1. はじめに
1.1. 背景
近年、スクリプト言語「Ruby」と、Rubyで書かれたWebアプリケーションフレームワーク「Ruby on Rails(以下、RoR)」が注目を集めています。
Ruby/RoRの開発はテキストエディタとコマンドラインツールがあればすぐに始めることができます。一方、Ruby/RoRの普及に合わせてテキストエディタとしての機能の他にデバッガ、WebサーバやDBサーバとの連携、バージョン管理などの機能を備えた統合開発環境(以下、IDE)が複数登場しています。
Ruby/RoR対応のIDEはJavaなど他言語のIDEと比較すると機能面や安定性にやや物足りなさがありますが、各IDEは活発に開発が行われており、実際の開発をサポートするレベルまで着実にバージョンアップを重ねています。
1.2. 本稿の目的
Ruby/RoR対応のIDEを使用する場合、NetBeans、Eclipse(プラグインを追加)など複数の選択肢がありますが、今のところデファクトスタンダードと呼べるものは存在しません。原因としては多くのIDEが発展途上の段階にあること、IDEの統合や頻繁なバージョンアップをフォローする情報が少ないことなどが考えられます。
そこで本稿では共通の基準を適用して複数のIDEについて比較調査し、各製品の特徴と長所、短所を明らかにします。またRuby/RoRによる開発を始めるにあたって現時点で最も使いやすいIDEを選定します。
1.3. 想定読者
以下に該当する人を読者として想定しています。
- これからRuby/RoRで開発を行いたい人
- 何らかのプログラミング経験がある人
- EclipseなどのIDEの使用経験がある人
2. 比較対象とするRuby on Rails用IDE
2.1. 比較対象製品
本ドキュメントでは現在Ruby/RoR開発で利用可能な主なIDEのうち、下記の4製品を比較対象とします。
- NetBeans
- Aptana Studio(RadRailsプラグイン追加)
- Eclipse(RadRailsプラグイン追加)
- 3rdRail
また、参考としてRuby/RoR開発において使用されている以下のテキストエディタ2製品を比較対象に加えました。
製品名 | 概要 |
NetBeans | Sunが提供しているIDEでバージョン6.0からRuby/RoRをサポートしています。インストールするだけで開発に必要な機能が一通りそろうオールインワンのIDEです。 |
Aptana Studio | RadRailsの後継IDE。AjaxアプリケーションやAdobeのAIRアプリケーション開発環境としての側面を持ち、Ruby/RoR開発機能はRadRailsをプラグインとして追加して使用します。有償版と無償版がありますが本ドキュメントでは無償版を使用します。 |
Eclipse | JavaなどのIDEとして高い知名度とシェアを持ちます。豊富なプラグインを追加することで機能をカスタマイズすることが前提となっています。Ruby/RoR開発を行う場合はRadRailsプラグインを追加します。 |
3rdRail | Ruby/RoR開発に特化して開発された有償のIDE。Eclipseがベースとなっているためプラグインによる拡張もできます。 |
Vim | viから派生したクロスプラットフォームのテキストエディタ。Ruby/RoRによる開発をサポートするrails.vimというスクリプトと組み合わせて使用します。 |
GNU Emacs | Richard Matthew Stallman氏が開発したテキストエディタ。viと並んで主にUNIX環境で使用されています。 |
2.2. 比較項目について
上記のIDEおよびテキストエディタについて以下の観点から調査を行いました。
- エディタ機能(シンタックスハイライト、コード補完など)
- IDE基本機能(リファクタリング、デバッグなど)
- 構成管理機能
- サーバ連携機能(Webサーバ、DBサーバ)
- Rubyコマンド実行機能
- 拡張性
- 操作性