仕事の効率を上げるために、20代を通して向井氏が感じたこと
かつて向井氏はBattle Conference U30 #2019にて「30代のキャリアを意識した20代のキャリア戦略」と題して、キャリア戦略について講演したことがある。当時まだ26歳。サイボウズに転職してまもないころだ。すでに不確実さが増す世の中だったので「30代を予測しない」「30代に向けて20代では土台を増やす」などが主要なメッセージとなっていた。
4年が過ぎ「20代を終えて思うことは、健康が一番大事」と向井氏は力を込める。マネジメント職になり、本業も副業も含め、いろんな人が頑張る姿を見てきた。「20代、みんなめっちゃ頑張るんですよね。不安もあるけど、挑戦もしたい。自分もそうだった」と向井氏は振り返る。「でも、健康でなければキャリアもスキルも何もない!」と力説する。
例えば、100%のパフォーマンスで稼働できた日があったとしても、翌日20%だともったいない。社会人人生は長い。安定して70〜80%を維持できる人のほうが、長い目で見ると多くの仕事をさばけるし、信頼も得られる。
20代の向井氏は無理してしまいがちだった。特に社会人なりたての営業職の時は未明まで働き、睡眠時間を削るような日々を送ったこともある。フロントエンドエンジニアになると、周囲に追いつきたくて長時間残業した。少しくらい体調不良でも、かまわず仕事に没頭した。
周囲を見渡すと、自分より短時間で仕事をこなす人もいた。当初はスキルの違いだと思った。しかし集中力が違うのだ。向井氏が就業時間内に1つ片付けるタスクを、彼らは就業時間内に3〜4個も片付けてしまう。だから向井氏は残業して、少しでも多くタスクを片付けようとした。
ターニングポイントは3〜4年前。無理がたたって胃腸炎になり、救急車で運ばれたことがあった。にもかかわらず、翌日は体調が微妙なまま働き続けた。リーダーから「休んでもいい」と勧められたのに、低パフォーマンスのまま働き続け、結果的に再び不調がぶり返して休む羽目になった。
「頑張ったはずなのに結果的にマイナスになり、もったいないことをしていると気づいたんです。その時リーダーが『健康であること、安定してパフォーマンスを発揮することもプロとして大事なこと』と教えてくれました。これも重要で貴重なスキルだと気づき、意識を向けるようにしました」(向井氏)
以来、早寝早起きと規則正しい食生活を心がけた。コロナ禍で出勤がなくても、朝は太陽をあびるなどを繰り返したら、体調不良もなくなり、パフォーマンスも格段に上がった。何より集中できるようになったことが大きい。もし具合が悪くなったら諦めて休むが、翌日には完ぺきに治して職場復帰する。向井氏は「いろんな人の信頼を得るようになり、妥協せずにいろんなことをこなせるようになりました。健康が大事とはこういうことです」と説明する。