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「Google Cloud Next」で感じられたGoogleの本気とは――注目の新サービスとカンファレンスの歩き方

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 7月24日~26日にサンフランシスコで開催されたGoogleのカンファレンス「Google Cloud Next '18」。本カンファレンスに参加したクラウドエースの代表取締役CEO 吉積礼敏氏は「機械学習やサーバレスに関する発表が目立った」という。吉積氏はどんなサービスに注目したのか。そしてエンジニアが、Google Cloud Platform(GCP)を使いこなし、スキルアップするためは――。東京で9月19日~20日に開催される「Google Cloud Next '18 in Tokyo」の見どころやカンファレンスの歩き方とともに話を聞いた。

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機械学習とサーバレスについての発表が続々と

――「Google Cloud Next '18」ではどのような発表が印象に残っていますか?

 大きなところでは、機械学習とサーバレスについての発表がありました。

 機械学習については、「Cloud AutoML」関連のサービスが続々と出てきています。所有しているデータに対し、機械学習の専門知識がなくてもGoogleがモデルを生成してくれるサービスで、現在は画像認識や自然言語、翻訳などに対応しています。

 次に紹介があった「BigQuery ML」は、Pythonを書かなくても、SQLで機械学習モデルを作成・実行できるサービスです。これはビッグデータと機械学習を融合させるひとつの施策で、Googleが機械学習の民主化に力を入れている印象を持ちました。

クラウドエース 代表取締役 CEO 吉積礼敏氏
クラウドエース 代表取締役 CEO 吉積礼敏氏

――機械学習についてさまざまなサービスが出ていますが、特に印象に残っているサービスは何でしょうか?

 今回一番驚いた発表は「Edge TPU」という製品。これは、ディープラーニング向けの半導体製品「Tensor Processing Unit(TPU)」の組み込み版で、IoTデバイス等での利用を想定したものです。機械学習をエッジコンピューティング[1]の分野にもかんたんに適用するという話で、Googleの虎の子とも言うべきTPUの実装を配ってしまうということになります。モデルをインストールして動かすことに特化した製品のため、学習やトレーニングはできず、できることは予測・推論だけですが、機械学習の適用範囲を、クラウドだけでなく、エッジデバイスも含め広範に広げていく動きがあります。

 AutoMLによって自前のデータを用いたモデルのトレーニング自体も高度な知識なくGoogleがサポートする。まさに民主化が加速しています。

[1] エッジコンピューティング:ユーザーの近くにサーバーを分散配置させることで、高速な処理を可能にすること。これにより、スマートフォンやIoTデバイスのような処理能力が低い端末でも、複雑な処理が実行できる。

――サーバレスについてはどんな発表が印象に残っていますか?

 オープンソースのKubernetesがコンテナオーケストレーションのレイヤーにおいて圧倒的なデファクトスタンダードを取ったことに対して、Googleはさらに上のレイヤーにあたる「Knative」を出してきました。これはKubernetes上にサーバレスアーキテクチャを実現できるサービスで、コンテナの上に抽象度をさらに上げたレイヤーを作ることで、サーバーレスとマルチクラウドの世界の実現に向けて、着実に布石を打っていると感じました。

 オープンソースをベースにその抽象化度合いを上げ、どこでも動かせるとなったら、最も費用対効果が高いのはGoogleです。そこでGoogleは、自身の強みである機械学習でプレゼンテーションを発揮していく。

 Googleでは、検索やGmailなどのさまざまなサービスがコンテナ上で動作しています。サービスの品質を向上させるために、コンテナの開発に注力してきました。Googleのコンテナに対する強みにフォーカスがあたるように、サーバレスを推し進めています。おそらく、世の中が完全にサーバーレスの世界に揃ったとき、最終的にGoogleのインフラが一番強くなる。そこまで見据えてストーリーを作っているのは、やはりすごいと思います。

 3年前、TensorFlowをオープンソースにするという発表に一番驚いたのですが、その意味を今あらためて考えると、TensorFlowを動かすにはGoogle Cloudを使うべき、という流れができあがってきています。さらにKubernetesが成功したことで、方向性は強まっていくと思います。

 さらにエッジデバイスにTPUが搭載されることで世の中がどう変わるのか・便利になるのか。その具体的アイディアについてはまだ予想が難しいのですが、例えばAndroidにTPUが入るとなれば、さまざまな可能性が広がります。そして、そこにモデルを載せようとしたら、TensorFlowというわけです。

 そのTensorFlowをどのプラットフォームでトレーニングするのが効率的かというと、当然TPUも使えますしコストパフォーマンスに優れるGCPが優位になる。そうするとトレーニングするために必要なデータもGCP上に置いておく必要があるため、GCPにデータが集まって来る流れになります。サーバーレスの世界で「どこで動いても良いよね」、機械学習やビッグデータの領域でGCPの強みを強化、今後、機械学習は企業に取って必須、という流れ・ロジックをちゃんと重ねていくことで、勝てる方向になっているというわけです。

 それに加えて、Diane Greene氏が、エンタープライズの領域への拡大を推し進めるため、間を埋めるように動き出しています。そういったことからも、今年も「やっぱりGoogleは勝てるな」と思いました。

とあるセッションの講演風景
とあるセッションの講演風景

――エンタープライズ領域については、どんなことが気になりましたか?

 2016年にDiane Greene氏がエンタープライズ領域に向けて舵を切るという発表をしましたが、その結果が出てきたという印象があります。例えば象徴的なのはOracleへの対応です。具体的な発表はありませんでしたが、ロゴが出てきており、何らかの形で対応していく意図を表していました。

 また、サポートのメニューなども改訂されました。これまで、GCPのパートナーになるには自社でサポートのノウハウを持っていないと難しかったのですが、Googleが提供するサポート自体をリセールできるようにすることでパートナーを拡大する姿勢が見えました。

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この記事の著者

吉澤 亨史(ヨシザワ コウジ)

元自動車整備士。整備工場やガソリンスタンド所長などを経て、1996年にフリーランスライターとして独立。以後、雑誌やWebを中心に執筆活動を行う。パソコン、周辺機器、ソフトウェア、携帯電話、セキュリティ、エンタープライズ系など幅広い分野に対応。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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https://codezine.jp/article/detail/11076 2018/09/14 14:00

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