はじめに
はじめまして。株式会社マネーフォワードの原田です。2019年に新卒として入社した後、「マネーフォワード クラウド会計」の技術課題の解決とモバイルアプリリニューアルプロジェクトに取り組み、2020年1月からは新規サービス「マネーフォワード クラウドBox」のPdM兼エンジニアリーダーを務め、同年11月にリリースしました。2021年4月からは前回の記事で紹介したアカウント基盤の開発リーダーを務めています。
第1回〜第3回を通して、マネーフォワードでの開発のしやすさが大きく改善されたということをお伝えしました。本連載をおさらいすると、第1回では、全てのサービスのインフラを専属チームが担当し、そのチームがボトルネックになっていた状態をマルチAWSアカウント/マルチテナントEKSの導入と権限移譲で改善したことをお話しました。第2回と第3回では、接続するサービス数が多いゆえに変更しづらく単一障害点になっていたメインデータベースを疎結合にするためのデータ整理・共有ライブラリ解体の取り組みと、実際にメインデータベースへの依存を減らす取り組みとしてアカウント基盤をマイクロサービスへ移行するプロセスを紹介しました。
最終回となる今回は、マルチAWSアカウント/マルチテナントEKS環境とアカウント基盤を用いてリリースした「マネーフォワード クラウドBox」の開発を通して、マイクロサービス・スモールチームを志向するマネーフォワードでのサービス開発についてご紹介します。具体的には、プロジェクト発足から運用までの間で経験した意思決定や課題をお話します。
法改正のメリットを最大限ユーザーへ届けるための新サービス発足
事業者向けバックオフィスSaaS「マネーフォワード クラウド」は、法律と密接なプロダクトです。経理財務、人事労務に代表されるバックオフィスのルールは法律によって定められています。そのルールはIT技術の進歩やクラウド技術の台頭に合わせて最適な形へと変更されています。
2019年12月に発布された法律改正の基本方針の中で「電子帳簿保存法(以後、電帳法)」という法律に、クラウドサービスを意識した改正が行われたことで、これまで以上に電子取引を促進し、ペーパーレスによる業務効率化が可能になりました。
この法改正のメリットをユーザーに最大限享受してもらうため、クラウドBoxの開発プロジェクトが2020年1月からスタートしました。コロナ禍により脱はんこが社会的に進み、同年4月にマネーフォワードでも「ペーパーレス・はんこレスに向けた提言」を発表しました。これらの社会的背景も、プロジェクトの追い風となっていきました。
メンバー選定の背景とチームビルディング
メンバー選定はVPoEの渋谷(現執行役員)直下に新卒チームが組成されました。毎年40%を超える成長率を誇るマネーフォワードですが、成長率を加速させるためにリーダー人材の育成に力を入れています。若手にコンフォートゾーンから一歩踏み出して大きく成長してもらえる環境を作ることを目的としたアサインでした。
チームビルディングに関しては、私自身成功体験があまりなかったので社内のチームリーダーに、これまで何を意識してきたのかをヒアリングしました。また、コアチームで絆を深めていくほか、コアチームはプロジェクトを推し進めたCSO(Chief Strategy Officer)の意思決定の背景や狙いを徹底的に理解すること、関係者全員での顔合わせ、プロダクトの意義の認識合わせを行いました。