2007年、ネット上に1つのムーブメントを起こした「VOCALOID2(ボーカロイド)」シリーズ。突然わき上がった盛り上がりに対し、その真ん中にいた製作者の人達はどういう思いでいたのでしょうか。初音ミク生みの親であるクリプトン・フューチャー・メディア 佐々木渉氏にインタビューしました。
2007年、ネット上に1つのムーブメントを起こした「VOCALOID2(ボーカロイド)」シリーズ。突然わき上がった盛り上がりに対し、その真ん中にいた製作者の人達はどういう思いでいたのでしょうか。初音ミク生みの親であるクリプトン・フューチャー・メディア 佐々木渉氏に聞いてみました。
そのとき、初音ミクムーブメントの当事者は
編集部
初音ミクをリリースした当初はどんな手応えだったんでしょうか。
佐々木
最初は「なんだか話題になってるぞ」ぐらいの感覚でしたね。
編集部
そうすると、この反響の大きさは?
佐々木
いや、正直ここまで大きくなるとは全く思ってませんでした。
編集部
初音ミクの開発には、社員の多くが関わっているんでしょうか。
佐々木
あー、全然そんなことないです。
初音ミクに関わることが大きいのは、3、4人ぐらいですね。開発は私とアルバイト1名ぐらいでやっていたりします。会社そのものとしては社員20名、アルバイト5名ですね。
編集部
佐々木
それが、リリース直前の方が忙しかったり、発売直後は緊張しっぱなしで大変だったので、箱詰めの時は結構頭が惚けて無心でやってましたね。「あー、この仕事楽だなぁ」って感じで(笑)
9月14日のブログ。タイトルは「梱包、梱包、梱包、梱包。」
編集部
初音ミクが発売されて半年ほどが経ちました。改めてどんな感触を持っていますか?
佐々木
そうですね。色々なタイプの人が同じカテゴリーで、楽しんでくれているのが、凄く面白い。その人達のためにもこのムーブメントをキープし続けたいなと思いますね。自分たちは割と人対人的なところで考えることが多いんですが、初音ミクは人と人とをつなげてくれる存在なんだなと思っているんです。寂しい言い方だけれど、結局のところVOCALOIDは、中に歌を吹き込んでもらわないと、ただの声のデータベースでしかないんですから。
編集部
確かに。
佐々木
つまり、ユーザーさんありきなんです。だから、コミュニティというわけでもないんですけど、ユーザーさん達が心地よく作り続けていく環境があった方がいいと思っていて。これは「私たちが用意しなくては」なんていうおこがましいものではないんですが、何かプラスアルファ考えることや、できることがあればやっていきたいなと思っています。
このムーブメントを作った1つの要因
編集部
初音ミク出る以前のユーザーからのフィードバックっていうのはあったと思うんですが、それに比べて初音ミクはどうですか?
佐々木
初音ミク以前と以降では、規模感があまりにも違いますね。以前のユーザーの方々には、ボーカルパートを担当する音楽ツールとして使って頂いていたので、ネタ的にニコニコ動画にアップするなど、そんなにアグレッシブに活用される事は極めて少なかったです。楽曲を歌ってくれる人が欲しいんだけど歌手が見つからない人とか、単に歌い声をレコーディングするのがめんどくさい人とかが、人間の代用的なものとして使っていたと思います
編集部
楽器の一種という感じですね。
佐々木
ええ。
一方、初音ミクというソフトには、歌手の世界観のとっかかりになる記号の集合体、要は「キャラクター」がついています。そのキャラに、それぞれの人が持っている初音ミクのイメージが、歌やイラストや動画などさまざまなアプローチで集まり、そして皆で鑑賞する。クリエイターもリスナーも分け隔てなく彼女のイメージが共有され、繋がれるんです。
編集部
キャラクターが軸になる。
佐々木
そうです。ちょうど導線がそこで交差するような形になるというか。今まで出してきたソフトはキャラクターというのがまったくなかったんですが、初音ミクにはキャラクターが立てられています。そのおかげで代用のきかない、ちょっと特別なものとして受け取られるようになったんじゃないかと思います。
編集部
なるほど。
佐々木
そして、音楽だけでなくイラストや動画などからのアプローチもできるようになった。思い入れを持ってくれる人もいる。結果的に他の製品に比べて参加者が増えるため、初音ミクは非常に大きく見えるというのはあるんです。
編集部
そういった要因が盛り上がりを大きくしたところはありそうですね。
突き動かされるように作った「ピアプロ」
編集部
ピアプロは社長の勢いで作ってしまったと聞きましたが?