はじめに
本連載では、PHP上で動作するアプリケーションフレームワークであるZend Frameworkについて紹介していきます。前回はZend_Dbによる抽象化レイヤを用いたデータベースアクセスを紹介しました。第7回目となる今回はZend_Dbの後編として、テーブルに対応するクラスを作ってデータベースにアクセスする方法を取り上げます。
対象読者
PHPの基本構文は一通り理解しているが、フレームワークを利用したことはないという方を対象としています。
これまでの記事
- Zend Framework入門(1):フレームワークの全体像とインストール
- Zend Framework入門(2):Hello World!アプリケーションの作成
- Zend Framework入門(3):PHPでMVCアプリケーションを構築しよう - Zend_Controller(前編) -
- Zend Framework入門(4):PHPでMVCアプリケーションを構築しよう - Zend_Controller(中編) -
- Zend Framework入門(5):PHPでMVCアプリケーションを構築しよう - Zend_Controller(後編) -
- Zend Framework入門(6):抽象化レイヤによるデータベースアクセス手法 - Zend_Db(前編) -
必要な環境
Zend Frameworkは、PHP 5.1.4以降とWebサーバがインストールされている環境で利用可能です。本稿ではWebサーバとしてApache 2.2を、データベースにMySQLを、OSにWindows XPを採用し、アプリケーションを作成していきます。以下に今回アプリケーション作成/動作確認に用いた環境を示します(インストールにあたっては、その時々における最新安定版の使用を推奨します)。各項目の詳細なインストール手順は、「サーバサイド技術の学び舎 - WINGS」より「サーバサイド環境構築設定手順」を参照ください。
- WindowsXP SP2
- PHP 5.2.5
- Apache 2.2.6
- MySQL 5.0.51a Community Edition
LinuxやFreeBSDなどUNIX系OSを使用している方もコマンドはほぼ一緒ですので、パスなどは適宜読み替えてください。
テーブルクラスによるデータベースアクセスについて
前回はZend_Dbが提供するアダプタクラスのメソッドを用いてデータベースにアクセスしました。今回はよりオブジェクト指向プログラムに相性のよい方法として、テーブルに対応するクラスを作ってデータベースにアクセスします。
オブジェクト指向のクラス設計とリレーショナルデータベースのテーブル設計は考え方が異なります。そのため、1つのオブジェクトのメンバ変数に設定する値が複数のテーブルに分かれているなど、扱いが面倒になることが多くなります。この問題は「インピーダンスミスマッチ」と呼ばれます。
アダプタクラスはDBMSの違いを吸収しますが、インピーダンスミスマッチは解消できません。そこで、テーブル間のリレーションシップの情報を持ち、データベースにアクセスするメソッドを持ったテーブルクラスを作ります。関連する複数のテーブルにアクセスする処理は、テーブルクラスがリレーションシップ情報を使ってカプセル化できます。これは「O/Rマッピング」(オブジェクト/リレーショナルマッピング)と言います。
テーブルクラスはデータベースにアクセスするメソッドを持っているのに加え、テーブルのデータに固有の処理を「メソッド」として実装することができます。データベースアクセスも含め、データに固有の操作をメソッドとしてクラスに持たせることで、オブジェクト指向の考え方に沿ったすっきりとしたプログラムを書きやすくなります。こうして作ったテーブルクラスはMVCのモデルとして使うのに都合のよいものになります。
Zend_Dbはテーブルクラスを作るための抽象クラスとして、共通的な処理を実装したZend_Db_Table_Abstract
クラスを提供しています。これを継承し、テーブルに固有の部分を追加してテーブルクラスを作ります。
なお今回示すサンプルソースは断りがない限り、index.phpをフロントコントローラとするための.htaccessの設定を使用しません。