QAに詰まっている、プロダクトの価値と向き合うノウハウ
このようなモヤモヤを解決するため、朱峰氏はさまざまな角度から事例や文献を調査した。今回はその中から、「ワイガヤテスト」という概念につながった、QA領域と心理的安全性という2つの切り口にフォーカスして調査した事例や文献が紹介された。
QA領域にフォーカスしたのは、朱峰氏自身、QA領域に強みを持っており、QA活動のガイドラインや事例には、プロダクト価値といい感じに向き合うためのノウハウがあるのではという個人的な仮説があったからだ。そこでアジャイルQAという領域ではどのようなことが言われているのかを調査したという。
まず調査したのは、アジャイル品質パターン(QA to AQ)。早稲田大学の鷲崎弘宜教授をはじめ、著名なソフトウェアエンジニアがアジャイル品質の考え方と推奨される活動を、4つのカテゴリと23のパターン集としてまとめたもの。この文献では「開発チームにおいて、品質保証メンバーと残りのメンバー間の障壁をなくし、皆が品質に関わる。これが鉄則」としっかり記述されていたという。
次に調べたのが日本におけるソフトウェアテスト技術者資格認定の運営組織JSTQBが作成した「アジャイルテスト担当者シラバス」。ここでも「チーム全体のアプローチという項目で、QAだけでなく、チーム全体が品質に対する責任を持つこと」というように、先の文献と同じようなことが書かれていた。またチーム全体のアプローチの本質はロールに関係なく同じ方向を向くため、PO、開発者、QAの三者が一体となって同じ方向を向いて仕事をする「3人の力(Three Amigos)」アプローチを解説していたという。
さらに「Growing Agile:テスティングマニフェスト」でも同様のことが書かれていたという。Growing AgileはSamantha Laing氏、Karen Greaves氏らが所属するコンサルティング企業。ブロッコリーという通称で活動している風間裕也氏の個人ブログで日本語に翻訳して紹介している。この文献ではアジャイルQAにおける重要な5つの価値観をマニュフェストとして紹介しており、その1つが「テスターの責任よりも品質に対するチームの責任」である。