生成AIと可視化で「2倍3倍の相乗効果」——データ駆動型開発の新戦略
続いて浜田氏は、生成AI時代における開発指標の新たな重要性について言及した。2025年に入り生成AIの精度が向上し、コーディングプロセスでの大幅な生産性向上が期待される中、その効果を正確に測定することが課題となっている。
同社では実際の活用効果を定量的に検証している。エンジニアがDevinという自律的にプルリクエストを作成する生成AIを活用した結果、「元々5件程度だった日次プルリクエスト数が7.7件と、1.5倍程度に増加した」という具体的な成果を示した。
生成AI活用の効果測定では、GitHub Copilotの利用率や生成AIが作成したプルリクエストの全体に占める割合といった新たな指標が重要になる。全社展開を発表する企業は多いが、実際には活用されていないケースも少なくない。同社では利用率を可視化し、活用が進まない要因を分析することで効果の最大化を図っている。
2025年6月実績では、全プルリクエストの約20%を生成AIが作成している。浜田氏は「もっと伸ばしていけると思うので、可視化しながら改善していきたい」と今後の展望を語った。
生成AI活用が進むほど、従来の感覚的な把握では限界が生じる。浜田氏は「感覚値は当てにならない。スピードや量を定量的に把握し、適切に活用できている状態を維持する必要がある」と、生成AIに委譲するからこそ、今まで以上にモニタリングが必要だとした。
また生成AIの大量アウトプットによる人間のレビュー負荷増大も新たな課題として浮上している。浜田氏はレビュー負荷も可視化することで適切なリバランスが可能だと指摘した。
興味深い発見として、生成AIを活用しやすい環境の基盤要件は、従来の開発生産性向上のプラクティスと一致するという。従来から重視されてきた開発プロセスの改善が、そのまま生成AI活用の土台となるため、既存の指標をそのまま活用できる。

浜田氏は「デリバリー能力を高めれば、自然と生成AIを活用できる基盤が整う。デリバリー能力の可視化により開発速度が向上し、生成AIも活用できるようになって、2倍3倍の相乗効果が生まれる」と展望を示した。
一方で「生成AI疲れ」という新たな課題にも言及し、大量のアウトプットが開発者体験を損ねる可能性を指摘。定性面の監視も重要だとした。
浜田氏は最後に「特定の指標だけを見るのではなく、多角的に指標を組み合わせて活用することで開発プロセス全体を可視化向上させよう」と呼びかけた。生成AI時代においても、事業目標とアウトカムの連結、高速デリバリーの実現という基本原則は変わらない。技術の進歩により、これらの原則をより精密に、より戦略的に実行することが可能になっているとも言える。