うことを決めていたものの、テストパターンをどうやって作り出すかの部分については、OSSを使って、そのコードなども読み込みながら考え、大量にデータを流し込んでは、結果を評価するといったことを繰り返しました。トライ&エラーを続けて、最終的に論文にできる結論が出たのが締め切りの4日前といった状況で、最後は締め切りとの駆け引きに苦労しましたね。

杉本:私も自分の業務における課題解決をテーマに選びました。タイトルは「高抽象度SW/HWモデルによる並行性能検証シミュレータ」です。新しいハードウェアの性能評価にあたっては、設計に基づいたモデルを作成するなどの作業が必要になるのですが、その際の環境構築に非常に手間と時間がかかっているという課題があります。その解決のために、機能を捨象し、性能にフォーカスした、より効率的にシミュレーションが可能な機構を作ることに取り組みました。

 私の場合はテーマを決める際、まず指導の先生に私の業務内容や環境を理解していただくのに少し時間がかかりましたが、1~2週間に1回程度と、頻繁に打ち合わせしていただき、丁寧に指導してもらいました。結果的に、できあがったものは自分が当初考えていた以上の精度があり、当初の予定よりもさらに先までの成果を得ることができました。

明神:私のタイトルは「形式仕様記述を用いたテスト手順の自動生成」です。システムテストを行う際には、さまざまな前提条件を用意する必要があり、その手順を作っていかなければなりません。しかし、実際の現場でテストを行う人は、テストそのものをやりたいわけで、手順の作り込みにはあまり時間をかけたくありません。その手順を自動生成することで、より作業を効率的にしたいと考えました。実際に仕事をする中で「こんなツールがあったら役に立つだろうな」と感じた経験から出たアイデアでした。

 作りたいもののイメージはあったので、テーマ決めはスムーズでした。しかし、それをどう実現するかを考える段階になって、どの手法を使うべきかなどの選択肢が多く出てきてしまい、その絞り込みに悩みました。制作時間が短い中で、どこにフォーカスし、どのように進めていくかという部分で、教官にいろいろとアドバイスをいただきました。

吉岡:修了制作については、日々の業務を通じて「これをやりたい」と明確なテーマを持って取り組んでくださる方が多いですね。しかし、限られた時間内で、どこまで実現できるかを考えると、テーマのどの部分にフォーカスするかは非常に重要です。その点で、トップエスイーの教官は有用なアドバイスを提供できると思います。

関口:私は「マイクロサービスにおける設計・実装パターン抽出」というタイトルで、システムをマイクロサービスアーキテクチャにしようとしたときの課題を解決するための手法を見つけていくことに取り組みました。マイクロサービスを作る中での課題と対策を、パターン化を通じて明確にしたいという試みです。制作にあたっては「評価」の過程が難しかったですね。パターンで記述したものが本当に有効どうかは、多くの事例を通じて検証する必要があり、時間がかかるという問題がありました。結果的に評価のプロセスが完全とは言えないものの、ある程度の成果は得ることができました。

 現在、私は主にWebAPIを通じたシステムのサービス化を研究しています。マイクロサービスアーキテクチャは、その構成要素のひとつです。研究課題の発見や、実際の展開においてどのような課題が生まれる可能性があるかなどを考えるにあたり、修了制作での取り組みは生きていると思います。

吉岡:今、関口さんからも少しお話がありましたが、トップエスイーでの取り組みを、日ごろの業務にどのように生かすかといった観点で感じていることがあれば、ほかの方もご意見をお聞かせください。

藤澤:講義や修了制作の内容をそのまま生かせる業務というのは、あまりないかもしれません。しかし、そこで得た「考え方」については、生かせる部分が多いだろうと思います。例えば私の場合、修了制作で扱った「ミューテーション解析」などは、「ソフトウェアの品質向上」をソリューションとして扱う会社として、今後、取り組んでいきたいテーマでもあります。日々の業務以外に、組織として将来的に目指すべき方向を考えるための「指針」のひとつとして、トップエスイーで学んだことを生かしたいと思っています。

杉本:私は組み込み系のソフトウェア開発に携わっていますが、トップエスイーで学んだ設計手法、プロダクトラインの考え方などは、自分で直接使うことがなかったとしても、業務を進めていくにあたって「知っておくべき考え方」だと思うようになりました。上流から下流までの工程について幅広い知識があることで、自分の業務を新しい視点で見られるようになったと感じています。

明神:私の場合は、本来は上流工程で用いる「形式仕様記述」について、テスト工程などのさまざまな工程で活用するアイデアを、修了制作という機会で実証することができたのが大きかったですね。また、これは業務とは直接関係ないかもしれませんが、ここでの修了制作の成果を、VDM(Vienna Development Method)のツール・応用に関する国際的なワークショップ「Overture Workshop」の場で、論文として発表させていただくことができました。論文の投稿は初夏で、既にトップエスイーを修了した後でしたが、担当の教官に原稿のレビューなどを通じて全面的にサポートしていただけたことは、大変感謝しています。

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「ソフトウェア工学」を学ぶことで日本企業の競争力はもっと上げられる

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この記事の著者

高橋 美津(タカバシ ミツ)

PCやネットといったIT分野を中心に、ビジネスやゲーム分野でも執筆を行うフリーランスライター。Windowsユーザー。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

【AD】本記事の内容は記事掲載開始時点のものです 企画・制作 株式会社翔泳社

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