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『データサイエンスの無駄遣い』著者が解き明かすデータ分析の面白さ――「人間にとってのわかりやすさを超越する」ということ

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2021/11/22 11:00

目次

データ分析の面白さ――「人間にとってのわかりやすさを超越する」ということ

――データサイエンスの面白さとはどんなところにあると思いますか?

 データ分析で「思っていたことを立証できる納得感」と「予想もしていなかったことを出す意外性」を両立させるところかと思います。どんな仮説も、定量化や可視化でクリアにしないと信用してもらえないですし、テクニカルに難しいことをやって煙に巻かれた印象を与えてしまうのもダメ。漠然としたことに「納得感」を与えることは大切です。でも、納得感だけにこだわりすぎると「だよね、データ分析をするまでもないよね」となってしまう。分析で何か要因を発見したり、感覚と違う部分があったりして分析の意義が認められるところもあるので「意外性」も重要です。

 そしてもう1つ、先程データの解釈の話をしましたが、一方でデータ分析には「人間にとってのわかりやすさを超越する」というところがあります。例えば日本酒などの製造で、経験に基づく職人技などは曖昧でわかりづらいものですが、かといってマニュアル化して人にとってのわかりやすさを重視しすぎると、何か大事なことが抜けてしまいます。コンテンツ開発でも似たところがあり、仕事としては説明可能性が重視される場面が多いのですが、それだけではなく、データ分析によって予想外の要素を創出して、自分や他者のクリエイティビティを高めていけるように感じています。そんなところもすごく面白いところだと思います。

――ある意味、職人技のような面白さがあるのでしょうね。

 そうですね。マニュアル化されたお酒が一定の品質で量産され、世界で売れているという話を聞く反面、私の地元ではマニュアル化されていない旧来の職人技で作られたお酒が美味しいと好まれています。それって少し示唆的じゃないですか。その価値を生み出すのは言語化できない経験知の積み重ねであり、いわばディープラーニング的だと思います。わかりやすいマニュアル化も大事だけど、それで重要なニュアンスやエッセンスをそぎ落としてしまうなら元も子もありません。

 データ分析を始めるための環境的なハードルは下がっており、情報もたくさんあります。さらにデバイスなどが小型化・安価になって、個人で生体データなども容易に取れる時代です。著書でも、自分でデータを取得して分析したものが多いのですが、それが誰でも取り組みやすくなっています。例えば、今ここでのインタビューでお互いの表情をスキャンして分析し、いいインタビューとは何かを考える。そんなアプローチもかなうわけです。あ、真面目に取らないでくださいね(笑)。でも、そういうことを考えるのが楽しいです。

これからデータ分析にチャレンジしたい人に向けて

――CodeZineの読者もデータサイエンスに興味を持っている人は多いと思います。そんな方々が、もしアクションを起こすとしたら、例えばどんなことが考えられるでしょうか。

 本書に登場する内容は、日常の中で起きた切ないこと・悔しいこと・やさぐれたことなどを何かに昇華させたいという思いと、電子工作やプロジェクションマッピングなどのテクノロジー起点の興味関心を何かに使いたいという思い、この2つを融合してアウトプットしました。どちらが欠けていても出てこなかったでしょう。

 なので、これからデータ分析をしてみたい方は、参考書などで一通り勉強した後に、是非ご自身の興味のあることを分析対象にしてほしいと思います。もし興味のあることに関するオープンデータがない場合は、自分でデータを収集してみてください。

 例えば、生体センサーを用いて自分自身のデータ取得および分析などをやってみてはいかがでしょうか。私は著書で自分自身に関する日常的で些細な悩みを分析したわけですが、スポーツが好きならスポーツ、ゲームが好きならゲームの分析も面白いですし、それを活かしてアプリケーションを作ってみるのも面白いと思います。自分の興味関心にひも付いた対象をテーマとすることで、データ分析において重要な、このデータはどのように集められたのか、何を前提にしたデータか、なぜこのような結果になるのか、どうすれば分析精度を改善できるかなどの視点が身につきやすいように感じます。

 一方、仕事においては、データ分析を「押し売り」することにならないように気をつけています。面白い分析結果が出るとついテンションが高くなって、相手が求めてもいないのに「このデータを使うと絶対面白くなりますよ!」と言いたくなる場合もあります。相手側のデータに対する構えが十分に醸成されていないうちは、データ分析は軽んじられるか、必要以上に期待値が高くなるかのどちらかです。相手が萎縮しないよう、わかりにくい部分などは先回りして丁寧に説明することが大切だと思っています。

――データ分析をビジネスに活かしていくための心構えや、インストールしておきたい考え方はありますか。

 おそらく、データ分析を敬遠する人の中には、データはひらめき、アイデアなどと対立するものだと思っている方もいらっしゃるかもしれません。でも、可視化されていないだけで、頭の中で何らかのデータから着想を得て、アウトプットとして出てきたのがアイデアだと思います。なので、裏返せば「データ分析なんて」と敬遠している人ほどやってみると意外な気付きがあって、それをもとにブレイクスルーが起きることがあるのではないでしょうか。

 そして、エンジニアであればもともとの素養がありますし、そうした気づきに橋渡しができるはずなので、どんどんデータ分析の世界に足を踏み入れてみてほしいです。データサイエンティストというと、パソコンの前でずっと分析しているイメージを持たれるかもしれませんが、必要とあらばデータを収集しに街に繰り出したり、データが生成される現場に足を運んだり、アクティブです。少なくとも私はそのほうが楽しいですし、血の通った分析ができるはずと考えています。

 これからも面白い発見や気づきを皆さんに共有したいですし、社会に発信したいです。一見、些細でくだらないように見える事象からも、社会的課題を解決する意外な発見があるかもしれません。

――篠田さん、興味深いお話をありがとうございました! 皆さんもぜひ『データサイエンスの無駄遣い 日常の些細な出来事を真面目に分析する』をお読みください。

データサイエンスの無駄遣い

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データサイエンスの無駄遣い
日常の些細な出来事を真面目に分析する

著者:篠田裕之
発売日:2021年10月28日(木)
定価:2,640円(本体2,400円+税10%)

本書について

「飲み会での孤立」「LINEの既読スルー」「満員電車での立ち振る舞い」など、日常生活で気になるテーマを著者の持つ独特の視点で分析。ITmedia NEWSの連載『データサイエンスな日常』をもとにした書籍です。



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著者プロフィール

  • 伊藤 真美(イトウ マミ)

    エディター&ライター。児童書、雑誌や書籍、企業出版物、PRやプロモーションツールの制作などを経て独立。ライティング、コンテンツディレクションの他、広報PR・マーケティングのプランニングも行なう。

  • 鍋島 英莉(編集部)(ナベシマ エリ)

    2019年に翔泳社へ入社し、CodeZine編集部に配属。同志社大学文学部文化史学科卒。

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