【Point2】機能で考える
2つ目のポイント「機能で考える」については、同社の製品に付属するデザイナがケーススタディとして紹介された。デザイナはライブラリの外観やプロパティをGUIで設定できる支援ツールで、プログラムを書く必要がない。
このデザイナを開発する過程においても、ある国からは「もっと機能強化をしてほしい」と要望され、別の国からは「デザイナは使っていないので、別の機能を強化してほしい」という要望が寄せられた。
デザイナを機能強化することでメリットを享受できるユーザーと、そうでないユーザーがいる。だが、グレープシティは「デザイナの機能強化を行う」と決断をし、機能の実装を行った。その理由として村上氏は、使われていない機能が悪い機能ではない点がポイントだと語り、「機能のポテンシャルと利用頻度」という観点について説明した。
縦軸に利用頻度、横軸に生産性(便利性)を置き、マップの中に機能を分類してみると、以下のようになる。利用頻度は高いが、生産性はそれほど高くない「基本機能」、利用頻度が高くて、生産性も高い「キラー機能」。利用頻度も生産性も低い機能は、「特殊用途でしか使用しない機能」だが、必要な時には非常に役立つ。
そして一番のポイントとなるのは、生産性が高いが、利用頻度は高くない機能である。村上氏はこれを「潜在的キラー機能」と呼び、高いポテンシャルを持ちながら知られていない機能であり、開発の側面から言うと、どんどん追加していい機能だと強調する。
一方で、開発と並行して、この機能をどのように使うといいのかなどを紹介するマーケティング活動も必要であると補足した。
「その機能がお客さまの目的に貢献できるものであるなら、利用頻度が低くても機能強化を行う。ただし、マーケティング活動を通じてその便利さを知っていただくことが重要。そうししたことが、お客さまにとって満足度の高い製品づくりにつながると考えています」
【Point3】データで考える
3つ目の「データで考える」については、グレープシティのJavaScript製品を例に語られた。それらはWebアプリケーションのフロントエンド開発で使えるライブラリで、さまざまなブラウザ上で動くのだが、世界的な技術トレンドを踏まえて「Internet Explorer」対応を止めようという要請が、日本以外を担当するプロダクトマネージャーたちから挙がったことがあったのだ。
Internet Explorer対応をやめることのメリットとして、「専用コードが撤廃できる」「モジュールサイズが減る」「メンテナンスコスト削減」が挙げられる。さらに、他のモダンブラウザで動く、最新のJavaScriptコードを使いながら製品を作ることで、「基礎パフォーマンスも向上させる」ことができるかもしれない。
グレープシティは、そうした開発面でのメリットはあるが、日本ではまだまだInternet Explorerユーザーが多く、この要望を受け入れることは難しいと判断。そこでデータをもとに検討することにした。
2016年当時のデータを見ると、世界のブラウザシェアはモダンブラウザが約8割を占めているが、日本のブラウザシェアはInternet Explorerが23%と、2番目の大きなシェアを占めている。こうしたデータをもとに、同社はInternet Explorerのサポートを継続することを決め、今もサポートを継続している。
ここで重要なのは、「データとニーズが一致していることを確かめること」だと村上氏。最後のまとめとして、改めて「製品で考える」「機能で考える」「データで考える」という3つのポイントが大切だと語り、セッションを締めた。
また同社では、市場の調査や分析を行った上で、製品のプロモーション戦略を立てる「プロダクトマーケティング」と、製品を開発する「プロダクトエンジニア」を募集している。フルリモート、完全週休2日制など、エンジニアが働きやすい環境や待遇を用意しているそうなので、興味がある方は「グレープシティ 採用」で検索してみてほしい。