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ブロックチェーンエンジニア超入門「Blockchain GIG 特別編」〜ブロックチェーン普及のための、ベンダーの垣根を超えた取り組み

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第一人者たちが語った、最新事例・基本技術・エンジニアを取り巻く環境

 ここからは、実際にイベントでどんなことが語られたのか、その模様をお伝えする。

エンジニアのためのエンタープライズブロックチェーン超入門

 大橋氏によって「Blockchain GIG」の概要やイベントなどの説明がされた後、セッションがスタート。最初のスピーカーは廣瀬氏だ。

日本マイクロソフト 廣瀬一海氏

日本マイクロソフト 廣瀬一海氏

 ブロックチェーンはデータを共有するための技術で、電子署名、データ共有、分散、台帳、これら4つの要素からなる。現実世界なら、例えば配達の伝票をイメージしてみよう。同じ伝票が何枚か綴られ、行く先々で配布される。この伝票はもらった順に保存し、修正してはいけないというルールがある。そのためブロックチェーンでは真正性のあるデータの共有場所を設けることになる。

ブロックチェーンとは?
ブロックチェーンとは?

 現状ではニーズは次の4つに集約されている。ビジネスプロセスが信頼できる境界域を越える場合、複数の関係者が同一データを処理する場合、信頼できる1つの情報源を中継しコントロールする場合、低価値の手作業のデータ検証手順を伴う場合だ。

 ブロックチェーンを使うことで、異業種や同業種が参加する企業間のビジネスプロセスを自動化することができる。同じ目的のために集まった組織をコンソーシアムと呼んだりする。例えば、異業種なら商品のトレーサビリティの向上を目的に使われたり、同業種なら情報共有のために使われたりする。コンソーシアムの数は年々増えていて、特に2019年には本番運用を始めた数が前年比で2倍弱ほどある。日本企業も徐々に参加していくことになりそうだ。

 ブロックチェーンには多数の不明な参加者からなるパブリックブロックチェーンと、承認された参加者からなるエンタープライズブロックチェーンがある。後者には閉じたプライベートと複数企業からなるコンソーシアムの2種類がある。

 ブロックチェーンのユースケースは今や幅広い業界にわたり、もう仮想通貨に限った話ではなくなっている。例えば日本ではSBIリクイディティ・マーケットにおける外国為替の照合作業がある。Cordaを活用した初の国内事例であり、2020年4月から商用化が始まった。他にも個人宅間での電力触接取引の実証研究、難民支援用のデジタルID、コーヒー店のフェアトレード、高級ブランドの商品追跡、航空会社とホテルとレンタカーで予約と運航情報を共有など。あらゆる領域で活用されてきている。

ブロックチェーンの技術要素と特徴

 続いて登場したのは萩野氏。ブロックチェーンの基本的な技術について解説を行った。

日本IBM 萩野たいじ氏

日本IBM 萩野たいじ氏

 ブロックチェーンでコアとなるのが「ブロック」と「ハッシュ関数」。前者は処理の内容と結果が詰め込まれた箱のようなもの、後者は改ざんを防止するために固定長のハッシュ値に変換するための関数だ。

 ブロックチェーンにはビットコインに代表される仮想通貨型と、主に企業で多くの用途に使われる汎用型がある。仮想通貨型だとトランザクション発行、検証計算(マイニング)、ブロック生成の3段階で処理が進む。汎用型ではさまざまだが、一例としてHyperledger Fabricでは、トランザクション依頼、スマートコントラクト実行(検証)、条件を満たしたらトランザクションをサブミット、トランザクションのコミット順を決定、トランザクションをコミットしてブロックを生成、という5段階で進む。

汎用型ブロックチェーン(Hyperledger Fabric)では5段階でブロック生成
汎用型ブロックチェーン(Hyperledger Fabric)では5段階でブロック生成

 いくつか覚えておきたいキーワードがある。参加者間で共有される取引データの台帳となるのが「分散台帳」で、主にブロックとワールドステートからなる。続いて「スマートコントラクト」はビジネスロジックによる処理の自動化や柔軟な台帳の活用を実現するための仕組みとなる。さらに「コンセンサス」は分散ノード間で取引の完全性をシステム的に検証して保証する仕組みだ。

