Android StudioのABCシリーズに追加された新機能とは?
本稿は、Android StudioのABCシリーズに追加された新機能を、バージョン横断でテーマごとに紹介するものです。まず、このABCシリーズが何かを紹介していきます。
ABCシリーズとは
Android Studioは、2021年7月にリリースされたArctic Foxからバージョン番号の付け方が変わりました。Arctic Foxのひとつ前のバージョンは、4.2です。この4.2の次にリリースされるバージョンは、通常ならば、4.3となります。しかし、このリリースからバージョン番号の付け方を変更し、「Arctic Fox | 2020.3.1」としてリリースされました。このように変更した理由としては、Android Studioの元となるIntelliJ IDEAのバージョン番号と関連を持たせるためです。このArctic Fox以降のバージョン番号とリリース年月をまとめると、表1のようになります。
バージョン名 | バージョン番号 | リリース年月 | バージョン名の動物 |
---|---|---|---|
Arctic Fox | 2020.3.1 | 2021年7月 | 北極狐 |
Bumblebee | 2021.1.1 | 2022年1月 | マルハナバチ |
Chipmunk | 2021.2.1 | 2022年5月 | シマリス |
Dolphin | 2021.3.1 | 2022年9月 | イルカ |
Electric Eel | 2022.1.1 | 2023年1月 | 電気ウナギ |
Flamingo | 2022.2.1 | 2023年4月 | フラミンゴ |
Giraffe | 2022.3.1 | 2023年7月 | キリン |
Hedgehog | 2023.1.1 | 2023年11月 | ハリネズミ |
先述の通り、新しいバージョン番号は、Android Studioの元となるIntelliJ IDEAのリリースに合わせることになっています。それが、表1のバージョン番号に表されています。このバージョン番号のうち、.(ドット)で区切られた最初の数字は「IntelliJ IDEAのリリース年」、次の数字は「IntelliJ IDEAのバージョン番号」、最後の数字は「Android Studioのメジャーバージョン番号」を表します。そして、このIntelliJ IDEAに関する数字が変更されるたびに、Android Studioがメジャーアップデートされるようになっています。
また、Android Studioのメジャーアップデートごとに、アルファベット順にそのアルファベットから始まる動物の名前がバージョン名として割り当てられるようになっています。その最初のバージョンがArctic Foxであり、原稿執筆時点での最新がHedgehogとなっています。そのため、Arctic Fox以降のAndroid Studioを、属にABCシリーズといいます。
なお、それぞれのメジャーバージョン内において、バグフィックスなどの修正バージョンは、Patch1、Patch2などの形で随時リリースされており、HedgehogもPatch2がリリースされています。
本稿で扱うテーマについて
本稿では、このABCシリーズにおいて、原稿執筆時点で最新であるHedgehogまでに追加された機能を、バージョン横断でテーマごとに以下の内容を紹介していきます。
- 新しいプロジェクトテンプレート
- 新しいデバイスマネージャとエミュレータ
- 新しいLogCat
- 新しいレイアウトインスペクタ
- 新しいアプリインスペクタ
- 新しいプロファイラ
今回は、このうち1〜3を、次節以降、順に紹介していきます。4以降については、次回紹介します。
Flamingoで変更された新しいプロジェクトテンプレート
最初に紹介するテーマは、プロジェクトテンプレートです。Android Studioでアプリを作成する場合、まず、プロジェクト作成ウィザードに従ってプロジェクトを作成します。その際、第1画面でプロジェクトのテンプレートを選択します。このテンプレートが、Flamingoでかなりの変更が施されています。
Empty Activityテンプレートの内容が変更
図1は、最新のAndroid StudioのPhone And Tabletのテンプレートです。Electric Eelまでは約20個のテンプレート数があったのと比べて、内容がかなり整理され、コンパクトになっています。
それだけではなく、一番大きな変化は、Empty Activityテンプレートの変更です。Electric Eelまで、長らくEmpty Activityテンプレートは、あらかじめ書かれているコードが一番少ないテンプレートであり、レイアウトxmlファイルを利用してAndroidアプリを一から作成する場合に選択するテンプレートでした。これが、Jetpack Composeを利用したものへと変更されています。もちろん、Jetpack Composeのテンプレートですので、使用言語はKotlin限定となっています。
一方、これまでのEmpty Activityテンプレートは、Empty Views Activityテンプレートへと名称が変更されています。これまでのつもりでEmpty Activityテンプレートを選択してプロジェクトを作成してしまうと、レイアウトxmlファイルが存在しないプロジェクトとなるので、注意してください。
Material3の採用
テンプレートの種類が変更されただけでなく、その内容も変わっており、一番大きな変更は、Material Designの新バージョンであるMaterial3を全面採用した点です。それに伴い、デフォルトのテーマが、Material3のアクションバーのないもの(Theme.Material3.DayNight.NoActionBar)に変更されています。
テーマアイコンとダイナミックカラーのプレビュー対応
Material3には、ダイナミックカラー(Dynamic Color)という考え方が含まれており、Android 12でリリースされ、Android 13で拡張されています。それに伴い、Flamingoでは、このダイナミックカラーのプレビュー機能が追加されています。
まず、レイアウトエディタのデザインモードで、図2のように、テーマを選択するドロップダウンから、Material3.DynamicColors.DayNightを選択します。
その上で、図3のようにモードの選択の[Dynamic Color]から任意の背景を選択すると、レイアウトエディタのプレビューの色合いが、選択した背景に合わせて変化します。