はじめに
Webサイトはページの構造を表すHTML、スタイルを表すCSS、動きを表現するJavaScriptによって構築されています。現在Webサイトの多くが、PRや顧客獲得などのマーケティング目的で活用されており、状況に応じて内容を更新していきたいというニーズがあります。
内容の更新のたびにエンジニアに頼んでHTMLの編集をしてもらうのはコミュニケーションコストもかかりますし、貴重なエンジニアリソースの浪費とも言えます。
これを解消するのがCMSであり、エンジニアの手を借りずとも管理画面からWebサイトの内容を誰でも書き換えることのできるシステムです。
盛り上がりを見せるヘッドレスCMS
「ヘッドレスCMS」は新しいタイプのCMSです。従来型のCMSはコンテンツの入稿画面・データベースに加えて表示面がセットになっていますが、それに対してヘッドレスCMSはヘッド(表示面)がなく、APIによってコンテンツを配信するのが特徴です。
下記は国産ヘッドレスCMSであるmicroCMSでのAPIリクエストサンプルです(管理画面からすでにコンテンツは入稿されている想定です)。
fetch('https://xxxxxxxx.microcms.io/api/v1/sample', { headers: { 'X-MICROCMS-API-KEY': 'xxxxxxxx-xxxx-xxxx-xxxx-xxxxxxxxxxxx' }, }) .then(res => res.json()) .then(res => console.log(res)); /* レスポンス { "contents": [ { "id": "tZ9fFSPZO", "createdAt": "2021-10-05T08:49:43.227Z", "updatedAt": "2021-10-05T08:51:25.861Z", "publishedAt": "2021-10-04T15:00:00.000Z", "revisedAt": "2021-10-05T08:51:25.861Z", "title": "APIリクエストサンプル", "body": "<h1>見出し1</h1><ul><li>リスト1</li><li>リスト2</li></ul>", } ], "totalCount": 1, "offset": 0, "limit": 10 } */
ヘッドレスCMSでは上記のようにAPI経由で取得したコンテンツを基に、フロントエンド部分は自前で実装する必要があります。
その裏返しとしてフロントエンドはどんな言語でも実装することができ、Webに限らずネイティブアプリやサイネージデバイス等、さまざまなプラットフォームに配信可能です。
ヘッドレスCMSにもさまざまな種類があり、SaaS型、OSS型、RESTful APIだけでなくGraphQLにも対応しているもの等、多岐にわたります。
また、コロナ禍においてDX(デジタルトランスフォーメーション)の重要性が叫ばれるようになって久しいですが、それに伴ってAPI連携の重要性も急速に高まっています。ヘッドレスCMSを使うと、コンテンツを起点にAPIベースでさまざまなサービスと連携が可能になり、マーケティング活動の幅も大きく広がります。
海外におけるヘッドレスCMSの普及
ヘッドレスCMSは海外を中心に盛り上がりを見せています。
ここ数年でContentful、Prismic、Strapi、Sanity、Storyblok、GraphCMSなど数々のヘッドレスCMSが誕生し、注目の市場となっております。
中でもドイツ製のContentfulは2021年の7月にシリーズFラウンドの資金調達を行い、時価総額3000億円のユニコーン起業となりました。
サービス名 | 創業 | 資金調達額 | 国名 |
---|---|---|---|
Contentful | 2013 | $334.6M | ドイツ |
Prismic | 2013 | $20M | アメリカ |
Strapi | 2016 | $14M | フランス |
Sanity | 2017 | $55.3M | アメリカ |
Storyblok | 2017 | $11M | オーストリア |
GraphCMS | 2017 | $13.6M | ドイツ |
ContentStack | 2018 | $89M | アメリカ |
ヘッドレスCMSは主にメディア領域のヘッドレスソリューションですが、EC領域のヘッドレスコマース市場もShopifyを筆頭に急成長しています。
ヘッドレスコマースも考え方は一緒で、ECシステムから表示面をなくし、API経由で商品管理・在庫管理・配送管理などさまざまな処理を行えるようにするシステムです。
日本におけるヘッドレスCMSの普及
ヘッドレスCMSはエンジニアによる初期実装が不可欠なため、エンジニア向けサービスと捉えられがちですが、実際に管理画面を操作するのはマーケターやコンテンツ運用担当などの非エンジニアの方になるケースがほとんどです。そもそもCMSはエンジニアの方に頼んでフロントエンドのソースコードを変更することなく、管理画面からコンテンツを操作するためのものです。
そのため管理画面の使いやすさも重要なポイントの一つとなります。やはり母国語が最も使いやすいため、海外ヘッドレスCMSの状況を見ても各国がそれぞれヘッドレスCMSを立ち上げている印象があります。
日本国内においても国産のヘッドレスCMSが複数立ち上がってきており、その重要性が認知されてきております。上場企業にも導入されるケースも増えてきました。
先日行われた政府統一Webサイトの実証においてもヘッドレスCMSを採用していくと発表されており、今後ますます採用事例が増えていくことが期待されます。