書籍執筆で学んだ4つのポイントを仕事や生活に活用
現在、鳥井氏は小学生高学年向けプログラミング入門書『ユウと魔法のプログラミング・ノート』を執筆中だ。小学5年生の主人公がコンピューター「ミニオ」を買ってもらい、「魔法のプログラミング・ノート」の助けを受けながらプログラミングを学び、周囲の問題を解決するというストーリー。プログラミングを書いてコンピュータを動かすという本が多い中で、プログラミング=自分の問題の解決というイメージをもってもらうことを目的としている。
「プログラミング教育が進んでいる学校でも、簡単なif文が『条件の考え方』であることを理解せず、『何をしているか』を言葉にできていない事例を目にしました。言葉で考える方を身に付けることが大事であり、主人公を通じて追体験させたいと考えた」と語る。
そこで具体的にイメージができるよう、挿絵を多用。『メタモルフォーゼの縁側』などの作者である漫画家・鶴谷香央理氏がイラストを担当している。また、小学生にも理解しやすいよう、専門家として、立正大学 社会福祉学部 准教授であり一般社団法人スローコミュニケーション副代表の打浪文子氏の監修を入れている。
最初の原稿は打浪氏からまったくのダメ出しを受けて、章構成からやり直すことになり、添削されながら書き進めることになった。なお、「わかりやすい日本語」については、同社団の『「わかりやすさ」をつくる13ポイント』にまとめられており、その中で鳥井氏が特に「参考になった」と語るのが、構成と文章に関する4つのポイントだ。
まず、構成として「情報の絞り込み」の重要性が紹介された。執筆中の本では、「変数」「条件分岐」「繰り返し」「関数」の4要素で構成されており、うち「変数」は5つのトピックスについて書くつもりだった。しかし、それをストーリー内では重要な3つに絞り、他2つは演習問題とコラムで「枝葉は読みたい人が読む」という位置づけにして紹介することにした。
そしてもう1つ、構成のポイントとしては「比喩ではなく具体例を示すこと」を挙げた。たとえば、変数は「箱」が比喩として取り上げられることが多い。しかし、それではわかりやすいように見えて、比喩に置いていかれることもあり、特に小さい子どもには理解が難しい。そこで、実際に何が起きているのかを「具体」をリアルに紹介し、抽象になりがちなのを補足するために図をいれることが効果的だ。変化がある部分はイラストで表現する試みも行っている。
文章については、「主語をはっきりさせること」が重要だ。日本語は基本的に主語を省くことも多い。それをあえて、主体を明示することでわかりやすくするわけだ。鳥井氏は「読み手の認知の負荷を減らすことで、より理解しやすくなる」と語った。
そしてもう1つ、文章のポイントは「文を適度に短くする」ことだ。前提をおいて話をする際などに、「〜だが、」などで文をつなげがちだが、それをあえて文章を分ける。その際に、適切な接続詞がつくことで、よりわかりやすくなる。
「挙げられたポイントは、誰でも思いつくことではあるが、これらを意識することで『よりわかりやすい文章』を書くことができる。発信者は受け手よりも情報を多くもっていることが多いので、わかっていることを前提にしがち。そこで、意識して情報を与え、相手が想像で補う部分を減らすことで、より明瞭でわかりやすい文章になる」と鳥井氏は語り、「顧客への要件整理やチャットコミュニケーションなど、ぜひ仕事の場面でも意識してみてほしい」と述べた。