「大大特」とレスキューロボット
レスキューロボットといっても、まだガレキの中から人を助けることは難しいのが現状です。まずやるべきことは、災害現場で最重要な情報収集だということになりました。というのも、震災時に一番時間が掛かったのは、ガレキの中のどこに人がいるのかを特定することだったからです。そこに被災者がいることが分かれば、人海戦術でも重機を使ってでも助け出すことができます。
そのためにレスキューロボットプロジェクトは大きく4つのミッションで研究を行っています。災害が起こった場合、できるだけ早く全体像を掴む必要があります。そこで上空から飛行船などを使い広範囲な情報収集を行うためのミッション。次にガレキ上で情報収集を行うミッション、被災者の所在を確定後、ガレキ内を機材等を使用して探索するミッション。そうした活動を連携してスムースに行うためには、そもそも災害救助対応のインフラを整備しておく必要があります。倒壊した建物の中にいる被災者をすぐ発見できるようなインフラを整備するミッションも重要です。
この4つのミッションを、全国の大学研究室がそれぞれ分担して研究開発を行っています。その中で、大須賀氏が担当しているのは、ガレキ内探索ミッションです。ガレキの中は、路面が不整地であることに加えて、上下左右からガレキの迫っている中をロボットが進みます。その上、ロボット本体は地上から見えなくなるという問題があります。地上から目視でロボットを操縦することができないのです。その2点が大きな問題となりました。
大須賀氏は、ガレキ内に侵入するロボットの形状として、上下のクローラーが同じ方向に動く走行方法を考えました。このアイデアを元に2003年、MOIRA1号(*2)を製作しました。
MOIRA1号は上下左右に長めのクローラーが付いていて、どの方向からガレキに挟まれても、周囲のガレキをかき分けて進むことができます。ガレキの中に入ったら、[動画1]のように上から押さえられても、押さえられたことが逆に推進力になって力強く進むことができるのです。斜面を登ることもできるし、高さがある障害物は、頭をもたげて乗り越えていきます。
res01.wmvを、[動画1]としてここに載せる予定です。
説明文:MOIRAのデモンストレーション。ガレキの中に侵入し、障害物を乗り越えて前進する。
もうひとつの問題点、ロボットがガレキ内に侵入した後、操作員の視界から外れる問題点についても解決を試みました。MOIRAの先頭にはカメラが搭載されており、その映像はPCに転送されています。けれど、この映像だけでは周囲の様子は分かってもMOIRAの位置を把握することができません。電波が届くところではGPSなどを使って位置を確認することができますが、ガレキの中では電波が届かないこともあります。そのために、フレキシブルセンサチューブ(FST)というセンサーを開発しました。
これはたくさんの関節でできた曲がりやすいチューブ状のもので、関節の角度をそれぞれ測ることができます。角度を測定すればFSTの形状がリアルタイムに分かり、先端の位置を地図上で把握することができるというセンサーでです。10mのFSTには関節が200個あり、静止状態で±50mmの精度で先頭の位置を把握できます。
その後、形状的に複雑なMOIRA1号をもう少しシンプルな形にし、MOIRA2号を開発しました。この時は、MOIRAを運ぶためのBENKEIというキャリアも作りました。BENKEIにMOIRAを載せて災害現場まで連れていきます。愛知万博では、BENKEIとMOIRA2をFSTで繋いでレスキューのデモンストレーションを披露しました。
ガレキの除去
レスキュー活動にはの3つの要素があります。まずは被災者の探索をする必要があります。次に探索の結果、被災者の存在を確認したら外のガレキを取り除き、人を助け出さなくてはなりません。最後に救助した人を安全に搬送することが必要です。
探索ロボットは、ここまで紹介したように大須賀氏の研究室でいろいろなタイプを作っていて、少しずつ使えそうなものがでてきているということです。
ガレキの掘削については、ガレキ除去用ロボットアームとして、パワーショベルの前にパワーハンドをつけて、マスタースレーブなどの遠隔操縦で操縦する方式が考えられています。人を発見したら、遠くからの遠隔操縦では細かい対応が難しいので、人とロボットが一体になってパワーアシストで助け出すというようなストーリーを考えているそうです。ここでは、FSTをマスタースレーブに転用し、双腕型ロボットを操縦する操縦方式を検討しています。FSTの柔軟性を活かし、オペレーターが変わってもロボットを操縦できるシステムを構築できる利点があります。
搬送の難しい点は、ガレキ上の搬送や地下鉄サリン事件のように、人が入って行けない場所まで人を助けにいく機械を作らなくてはならないことです。その時に、要救助者に不安感を与えないことも重要だと、大須賀氏は考えています。
大須賀氏の研究室では、MOIRAのクローラーを応用した小型ロボット3台の搬送システムを研究しています。先頭のロボットは倒れている人を発見すると、先端のベルトコンベアを要救助者の身体の下に差し込み上半身を持ち上げます。後ろに次のロボットが連結されて、要救助者をロボット上に保護し搬送します。
大須賀氏が要救助者役で、ロボットに救助されるデモンストレーションを行った時は、ベルトコンベアで持ち上げられても、自然な感じで怖さは感じなかったといいます。もちろん、このままでは被災地で使う時には危険なので、全体を保護する、覆うなどして改良していかなくてはならないと考えているそうです。
(*2)MOIRA:「MObile Inspection robot for Rescue Activities」の略称。また、ギリシャ神話に出てくる運命の女神の名前。




