日本オラクルが開催する勉強会「OCHaCafe」とは
「OCHaCafe」は、クラウドネイティブ時代の開発者を対象に、世間で話題のオープン・スタンダードなテクノロジーをテーマに取り上げ、 短時間でガッツリ学べるテクニカルな勉強会シリーズである。昨年12月からSeason 1が始まり、1か月に1回の割合で6回開催。今年の7月からSeason 2が始まった。Season 2も6回の開催が予定されている。
なぜ、「OCHaCafe」を立ち上げたのか。OCHaCafeの発起人であるクラウド事業戦略統括 クラウドソリューション事業本部長 理事の古手川忠久氏は次のように語る。
「当社はエンタープライズのお客さまを中心としたパートナービジネスを展開しているため、デベロッパーとの距離を感じていました。ですが、企業情報システムのクラウドネイティブ化を進めていくの
はデベロッパーの方たちです。そんな彼らの生の声を聞いて、反応を身近に感じたいと思ったのです」(古手川氏)
これまであまり触れ合う機会のなかったデベロッパーに参加してもらい、リピーターになってもらえるよう、「多少、ハードルは高いかもしれませんが、来て良かったと思える内容にしています」と古手川氏は語る。
テーマ選びにも時間をかけているという。「OCHaCafeの運営は私の部署のメンバーが中心になっているのですが、運営メンバーとディスカッションしながら、できるだけタイムリーな企画を考えています。コンテンツの内容にもこだわっています。なぜなら、この勉強会に参加するのは技術に飢えていたり、最新技術にアンテナが立っていたりする人たちだからです」(古手川氏)
その言葉を裏付けるよう、Season 1では、コンテナやマイクロサービス、Hyperledger Fabric、認証・認可などがテーマとして取り上げられた。Season 2の第1回のテーマはKubernetes。そして9月19日に開催された「OCHaCafe2 #2」では「GraalVM」がテーマだ。実はSeason 2ではGraalVMのような最新技術だけではなく、「今更聞けない感があるというテーマも取り上げるようにしている」と古手川氏。例えばデータサイエンスのエンジニアが、機械学習のプラットフォームにKubernetesが使われており、それについて学びたいと思っても、なかなかそんな機会は得られない。Season 2ではこれまでの濃いOCHaCafeに入門向けの内容を取り入れ、より幅広いデベロッパーの学びたい意欲を満足させる場を目指しているのだ。
OCHaCafe2の前半は入門編
では実際にどんな雰囲気の勉強会なのか。「OCHaCafe2 #2 一体何モノなの?GraalVM入門編」の様子をダイジェストで紹介する。
簡単なオープニングの後、19時5分からセッションが始まった。セッション前半のGraalVM基礎編を担当するのは、古手川氏が率いる部署のソリューション・エンジニア、茂 こと氏。まずは「GraalVMとは何か」からセッションはスタートした。
- セッション資料:一体何モノなの? GraalVM入門編
「GraalVMはプログラミング言語のラインタイムの一つで、Oracle主導で開発されているOSS。Graal(JITコンパイラ)やTruffleを持つ、多言語に対応したJVMです」と茂氏。OCHaCafeでGraalVMを取り上げた背景には、GraalVMにはマイクロサービスやサーバーレスと相性よくJavaを実行する機能を提供することがある。
引き続き、茂氏はGraalVMでできること、GraalVMの3つの利用形態(プログラミング言語ランタイム、シングルバイナリ生成装置、組み込みランタイム)、2つのエディションの違いなどについて丁寧な解説を行った。
「GraalVMはCommunity Edition(CE)とEnterprise Edition(EE)の2種を用意しています。通常、GraalVM EEをオンプレミスで使いたい人は、年間のサブスクリプション契約が必要ですが、Oracle Cloudであれば、無償で利用可能です」(茂氏)
GraalVMのメジャーバージョンアップは3か月ごとに行われ、11月には新バージョンのリリースが予定されており、JDK 11に対応予定だという。
その後、GraalVMをもっと深く知るための技術解説へと移る。GraalVMの3つの利用形態のうち、プログラミング言語ランタイムとしての側面を茂氏が担当した。茂氏は、JVMのおさらいからGraalVMの構造、多言語対応のための仕組み、各言語のオリジナルランタイムとのパフォーマンス比較などを紹介した。
後編は技術詳説とユースケースのデモ
約10分間の休憩を挟みセッション後半に登壇したのは、茂氏同様、古手川氏が率いる部署のソリューション・エンジニア、早川博氏である。
早川氏は、GraalVMの利用形態として、シングルバイナリ生成装置、組み込みランタイムの詳細を解説した。
シングルバイナリ生成装置とはつまり、GraalVMを使うと、JavaバイトコードからのシングルバイナリのNative Imageを生成できるということだ。Native Imageにすることで、ランタイムの起動時間の削減や、パフォーマンスが大幅に向上する。そのNative Imageを生成する仕組みや、Native Imageがはまるユースケース、Native Imageのパフォーマンスなどが紹介された。「Native Imageは高速起動・高速スケールが求められるユースケースに適しています」(早川氏)
第三の利用形態、組み込みランタイムとは、Oracle DBなどの製品やOpenJDKなどの環境に組み込むことで、製品固有の言語以外の言語を実行可能にするなど、多言語対応の拡張を行うというものだ。もちろん、組み込みのコード例なども紹介された。
OCHaCafeの醍醐味はデモがあること。Oracle Cloud上にデモ環境作るところから見せるのも、OCHaCafeの特長だ。今回は、GraalVMの多様なユースケースのうち、いくつかについてデモが行われた。
実はデモを含めたコンテンツ作りには「非常に苦労している」と古手川氏。「メンバーは通常の仕事をしつつ、裏で命を削る思いでコンテンツ作りをしているんです」(古手川氏)
その苦労は参加者には伝わっており、「参加者によるTwitterの反応は、その苦労をいたわるようなものもたくさんあったりする」と古手川氏は苦笑を浮かべるが、参加者からのフィードバックの一つひとつが、OCHaCafe運営のモチベーションになっているという。
エンタープライズエンジニア向け勉強会「OCHaCafe Premium」の開催も
今後、OCHaCafeはさらなる展望を検討しているという。それがアーキテクトやエンタープライズエンジニア向けの「OCHaCafe Premium」の開催である。
「Premiumのコンセプトは、より実践的なものになると思います。例えばOracle Cloudだから考えなければならない可用性の条件やセキュリティなど、Oracle Cloudに寄ったセッションを展開する予定です」(古手川氏)
今年9月、米サンフランシスコで開催された「Oracle OpenWorld 2019」で、Oracle Cloudの無料トライアルに、「Always Free」という期限無しでOracle Cloudが利用できるプランの追加されることが発表された。「Oracle Cloudを使う敷居はどんどん下がっています。OCHaCafeはでは何かしらオラクルのクラウドソリューションを使うなど、Oracle Cloudがちゃんと使えることを紹介する場でもあるのです」(古手川氏)
OCHaCafeの醍醐味は、濃い技術情報が手に入るだけではない。「デベロッパーの人たちがくつろいでコミュニケーションを取れる場でありたい」という古手川氏の強い思いを表すように、セッション後の懇親会では、美味しい食事と飲み物が用意されている。
OCHaCafeはおよそ月1回の割合で開催されている。「技術を身につけ、自身の価値を向上させたい」という方は、ぜひ、一度、参加してみてはいかがだろう。
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