拡大期:スケールして収益を上げる
拡大期のプラットフォームでは利用料の確定が必要です。スタートアップが投資家から出資を受けるように、検証期までのプラットフォームは自社から出資を受けて立ち上げるケースがほとんどです。出資がなくてもプロダクトが持続できるよう利用料で収益を得る必要があります。利用料はストリームアラインドチームが既存ツールと比較しても採用したくなるよう設定するのが理想です。グローバルに展開している既存ツールと利用料の低さで勝負するのではなく、より高い利用料に見合った独自価値を提供するケースが多いでしょう。仮説期で定めた顧客セグメントと課題を見直し、価値の提供先と提供内容を増やせるかも検討します。
プラットフォーム特有の考慮点として、収益が多いほど良いとは限りません。高すぎる利用料設定はストリームアラインドチームが事業拡大をする上で疎外要因になる可能性があります。利用料を下げて事業領域に還元するのか、収益をプラットフォームに追加投資して加速させるか、出資分を何年で回収を予定するかを経営層と合意する必要があります。
利用料が決定したら、利用料に見合う価値が提供できているかを説明する必要があります。ストリームアラインドチームに対しては、開発生産性に関する指標が判断材料として利用できます。経営層に対しては、自社への金額的メリットでプロダクトの価値を説明できる必要があります。アプローチの一つは開発生産性に関する指標から自社への収益を試算することです。指標と収益の変換率をあらかじめ合意しておくことで、プロダクトの拡大と自社の成長が同じ方向性であることを示します。
成熟期:競争優位性を保つ
安定した収益をプラットフォームの機能開発に充てられるようになったら、プロダクトとしての完成度を高めて競争優位性を保ちます。競合優位性の確認はボトムアップとトップダウン双方から行えます。拡大期の利用料設定で行った既存ツールとの比較はボトムアップのアプローチに相当します。トップダウンのアプローチでは、実現したい世界観に向けてどこまで進められているのかを確認します。確認方法の一例として、Cloud Native Computing Foundation(CNCF)が提供する成熟度モデルなどを参考にするとよいでしょう。この成熟度モデルではプラットフォームの継続に必要な要素と、要素ごとに4段階の成熟度を定義しています。プラットフォームのどの要素を次に成熟させるかの方針検討に活用可能です。
おわりに
本記事では、プラットフォームをプロダクトとして構想し成長させる進め方について解説しました。プラットフォームをプロダクトとして考える「Platform as a Product」の活動には5つのフェーズがあり、開発者とコラボレーションしながら独自の価値を探索することを提案しています。自社の環境変化や生成AI等の新技術により、これまでの競争優位性が陳腐化する可能性があります。Platform as a Productの考え方を持ち、経営層の理解を得ながら開発者へ継続的に価値を提供し、実現したい世界観を目指すことが重要です。