たった4人の改善活動が全社規模に拡がるまで
そこで萩田氏ら社内有志が集まり、これら技術的負債と組織的負債を返済しながらより良い開発者体験(Developer eXperience)を実現しようと行動を起こした。それまで社内の各所で個別に改善活動を繰り広げていた同志を集め、2021年にまずは4人のグループで活動を開始。手始めに少数の開発者にヒアリングを実施し、現場が抱えている課題を可視化する取り組みを始めた。
やがてこの自主活動は7名体制のチームへと発展し、日本CTO協会が作成したDX進捗度を評価するアセスメントシート「DX Criteria」と照らし合わせながら自社のデジタル化の現状を客観的に評価する取り組みに着手した。その結果、DX Criteriaの基準から大きく乖離していることが判明した。
この結果を受け、早急に状況を改善する必要があると判断した萩田氏らだったが、当時の組織体制では実行力のある改善活動を進めるのは困難であると思われた。その理由について同氏は次のように述べる。
「全社規模の観点からリソースを最適配置して利益の最大化を図りたい経営と、自分たちの組織が持っているリソースを活用して効率よく業務を遂行したい現場とでは、戦っているフィールドが根本的に異なります。そのため、現場視点の改善と全社規模の最適化を同時に実現するには、両者を橋渡しできる『組織全体の課題解決に責務を持つ組織』を作る必要があると考えました」
そこで萩田氏らが経営陣に働きかけた結果、2022年に新たな組織「プロダクトDMO」が発足する。早速この組織を中心に、社内の開発者全員を対象にアンケート調査を実施し、現場の課題を拾い上げて可視化する取り組みを始めた。記名式のアンケートだったにも関わらず300件近い回答が寄せられ、これらの内容をプロダクトDMOで精査した後に優先順位を付けた後、実際の改善活動に取り組むことになった。