今後のレスキューロボットの展開
レスキュー工学は誕生したばかりで、今の段階のレスキューロボットも、まだまだ災害現場で稼働できる状態ではありません。
大須賀氏は、「何万人という被災者がいるところに、1台のスーパーレスキューロボットを持っていっても、焼石に水でしょう」と指摘しています。
例えばBENKEIがMOIRAの巣となり、10台くらいのMOIRAが一度に探索に出て行くようでなくては、有効な探索はできません。そのためにもMOIRAをもっと安全に安価に作り、しかも自律的に行けるところへ探索していくようなシステムを構築しなくてはならないと言います。「10台ではなくもっとたくさんのMOIRAを作って、虫のように這い回らせるようなことを考えていかなくてはならない」。大須賀氏は、それを千手(SENJU)システムと呼んでいます。
大須賀氏は、こうしたシステムの実現のためには発想の転換が必要であると述べました。
これまではどちらかというと単一で動く高性能なロボットの開発を目指してきています。望まれる機能が多様・高機能化し、一台のロボットでさまざまなことができることが要求されてきました。
ところが、非常に大きな自然災害に対しては、多数のロボットが必要になります。10台というような台数ではなく、千、万というオーダーの超多数のロボット群が必要になるのです。そのひとつひとつのロボットが、高機能である必要はありません。よせ集まって群知能を作るような超群ロボットが必要であると、大須賀氏は言います。
これを実現するためには、ロボットを分散化、モジュール化しなければなりません。つまり全てに対して、組込システムが大事な役割を果たしていくことになります。一個一個の小さなロボットに組込システムが入ることになるのです。一台のロボットで機能を分散することもありますが、超群ロボットは何万、何百万というロボットを想定するので、そういうロボットを作る時には、組込システムが大事な技術になってきます。
これまでのロボット研究は、完全に動作することを想定していますが、最初からある確率で故障することを想定し、その上でどこまで確からしい情報が入手できるかを考える必要があるのです。超群ロボットは100万台のうち10%くらい壊れるかもしれないけれど、90%でなんとか機能を果たしてほしい。そういう超多数ロボット群の確率的なフォーメーション制御や、確率的情報統合などという技術が必要となってきます。
こうしたシステムが、本当に作れるのかどうか? ロボット間や基地局との無線通信はできるのか? という大きな問題があります。他にも未解決な問題は多数ありますが、そうしたビジョンに向かって、レスキューロボットの開発をやりたいと思っているそうです。
現在、大須賀研究室でもモジュール化したMOIRA3の研究を進めています。モジュール化することで、各台車に機能を持たせて、必要に応じて入れ替えることができる仕組みを試作中ということです。同様にFSTもモジュール化を進めています。1m単位で19ヶ所の自由関節それぞれにポテンションメータやLAN、USBケーブルなど全て入っていて、それぞれデータ処理を行います。
先頭にUSBカメラが必要であれば、カメラを接続して先端の状況を把握できるし、先端をMOIRAに接続することも可能です。1mのFSTで探索して長さが足りない場合は、連結をすればもっと遠くまで探索範囲を広げることができます。
最初のFSTは直径60mmでしたが、現在開発中のFST-3は20mmになっています。最終的には直径2mm程度のFSTを作りたいと考えているそうです。もっと小型なCPUシステムと連結することで、ロボットの分散化もどんどん進んでいくことでしょう。




