キャリアをあえて計画しない「偶然」と環境の変化が生む「偶然」
また、よい偶然が生まれる瞬間には、いくつかパターンがある。VTRyo氏は、自身の経験から、そのうちの2つを紹介した。
1つ目は、キャリアを計画しないことで生まれる偶然だ。夢や目標がない人でも、今やっていることが、そのままキャリアになることはある。
「例えば、フロントエンド開発をしていても違う分野に挑戦したり、マネージャーや営業といった違う職種にチャレンジしたりするなど、今おもしろそうと思ってやっていることでも全然いいと思います。いろいろな選択肢があるときに、どれが楽しいか、という基準で選んでみることをおすすめします」
漫画『宇宙兄弟』(講談社)の中には、「『どっちが正しいか』なんて考えちゃだめよ」「『どっちが楽しいか』で決めなさい」というセリフがある。この心構えこそが、おもしろいキャリアを作るのだとVTRyo氏は話す。
また、VTRyo氏はコラムニストのマツコ・デラックス氏の例にも触れた。マツコ・デラックス氏は、「流されることで、自分の意志と違う場所にいける。自分の意志で進むと自分で選んだ場所にしか行けない。流されてみると自分が絶対チョイスしない場所に着いたり、見えない景色が見えたりする。気づいた瞬間を大事にしてほしい」と話している。やりたいことに踏ん切りがつかなかったとしても、提示された選択肢をとりあえずやってみることで、キャリアを構築できる場合もある。
2つ目は、環境の変化だ。この場合、夢や目標があっても、好奇心や柔軟性を忘れないようにしておくと良いことがある。
「例えば3年後にCTOになりたいとか、5年後にマネージャーになるという夢があったとします。でもその途中で、AIが出てきたり、マネージャーだけでなく営業に興味が出てきたりと状況が急に変わる場合があるかもしれません。もし変わったら、ぜひ挑戦してほしいです」
次にVTRyo氏は、メジャーリーガーの大谷翔平選手を例に挙げた。
「大谷選手は、投手と野手を同時に行う、プロ野球界の常識を変えた人物です。彼は元々高校卒業後、アメリカに行こうとしていました。しかし、北海道日本ハムファイターズが彼を単独一位指名し、『日本でプレーしてからアメリカに行くべき』とプレゼンで何度も時間をかけて交渉しました。大谷選手は、『徐々にやってみたいなという気持ちが強くなった』と承諾して、日本でプレーした後にアメリカに渡り成功します」
このように、自分の興味にしたがって、夢と直接関係がなくても「寄り道」をすることは、視野が狭くなるのを防止できるのではないか、とVTRyo氏は解説した。
小さいことを、キャリアの線にする
あなたがITエンジニアという職業を選択したときに、何かきっかけはなかっただろうか。何か偶然はなかっただろうか。
「他にも誰かとの出会いなど、たまたまだけど面白くて印象に残っていることがあればぜひ思い出してみてほしいです。今まで意識しなかった小さな偶然に、目が向くようになります」
小さなことでも、信じて偶然を探してみる。その積み重ねがいつか線になるのだとVTRyo氏は話す。また、セッション後の懇親会で実践してほしい行動として「登壇者に一言でも感想を伝えること」を提案した。
懇親会での出会いがどのような線になるのか? VTRyo氏は、過去に参加した懇親会で行動を起こすことで、今の会社に転職するつながりや、リスペクトするエンジニアとの出会い、また本イベントでの登壇のきっかけを掴んだ。
最後にVTRyo氏は、「こういった行動を続けた際、実際にいろいろな縁が重なって、Developers Boostへの登壇が実現しました。オフラインやオンライン問わず、ぜひ何らかの方法で良い偶然を起こす行動にチャレンジしてみてください」と若手エンジニアに向けてエールを送り、セッションを締めくくった。