経営理念に「結婚を、もっと幸せにしよう。」を掲げ、デジタルでウエディング業界を開拓する
初の登壇という曽谷俊介氏は、2019年、「ITの力でウエディング業界を開拓する」というコンセプトに興味を持ちウエディングパークに新卒で入社。広告運用チームでの開発を経験後、国内のコンテナ移行プロジェクトを経て、現在は新規サービスの立ち上げメンバーとして設計・開発の推進を行っている。自らを「自己開示苦手マン」と分析する曽谷氏だが、元々ものづくりが好きで、中学時代にTVドラマ「ブラッディ・マンデイ」を観てプログラミングに憧れたのがエンジニアになったきっかけ。同社の採用面接で、「この人たちと一緒にかっこいい開発組織を作りたい」と感じたことが入社の決め手になったという。
ウエディングパークは1999年に設立。ビジョンとして「21世紀を代表するブライダル会社を創る」を掲げ、2004年に日本初の結婚式場のクチコミ情報サイトを開設し、以降フォトウエディングやドレス選び、指輪選びなど、“ウエディング”の各領域に特化した専門メディアを複数運営している。
またメディア以外にも、クライアントである結婚式場へのノーコードツールの提供やデジタル広告、DX推進、オンラインスクールなども展開し、経営理念である「結婚を、もっと幸せにしよう。」を体現するべく、デジタルの力でウエディング業界の発展に寄与することを信条としている。また、2021年から「デザイン経営」を掲げ、「式場・カップル、それらをとりまく“社会の視点”から、全社員がつねに問い続けて仕事を生み出せるようになること」について部署を関係なく全社員が取り組んでいるという。
4年目で新規事業に挑戦! しかし、もやもやも……。
そんなウエディングパークに入社し、曽谷氏はWedding Parkサイトの運用開発チームに所属し、サイト内の自社広告の運用開発や広告の新商品などの新規開発を担当していた。曽谷氏は「約20年間続くサイトの運用をメインに担当し、売り上げにも直結する仕事だったため、常に緊張感があった。任された仕事で期待以上の成果を出すべく、120%の力でとにかくやり切ることに3年間を費やした感がある」と振り返る。
そして、入社4年目のある日、運用メインでの開発案件から、さらに「エンジニアとしての領域を広げるために新しい挑戦がしたい!」と一念発起。新規事業への興味をキャリアアンケートに書いたところ、新規事業の開発担当に抜擢された。ローンチ前につき詳細はふせられたものの、結婚式場とカップルとのベストマッチを動画のクリエイティブで実現していこうというもの。初めてのゼロイチ案件で、楽しみやワクワク感が先行したものの、まもなくエンジニアとして新規事業にどう関わればいいのかというもやもやが生まれてきた。
しかしそんな時、先輩エンジニアが発した、社内プレゼンでの一言が心に刺さったという。それは「エンジニアとしての開発スキルはもちろん大事だけど、それだけではいいプロダクトはできない。スキルも、プロダクトも、チームも大切」という言葉だった。これを聞いて、自分の視野の狭さに気づき、「クリトラ」のことだと思い当たったという。
クリトラとは、「Creators Triangle」の略であり、ビジョン実現のためにWedding Park クリエイター(エンジニア・デザイナー)の在るべき姿を表した行動指針で、3年前に作られた。もちろんクリエイターにとってスキルは大切だ。しかし、それだけではいいプロダクトはできない。そこで、チームとスキル、そしてプロダクトの3つのバランスをとり、大切にしていくことが、「クリエイターのあるべき姿」として行動指針に定められている。
曽谷氏は先輩エンジニアの一言から、こうした「考え方」の大切さに気づいたという。そして、「エンジニアに必要なのはスキルだけではない。チームがあって、プロダクトがあって、スキルがある。そう考えれば、今回任された新規事業は、新しいメンバーかつ新しいサービスであり、まずは『チーム』の土台作りが必要だと考えるのは自然だった」と当時を振り返った。
「自己開示苦手マン」だからこそできるチームへの貢献
また、続いての壁として、曽谷氏は「チームの壁」をあげた。新規事業とはいえ、曽谷氏は途中参加の身。立ち上げ初期から意思決定してきた人と自分とでは、サービスにかける想いも理解力も差があることを実感し、このままでは、言われたものや決められたことを開発する“作業者”になってしまうと危機感を覚えた。そこで、これから一緒にチームとして、同じ目標に向かって走っていくためにもサービス価値の認識を揃えたいと考え、サービスのありたい姿や価値をすり合わせ、共通言語をつくるための合宿を開催した。合宿では、まず競合サービスについて細かく調査を行い、競合情報を基に新規事業の強みと弱みについて議論し、さらに新規事業の共通言語として「ありたい姿(サイトコンセプト)」を決めるというステップを踏んだ。
この合宿において、曽谷氏は、他の案件で実績のある先輩に合宿の進め方を相談した。さらに、待つのではなく、自分から合宿を成功させてチームをつくることを意識。もともと自己開示が苦手という自分がやることで周りのメンバーも「まさか、あの曽谷が…」と思い、ついてきてくれるのではないかと考えたという。曽谷氏は「意外性を見せることで、この案件に対する熱意やサービスにかける思いが伝わり、チーム力を高められたのではないか」と振り返り、「改めて合宿で、組織目線や共通言語、職種関係なく当事者意識を持つこと、そして何よりもチームは本当に大事であることを実感した」と熱く語った。