 参加者間の匿名性確保や取引内容の秘匿性など、プライバシー保護には暗号技術や認証機能を用いる。例えばHyperledger Fabricでは、ブロックチェーンネットワークに参加できるのは認証局が発行した証明書を持つユーザーのみとなっている。また、ネットワーク内の台帳の共有範囲を「チャネル」や「プライベートデータ」で設定することができる。

 萩野氏はブロックチェーンを「アプリケーションを支えるデータベース」と位置づける。消すことのできない全トランザクション履歴を持つためトレーサビリティに優れており、参加者全員でデータを共有するので、不正や改ざんを防止できるのが大きな特徴となる。

エンタープライズブロックチェーンでのエンジニアのニーズあれこれ

 次のスピーカーは中村氏だ。エンタープライズ領域でのブロックチェーンエンジニアの需要や求められるスキルに関して語った。

日本オラクル 中村岳氏

日本オラクル 中村岳氏

 世界のブロックチェーンの潮流を見ると、まだニッチな段階を抜け切れていないものの実験的な段階は終わり、メインストリームに向かいつつある気配がうかがえる。

 海外のメディア記事には「ブロックチェーンエンジニアの需要が急激に増大」や「ソフトウェア開発エンジニアのロールで最も高収入な領域に」という指摘も散見される。一般的に日本は海外トレンドを数年遅れでフォローする傾向があるので、そろそろ国内でも需要増大の可能性はある。

 中村氏は個人の見解として、国内のエンタープライズ領域におけるブロックチェーンエンジニアの供給は需要に対して「まだ全然足りていない」と見ており、「今から学習を始めればアーリーアダプターなれるかも」と示唆する。

 企業でブロックチェーン技術を使うなら、多くの場合、コンソーシアム型のブロックチェーンネットワークを構築することになるだろう。開発するのは主にアプリケーション本体とスマートコントラクトになる。アプリケーション部分はSDKやAPIからスマートコントラクトを呼び出したり、ブロックチェーンノードが提供する各種機能を利用したりすることになる。ブロックチェーン部分は台帳読み書きのロジックとなるスマートコントラクトを書くことになる。データベースならストアドプロシージャをイメージするといい。

エンタープライズ領域でのブロックチェーン利用システムのあり方の典型
エンタープライズ領域でのブロックチェーン利用システムのあり方の典型

 これまでの企業が使うシステムでは単一企業内で運用するものが多かったが、エンタープライズブロックチェーンは企業間で使うため、組織をまたいでの合意や協働が重要になることを覚えておいたほうがいいだろう。中村氏は「技術者や有識者不足がポテンシャルの足かせにならないようにがんばりましょう。引き続き、勉強会で情報発信をしていきます」と話した。

***

 3つのセッション後は参加者からチャットで寄せられた質問に答えた。質問には「PoC止まりになる背景には何があるのか」、「スマートコントラクトがいまいちぴんと来ないです」など初心者ならではの質問もあり、登壇者同士でディスカッションしながら率直に答えていた。

 今後の展望について尋ねると、メンバーは異口同音に「初心者大歓迎の姿勢は貫きたい」と答えた。業界全体の知識の蓄積と共有のため、過去の「Blockchain GIG」の資料はすべて公開されているという。ブロックチェーンに既に関わっている方はもちろん、これからブロックチェーンを始めてみたいと考えているならば、ぜひとも参加してみるといいだろう。

Oracle Code Night 開催情報

 BlockchainGIGなど、ほぼ毎週オンラインで開催されるOracle Code Nightの開催情報はこちら。

 過去開催(オンライン開催)分の動画はこちらから。

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この記事の著者

加山 恵美(カヤマ エミ)

フリーランスライター。茨城大学理学部卒。金融機関のシステム子会社でシステムエンジニアを経験した後にIT系のライターとして独立。エンジニア視点で記事を提供していきたい。EnterpriseZine/DB Onlineの取材・記事や、EnterpriseZine/Security Onlineキュレーターも担当しています。Webサイト:http://emiekayama.net

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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