生産性が26倍になるチャットAIの役割とは
授業に参加した学生のほとんどは、プログラミングが未経験の文系学生だ。それでもチャットAIのサポートを受けることで、たった3カ月で民間企業のデータを分析し、成果報告まで達成できるようになった。横山氏はこの学生たちに類似するケースとして、「IT企業の新入社員が3カ月かけて研修を受けて現場に出る状況と似ている」と指摘する。
そのうえで、今回の学生と新入社員の違いは「1週間あたりのプログラミング学習時間」だ。学生は週1コマ(105分)と課題に対して、社員はフルタイム勤務(8時間×5日)と自己学習。「単純計算で26倍の差があるにもかかわらず、最終的なアウトプットは近い。極端な言い方をすれば、チャットAIでプログラミングを学んだ学生の生産性は26倍といえるのではないか」(横山氏)
授業を新入社員の研修に例えると、重点を置いたのはOJTにあたる部分だ。授業前半では新卒研修にあたるような最低限で基本的な内容を学び、授業後半では実際に手を動かしてプログラムを書く量をこなした。OJTでは先輩が隣について教えてくれることが多いが、今回の授業でその役割を果たしたのはチャットAIである。学生はわからない点を先輩ではなくチャットAIに質問し、Pythonの書き方などを教えてもらいながら作業を進めたのだ。
講師である横山氏の役割は、魚ではなく魚の釣り方を与えること。一つひとつのプログラムの書き方を教えるのではなく、チャットAIへの質問の仕方やキーワードなどをアドバイスした。また、学生との質疑応答を記録して共有し、ほかの学生が参考にできるようにした点も特徴だ。
授業の最終日には、楽天・Amazon・Yahoo!ショッピング間でのTシャツの価格の変動や、特定の商品の価格と物価の推移の比較など、学生がそれぞれのテーマで成果を発表した。横山氏は「プログラミング初心者でも、3カ月で民間企業のデータを活用してこのようなレポートを作るところまで持っていけた」と評価する。
授業後のアンケートでは、学生から「物価やプログラミングについてさらに知識を付け、もっとさまざまな分析をしたい」「実際のデータを見たことで、統計の学習という枠から抜け出してさまざまな応用方法を想像できた」「実践的なデータ分析の方法を体験することができた」「学んでいる分析手法の活用先を知ることができた」といった感想が寄せられていた。授業に参加した14人のうち2人は株式会社風音屋にインターン生として参画し、実際にデータを分析してクライアント企業の執行役員に結果をレポートしているそうだ。