デジタルとビジネスをつなぐ—エンジニア育成とリーダーシップ開発
ファーストリテイリングがどのようにグローバルチームを構築しているのか。村田氏は具体的な取り組みを紹介した。
まず示したのが「グローバルワン全員経営」という考えだ。村田氏は「私たちは全員経営の考え方を重視し、世界で最も良い方法を全員で実行することを目指している」と語る。この考え方はシステム開発にも適用され、各国ごとに異なるシステムではなく、1つのグローバルパッケージを構築し、世界に展開するアプローチを採用している。

各国の文化や法制度を考慮しながら要件を統一するのは容易ではない。その過程を通じてエンジニアはグローバルなビジネス感覚を養う機会を得られるという。言語の壁も課題となるが、バイリンガル人材による日本語と英語の橋渡しを活かして円滑なコミュニケーションを実現している。さらに、生成AIを活用し多言語対応したコミュニケーションツールを積極的に導入している。異なる言語を話すメンバーがそれぞれの得意な言語で会話をしても、言語の壁を超えて議事録を作成し、ナレッジを蓄積できる環境を整えている。
また、文書は単なる翻訳ではなく、日本語と英語を併記する形式を採用。各言語で交わされる業務用語の理解を深め、確かなコミュニケーションにつなげている。さらに、世界の最先端企業との交流を通じて、技術や経営の視点を学ぶ機会を増やし、国際感覚を持った先端人材の育成にも力を入れている。
グローバルビジネスにおいては、複数の文化を統合し、市場適応力を高めたチームが求められる。村田氏は「日本の文化、各国の文化、エンジニアリング文化、小売業の文化。それぞれの良い部分を融合し、最適な形を模索することが重要だ」と述べる。その一環として、グローバル本社の機能と人材を分散させ、東京を拠点としていた人材を世界各地に派遣し、次世代のリーダー候補に国際感覚を身につけてもらう取り組みもしている。さらに、「Global is local, Local is global(グローバルはローカル、ローカルはグローバル)」の考え方に基づき、ブランドや企業文化をグローバルに発信しつつ、各地域の特性を取り入れ、それを再びグローバルに展開することでイノベーションを創出している。
技術人材の育成にも注力し、システム設計の質を向上させるため「アーキテクチャレビュー」を推進。ECシステム、店舗システム、物流、生産管理など領域横断的に全体感を持ってアーキテクトを関与させ、事業ドメインの知識を深め、最適な技術選定につなげている。
ファーストリテイリングがエンジニアの育成にこだわる理由は、「業務=システム」という考え方を重視しているためだ。村田氏によると、創業者の柳井正氏は1993年にシステム開発の原理原則をまとめ、「システム担当者は現場を深く理解する」「単純明快なシステムを構築する」「自社やコンピュータ業界の未来と矛盾しない開発を行う」という指針を示した。この考え方は2025年の現在も変わらず、良いシステムを作ることが良いビジネスにつながるという信念に基づいている。
そのため、業務部門のデジタルリテラシー向上に加え、先端技術を持つエンジニアの採用と育成を強化している。技術に特化したエンジニアだけでなく、コミュニケーション力やプロジェクトマネジメント力、業務理解のスキルを備えた人材の育成にも力を入れ、より強固な組織づくりを目指している。
さらに、エンジニアから経営幹部候補を選抜・育成し、国際感覚を持ったデジタル人材へと成長させることも目標としている。最後に村田氏は「会社の未来を引っ張っていく、デジタルとビジネスの両方に精通したリーダーを育成しています」と宣言し、一緒に働く仲間を積極的に募集していることをアピールした。
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