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Zend Framework入門

Zend Framework入門(7):抽象化レイヤによるデータベースアクセス手法 - Zend_Db(後編) -

Zend Frameworkによる実践的なPHPアプリケーション開発 7

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テーブルクラスの作成

 データベースの準備が整ったので、これにアクセスするためのテーブルクラスを作成します。

値の設定が必要な変数

 Zend_Db_Table_Abstractを継承したクラスを作るにあたり、いくつか値の設定が必要な変数があるので表にまとめます。ここであげる変数の可視性はすべてprotectedです。

値の設定が必要な変数
変数名内容備考
$_schemaテーブルが含まれるデータベース名の文字列$_nameをデータベース名.テーブル名の形で指定すれば省略可能
$_nameテーブル名の文字列クラス名とテーブル名が同一の場合は省略可能
$_primary主キーの列名の文字列(主キーが単一の列の場合)または、主キーの列名の配列(主キーが複合キーの場合)省略不可
$_dependentTables参照元テーブルクラス名の文字列の配列参照元テーブルがない場合、DBMSの参照整合性制約による操作を利用する場合は指定しない
$_referenceMap外部キーの参照先テーブルの情報を格納した配列詳細は後述
$_sequence主キーの自動インクリメントの指定DBMSの自動インクリメントを使う場合はtrue、DBMSのシーケンスオブジェクトを使う場合はオブジェクト名

 これを踏まえて、テーブルクラスを作成していきます。

大文字・小文字の区別について
 データベース名やテーブル名などの大文字・小文字の違いが区別されるかどうかは、OSやDBMSにより異なることがあります。そのため、テーブルを作成するSQLとソースコードとで大文字・小文字の違いが出ないようネーミングルールを決めておくと安全です。

テーブルクラスのコーディング

 では、実際にテーブルクラスのコーディングを行います。基本となる部分は抽象クラスZend_Db_Table_Abstractに含まれているので、テーブル固有の部分のみをコードに記述することになります。

 作成するテーブルクラスのクラス名はテーブル名と同一で、単語の複数形を頭文字のみ大文字にしたものにしています。

外部キーを持たないテーブルのクラス作成

 まずは外部キーを持っていないテーブルのクラスを作ります。OfficesテーブルとMembersテーブルがこれにあたります。

table/Offices.php
<?php
require_once 'Zend/Db/Table.php';

// officesテーブルに対応するクラスを定義します
// Zend_DbのZend_Db_Table_Abstractクラスを継承します
class Offices extends Zend_Db_Table_Abstract {
    // テーブルを含むデータベース名を指定します
    protected $_schema = 'db_zend_sample';
    // 主キーの列名を指定します
    protected $_primary = 'office_id';

    // 参照元テーブルを指定します
    protected $_dependentTables = array('Rooms');
}

 protectedのメンバ変数を3個記述しただけですが、必要最小限のテーブルクラスはこれで完成です。クラス名はテーブル名と同じOfficesなので、メンバ変数$_nameは省略しています。テーブルOfficesを外部キーで参照しているテーブルはRoomsがあるので、メンバ変数$_dependentTablesでこれを指定します。

 Membersクラスも同様のコードになります。

table/Members.php
<?php
require_once 'Zend/Db/Table.php';

// Membersテーブルに対応するクラスを定義します
class Members extends Zend_Db_Table_Abstract {
    // テーブルを含むデータベース名を指定します
    protected $_schema = 'db_zend_sample';
    // 主キーの列名を指定します
    protected $_primary = 'member_id';

    // 参照元テーブルを指定します
    protected $_dependentTables = array('Permissions');
}

外部キーを持つテーブルクラス作成

 外部キーで他のテーブルを参照しているテーブルのクラスでは、メンバ変数$_referenceMapの値を設定する必要があります。$_referenceMapには外部キー情報を連想配列で格納します。キーは任意です。外部キー情報も連想配列で、次の表の内容を格納します。

