アジャイルは開発だけでなく、事業創出や組織運営にも適用できる
──DICのメンバーは、三菱電機の各事業に伴走し、仮説検証型アジャイルを用いて支援を行いながら、多様なサービスを創出していくんですね。
細谷:横浜市みなとみらいのオフィスに約500人のDX関連の人材を集結させる予定です。この場を活用して、DICと各事業所がDXを推進し、事業を進展させていきます。仮説検証型アジャイルの方法論を構築し、人材を配置して適用支援や事業創出を行います。また、データ分析の専門家も加わり、データからインサイトを得て新事業を提案するサイクルを回す場と仕組みづくりを進めています。
DICでは、私たちが重視する価値観を全員で議論して策定しています。例えば「リリースはゴールではなくスタート」といった考え方を共有しています。また、アジャイル開発と品質管理システムの融合にも取り組んでいます。社内ではアジャイル開発でどのように品質保証をすればいいか悩む部門もあるため、DICで構築した品質管理システムを他部門でも活用できるようにしています。
市谷:三菱電機でのアジャイル開発導入には、細谷さんの活動が基盤となっています。社内にガイドラインや相談できる人材がいることは大きな利点ですが、今後は新たな課題に直面します。事業部門が未知のプロセスやツールを使いこなすのを支援しつつ、彼らが主体となって事業を作り上げていく必要があります。DICの役割や期待値を明確にし、各部門と調整しながら、真の価値創造を目指す段階に入っています。
アジャイルの適用範囲がソフトウェア開発から組織全体へと広がると、必ずといってよいほど混乱が生じます。各段階での難易度や期待される成果を認識し、適切に対応することが重要です。完璧な解決策はまだありませんが、DICはこれらの異なる側面を統合しようとしており、大きなチャンスだと感じています。
──アジャイルは、個々の技術者の実践が重要だと思っています。現場のエンジニアはどのようにアジャイル推進に貢献できますか。
細谷:以前、当社のアジャイルの取り組みにはほとんど私が関与していました。最近では現場の技術者が自主的にアジャイル開発に取り組む例が増えてきています。技術者自身が問題意識を持ち、自発的にアジャイルを実践し始めており、これは非常に重要な変化です。
ただし、自分たちだけで取り組んでもうまくいかないこともあります。これまでの経験から、効果的だったのはさまざまな人との対話です。アジャイルに関わっていない部門の人々や上司など、多様な立場の人と話を重ねることで、企業の活動や目的と結びつき、大きな変化につながる可能性があります。現場のエンジニアがアジャイル推進に貢献するには、自分の取り組みを組織の文脈に位置づけていくことが重要です。
市谷:アジャイルの考え方はソフトウェア開発だけでなく、事業創造や組織運営にも適用できます。例えば、ペアワーク、タイムボックス、バックログ管理などの手法は、事業チームの運営、さらには組織全体の管理にまで応用可能です。ソフトウェア開発で培ったアジャイルの経験は、より大きな組織的課題にも通じるものがあります。エンジニアの皆さんには躊躇せずにアジャイル実践に邁進してほしいです。
──最後に今後の展望をお聞かせください。
細谷:DICの拠点は横浜ですが、活動はグローバルに拡大していきます。当社グループの海外拠点でもアジャイル開発が盛んに行われているので、そういった拠点と交流することで新たな視点を得られると期待しています。日本ではまだウォーターフォールが主流ですが、グローバル企業として、すでにアジャイル開発で成果を上げている海外の仲間たちと経験を共有し、一緒に活動していくことを目指しています。
──ありがとうございました。今後の三菱電機の変革を楽しみにしています!