オフィス文書か、Markdownか──AI時代の「情報の置き方」を考える
「さまざまなAIツールがある中で、情報の置き方を整理しなければいけない時期に来ている」
服部氏は、AIツールの導入と併せて、ドキュメンテーションやコラボレーションの整理に言及した。新しいAIツールを導入するとき、またはMCP(Model Context Protocol)やA2A(Agent to Agent)を利用するときに、情報の置き方によるアクセシビリティが障壁となりかねない。冒頭の考えにはそんな背景がある。

これに対して、岩瀬氏はモノレポ(単一のレポジトリで情報を管理すること)を話題に上げながら、AIによる検索のしやすさを考えれば「ドキュメント、スペック、ソースコードが集まっていることが重要」で、「形、置き場所がどんどん変わっていく気配」を感じているという。
AIにとって、オフィス文書よりも学習のベースであるMarkdown形式のほうが性能が出る一方、ビジネスサイドを含めた組織全体への浸透には「成功事例を作っていくしかない」と岩瀬氏。
具体的なロードマップとして、まずはこれから新しくドキュメントを作る新規事業、もしくは一部切り出されている部門など、やりやすいところから小さく始めるのが良いのでは、と話した。
加賀谷氏も、ログラスで仕様やドキュメントを一か所にまとめる要望が出てくるなど変化を目の当たりにする。実際に同社では新規事業を中心にGitHubに集約する試行が始まっており、その難しさも実感している。
服部氏は、AI活用を全体とした情報の置き方を組織全体に促すプラクティスとして、「柔軟にやる」ことを挙げた。GitHub社内では組織全体でGitHubを使用することが推奨されている一方、コラボラティブなドキュメント生成はGoogleドキュメントで行っている。参加障壁が高くならないようにツールの選択肢は持ちながら、最終的にはGitHubにMarkdown形式で残すことで、無理のない範囲で変化を推進するのだ。
加賀谷氏も、「別の良さがあるツール、プラットフォームがいっぱいあるので、なかなかひとつの場所に完結するところに一足飛びにいける気がしない」と同意を示し、その中で初めのうちはNotionなど各ツールで起こした情報をGitHubにコピーするのが現実的では、と提案した。