外部キー情報の内容
キー内容
columns外部キーの列名の文字列(外部キーが単一の列の場合)、または外部キーの列名の文字列の配列(外部キーが複合キーの場合)
refTableClass参照先のテーブルクラス名の文字列
refColumns外部キーの参照先列名の文字列(外部キーが単一の列の場合)、または参照先列名の文字列の配列(外部キーが複合キーの場合、順序はcolumnsと一致すること)
onDelete参照先レコードが削除された場合の動作の指定
onUpdate参照先レコードが更新された場合の動作の指定

 ここで指定するonDeleteとonUpdateは、DBMSが参照整合性制約をサポートしていない場合に同様の動作をZend_Dbに行わせるためのものです。'cascade'またはself::CASCADEを指定すると、参照先レコードの削除または変更に連鎖して削除・変更を行います。

 SQLのCREATE TABLE文で、外部キーのオプションにON DELETE CASCADEまたはON UPDATE CASCADEを指定したのと同様の動作になります。参照整合性制約の動作が必要で、かつDBMSがこれをサポートしていない場合のみこれを指定します。DBMS側で参照整合性制約を設定している場合にテーブルクラス側でonDeleteonUpdateを設定してはいけません。onDeleteonUpdateの指定がない場合は連鎖した削除・変更を行いません。

reference_sample.php
// 外部キー情報の設定例を抜粋して示します
protected $_referenceMap =
  array('ref_office' =>
          array(// 自テーブルのoffice_id列が外部キーです
                'columns'       => 'office_id',
                //Officesクラスに対応するテーブルを参照します
                'refTableClass' => 'Offices',
                // 参照先の列名はoffice_idです
                'refColumns'    => 'office_id',
                // 参照先レコードが削除されると連鎖して削除を行います
                'onDelete'      => 'cascade',
                // 参照先レコードが変更されると連鎖して変更を行います
                'onUpdate'      => self::CASCADE));

 では、実際のソースコードです。外部キーを持っているRoomsテーブルのクラスを作成します。

table/Rooms.php
<?php
require_once 'Zend/Db/Table.php';

// Roomsテーブルに対応するクラスを定義します
class Rooms extends Zend_Db_Table_Abstract {
    // テーブルを含むデータベース名を指定します
    protected $_schema = 'db_zend_sample';
    // 主キーの列名を指定します
    protected $_primary = 'room_id';

    // 参照先テーブルを指定します
    protected $_referenceMap =
        array('ref_office' =>
                array('columns'       => 'office_id',
                      'refTableClass' => 'Offices',
                      'refColumns'    => 'office_id'));
}

 Roomsテーブルが持つ外部キーは1つだけでOfficesテーブルを参照しています。この外部キーの情報を$_referenceMapに格納します。キーは'ref_office'としました。

 この例では参照整合性制約を利用しないため、外部キー情報の中にonDeleteonUpdateの指定は含めていません。

次のページ
テーブルクラスによる基本的なデータベースアクセス

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この記事の著者

山田 祥寛(ヤマダ ヨシヒロ)

静岡県榛原町生まれ。一橋大学経済学部卒業後、NECにてシステム企画業務に携わるが、2003年4月に念願かなってフリーライターに転身。Microsoft MVP for Visual Studio and Development Technologies。執筆コミュニティ「WINGSプロジェクト」代表。主な著書に「独習シリーズ(Java・C#・Python・PHP・Ruby・JSP&サーブレットなど)」「速習シリーズ(ASP.NET Core・Vue.js・React・TypeScript・ECMAScript、Laravelなど)」「改訂3版JavaScript本格入門」「これからはじめるReact実践入門」「はじめてのAndroidアプリ開発 Kotlin編 」他、著書多数

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

WINGSプロジェクト 川北 季(カワキタ ミノル)

WINGSプロジェクトについて> 有限会社 WINGSプロジェクトが運営する、テクニカル執筆コミュニティ(代表 山田祥寛)。主にWeb開発分野の書籍/記事執筆、翻訳、講演等を幅広く手がける。2018年11月時点での登録メンバは55名で、現在も執筆メンバを募集中。興味のある方は、どしどし応募頂きたい。著書記事多数。 RSS Twitter: @yyamada(公式)、@yyamada/wings(メンバーリスト) Facebook

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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