QCDの観点は、プロダクト開発にどのような影響を及ぼすのか
そして、続くプロダクトを創るフェーズでは「プロダクトの壁」に突き当たった。合宿を通してチームづくりの後、話し合った内容をプロダクトに反映させるために、要件の洗い出しを行ったのだが、その際に先輩エンジニアとの大きな差を実感することになる。曽谷氏はまずタスクを洗い出し、実装できるかどうか分からない部分を後回しにしようとしたのに対し、先輩エンジニアは要件が出揃った後、QCD(Quality/品質・Cost/コスト・Delivery/納期)の観点から優先順位を決めて、今やるべきか判断するという考え方で、そのためにも採用する技術の検証を先行させた。
曽谷氏は「先輩と自分のプロダクトへの付き合い方が全く違うことに気付かされた。まだまだ自分にはエンジニアとしてプロダクトに貢献する意識が足りていないと実感した」と語る。そして、いつまでに利益が出せるのか、そのためにはいつまでにリリースしなければいけないのか、どのくらいリソースやお金をかけて開発するかというQCDの観点が足りていないことに改めて気づいたという。そうなれば、当初抽出した要件についても必然的に優先順位が変わってくる。また、合宿で議論した「サービスの強み」が要件優先度を決めるための「ものさし」となることを実感した。
曽谷氏は「先輩から一つでも多くのことを学ぶ意識が重要」と語る。経験の多い先輩にサポートを受けながら実施した今回に対し、「次は自分が同レベルのことをやれるのか?」と考えた時、今後は“ただ同席”してもらう意識は捨てようと決意したという。
「自己開示苦手マン」に必要だったスキルとは?
そして、実際につくり出し始めるとぶつかったのが、「スキルの壁」だった。実現したいことが山ほどあるのに現在の自分のスキルだと実現ができないという事実。そもそも新規事業であり、未知の領域で社内にも事例やナレッジが少ない状況だった。そこで冒頭の自己紹介でも触れていた「自己開示苦手マン」が問題となった。
新規事業を任されたという責任感を誤った方向で捉えてしまい、実装でわからないところがあってもチームに相談できず一人で何とか解決しようとしてしまった。その結果、時間がかかるようになり、だんだんスケジュールに遅れが出始める。それでもなんとか巻き返せるというスキルへの過信がある一方で、心の何処かでは無理なのではないかとプレッシャーを感じるようになっていった。その結果、納期に間に合わないという最悪の結果を招くことになった。
そんな時に、先輩エンジニアに相談したところ、「新規事業はわからないことがあるのは当たり前。だから、恥ずかしがらずに開示して頼ることが大切。チームで補い合って進めていこう」と諭された。そこで、「自分には全部をやり切れるスキルはまだない。一人でできないことは周りを頼って進めよう。チームで勝つ意識が必要だ」と考えを改めたという。
頼り下手な自分のために個別の相談タイムを設けてもらい、日時で見積もりと実績を比較し、遅れがあった場合はすぐ対処できるようにした。さらに、技術的に難しいと判断した範囲は担当者を入れ替えて納期に間に合わせるようにした。そして、チームとプロダクトの視点によって、コトに向かうことが大切であり、苦手だった「頼る」ことがプロジェクトを進める上での「スキル」の一つだったことに腹落ちしたという。そして、もう1つ大事な考え方として、仕事の中で自分のスキルを磨くのではなく、仕事に活かせるスキルを事前に磨いておくことが大切だという気づきも得ることとなった。
新規事業に携わったことで変わったスキルの捉え方
曽谷氏は「新規事業の開発を通じて自分のスキルを磨いていこうと考えていたが、やるべきことができてからキャッチアップしていては十分とは言えない。組織が実現したいことに技術で貢献できるように、あらかじめ技術の引き出しを事前に用意するのがエンジニアのあるべき姿ではないか」と語った。
新規事業への参画を希望した際には、自分自身の成長や狭い意味でのスキルにのみ目が行っていたが、合宿を通じて、チームの目線を揃える大切さに気づき、さらにプロダクトの設計前には事業目線で優先順位を見極める力の大切さを実感。さらに実装時には、つくることだけがスキルではなく、チームで協力し合うスキルもまた重要であることを知ることとなった。全体を通して、スキルの捉え方が大きく変わったという。
最後に曽谷氏は、U30のエンジニアに対して伝えたいこととして「開発をするだけがエンジニアではない」と述べ、ゼロからイチを生み出す新規事業を経験したことで、「開発する」から「事業を創る」へ視点が大きく変わったと語った。そして、「サービスの価値や意義についてメンバーと意識を揃えたことで、自分が開発したものがプロダクトにとって、またそれを利用する人にとってどのような価値を与えているのかを意識するようになった。そして、自分のスキルアップだけに目が向きがちだが、技術はあくまで手段。ビジネス視点をもってものづくりができれば、エンジニアとしての幅が広がっていく。自分もまた学びの途上にあるので、皆さんと一緒に学んでいきたい」とメッセージを送り、セッションのまとめとした。
業界のイノベーションを一緒に起こしませんか?
ウエディングパークでは現在、共に働く仲間を募集しています。「21世紀を代表するブライダル会社を創る」というビジョン、「結婚を、もっと幸せにしよう。」という経営理念に共感し、デジタル×ブライダルという領域で世の中に貢献する新しいサービスを創りたいという方を心からお待ちしております。