入社のきっかけは、シミュレーションゲーム
遠藤氏は、2019年4月にゆめみに入社したエンジニアだ。もともと、エンジニア職は未経験。前職では、物流倉庫でフォークリフトを運転していたという。遠藤氏は何をきっかけに、同社に入社したのだろうか。
時は遡(さかのぼ)ること2018年11月中旬。遠藤氏はSNS上で、ゲームプレイ採用について書かれた記事を発見する。ゲームプレイ採用とは、「Factorio」というシミュレーションゲームをプレイし、その結果をもとにプログラミングの適性を判断するものだ。
この採用手法では、採用候補者はゲームを無料で遊ぶことが可能だ。「無料ゲーム」という誘惑につられた遠藤氏は、ゆめみに応募をし、Factorioをプレイし始める。
「あまりに面白くて、仕事を終えて家に帰ってから、毎日5~6時間はゲームをしていました(笑)。どこかのタイミングでやめなければ、仕事に支障が出てしまいます。
応募要項が『ゲームのプレイレポートをゆめみに提出すること』だったため、バーっと書いて送付し、ゲームをきっぱりとやめました。その後、なんと合格した旨のメールが届きます。順調に選考が進み、最終面接までたどり着きました」
最終面接では、ゆめみの代表取締役である片岡俊行氏と対面で話をする。その際、片岡氏がある一言を口にした。「応募してから、プログラミングの勉強はしていますか?」と。そして、遠藤氏は正直にこう返した。
「すみません。Factorioにハマりすぎて、一切していませんでした!」
最終面接でこの返事は致命的だ。しかし、ここで引き下がる遠藤氏ではない。「プログラミングの課題を頂けないでしょうか」と片岡氏に交渉する。その結果、なんと2カ月コースのオンラインのプログラミングスクールを、費用はゆめみ持ちで受講できることになった。遠藤氏はがむしゃらに勉強する。2カ月コースの課題を、わずか1週間ですべて終わらせた。
「課題を終えたので、実力チェックのためにコーディングのテストを行いました。ですが、私はやらかします。なんと全問不正解。さすがにこのときはショックを受けて、1日中ひなたぼっこをして過ごしました(笑)」
「間違いなく落ちた」と思って過ごしていたある日、ゆめみのゲームプレイ採用の発案者である仲川樽八氏から「コーディングテストのフィードバックとレビューをします」というメールが届く。コードレビューを受けてコードを改修し続けた結果、めでたく最終的には内定が出たという。
「これだけ失敗をしたのに、なぜ入社できたのか。採用担当者に聞いてみました。理由は主に2つ。『ゲームとレポートの完成度が高かったこと』、そして『失敗してからの成長が早かったこと』だそうです。
でも自分は『苦労した』とは思っていません。ゲームは楽しくて夢中になっていただけです。失敗してからの頑張りも、あまりにも悔しくて必死にやっていただけでした。ここで、ふと気が付きます。感情をエネルギーに変える能力が、自分の強みなんじゃないか、と」
遠藤氏は「アホになる」ことの重要性を強調する。「未経験だけれど大丈夫だろうか」などと躊躇(ちゅうちょ)せず、とにかく行動を続けるのが肝要だ。たとえ失敗しても「悔しい」という感情がエネルギーの源になってくれる。
つまり、「アホになる」とは「自分が無理だと思う事象に対しての、心理的障壁をなくすこと。その結果として全力で行動できる状態になること」なのだ。ゆめみへの入社後、遠藤氏は「アホになる」ことを武器に、大いなる成長を遂げていく。
アホになることは、自らの可能性を信じること
入社後、遠藤氏は2カ月ほどOJTを受ける。社内勉強会のスケジュールアプリを開発したり、同社の「有給取り放題制度」や「勉強し放題制度」を活用してAWS Summit Tokyoに足を運んだり、QiitaやNoteでブログを書いたりと、研鑽を続けていく。
その後、大規模案件へのアサインが決定した。この案件では、サーバーサイドの技術としてKotlinとSpring Bootを使用する。案件が本格的に走りだす前に、これらの技術を事前に学習しておく方針となった。
だが、当時はSpring Bootのバージョンが2.0に上がったばかり。書籍やWeb上にはそれほど情報がない。さらに、Kotlinを学ぶうえではJavaの基礎知識が必要となる。遠藤氏にとって未経験のSpring BootやKotlin、Javaについて地道に学ぶ日々が続いた。
案件が本格的にスタートしたころ、遠藤氏は先輩から声をかけられる。「コーディングだけではなく、設計もよろしく」と。
「『いやいや先輩、私は未経験です。無理ですよ』と返したのですが『未経験だけど設計ができましたって言えたらカッコいいじゃない。フォローするから頑張ってよ!』と先輩は言ってくれました。やる気が出ましたね。こういう言葉に、私はめっぽう弱いんです(笑)」
遠藤氏は、要件定義から論理設計、物理設計に至るまで、あらゆる業務にチャレンジする。すべてが新鮮な体験。だからこそ、1日に何度も「わからない」の壁にぶつかる。この解決策として、遠藤氏は「賢いアホになる」ことを選択する。
「私は新人でポテンシャル採用ですから、大きな失敗ができるのも今のうち。失敗前提でやろうと思いました。とにかく設計して、書いて、レビューを依頼。間違っていればすぐ修正して、PDCAを回します。これが『賢いアホ』です。先輩にフォローしてもらいながら、3カ月で一通りの設計ができるようになりました」
設計フェーズの後は、バッチのコーディングに着手する。だが、Spring Batchが2019年4月にメジャーバージョンアップして情報が不足していることや自身のスキル不足などが相まって、思うように実装が進まない。
そこで遠藤氏は、社内のメンバーにとにかく質問し、各エンジニアのナレッジを吸収していった。「やっとバッチが動いたときは、心の底からうれしかったです」と遠藤氏は笑う。
現在(2019年11月30日の登壇時)はAPIの開発をしており、これから外部結合を行う予定だという。
「『アホになる』とは、自分の心理的障壁を外すこと、自らの限界に挑戦することです。無理難題にぶつかったとき、みなさんも『アホになる』選択肢をとってみませんか? だって、私たちはまだアンダー30なんですから」
未経験からエンジニアになった遠藤氏は、数多くの困難に直面しながら、成長を続けてきた。その足跡からは「自らの可能性を信じる」ことの意義が、十二分に感じられた。
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