はじめに
Silverlight 3が2009年7月にリリースされてから8か月、2010年4月に待望のSilverlight 4がリリースされました。この連載では、Silverlight 4で提供された機能を適宜コードをあわせながら解説していきます(おや? この書き出しはSilverlight 3の1回目とほとんど同じですね)。
Silverlight 4はSilverlight 3にもまして、画期的な新機能が多く搭載されています。たとえば、ブラウザ外実行時の信頼されたアプリケーションは他のRIAプラットフォームでは実現が難しい領域でしょうし、WCF RIAServiceを使ったアプリケーション開発は、RIA開発におけるデータの更新やデータの検証、認証といったビジネスアプリケーションでは欠かせないアプリケーション基盤を提供しています。
この連載では、Silverlight 4の新機能の概要と実用的なサンプルをおりまぜながら、Silverlightがどのようなプラットフォームとして生まれ変わったのかを解説します。
Silverlight 4の特徴
Silverlightは、動画や音楽の再生、ベクターグラフィックを利用した画像の表示などの機能を持つマイクロソフトが提供するマルチブラウザ、マルチプラットフォームのRIA(Rich Interactive Applications)実行環境です。また、この連載では割愛しますが、マイクロソフトの次期モバイルプラットフォームであるWindowsPhoneでは、Silverlightでのアプリケーション作成と同様に、WindowsPhoneのアプリケーションを作成することができます。Silverlightの利用シーンは、今までにも増して多様化しています。
Silverlight 4では、これまでのSilverlightの基本方針を残しつつ、業務アプリケーションやマルチメディアアプリケーションの実行環境として、さらに大きな進化を遂げています。表1にSilverlight 4の新機能の一覧を示します。
分類 | 新機能 | 概要 |
メディア | メディアデータの入力をサポート | ウェブカメラ、マイクデバイスのサポート |
マルチキャストサポート | WindowsMediaサービスのマルチキャストストリーミグをサポート | |
オフラインDRMサポート | オフライン状態でのDRMで保護された動画の再生をサポート | |
ビジネスアプリケーション | 印刷のサポート | Silverlightページの印刷と、印刷イベントをサポート |
リッチテキストボックスコントロールの追加 | 書式付きテキストや画像の挿入などが可能なコントロールの追加 | |
クリップボードの利用 | ユーザーの対話を伴うクリップボードの利用のサポート | |
マウスイベントの強化 | マウスの右クリックイベントをサポート、マウスホイールイベントの強化 | |
コア機能 | .NET Frameworkとのアセンブリ互換 | .NET Framework 4とアセンブリの一部共有 |
検証機能の強化 | Silverlight標準のクラスによるデータ検証機能の強化 | |
バインディング機能の強化 | バインディング機能の強化、WPFとの互換性の向上 | |
WCF RIA Servicesの統合 | WCF RIA Servicesを利用したビジネスアプリケーションの作成 | |
パフォーマンスの向上 | 処理性能の向上。速度がSilverlight 3の2倍に、起動速度が30%向上 | |
Implicit Stylesとテーマ | 暗黙のスタイルのサポート | |
ブラウザ外実行 | ローカルファイルシステムへのアクセス(※注1) | ユーザーとの対話なしにローカルファイルシステムへのアクセスが可能 |
フルスクリーンでのキーボード利用(※注1) | フルスクリーンモードであってもキーボードの入力が可能 | |
ハードウェアイベントの検知(※注1) | USBデバイスの接続などのイベントを取得可能 | |
COMオートメーションサポート(※注1) | COMオブジェクトをSilverlightから利用可能 | |
Webブラウザコントロールの利用 | Silverlightの中で、HTMLを表示するコントロールが利用可能 | |
クロスドメインネットワークアクセス(※注1) | 別ドメインのサービスであっても制約を受けずにアクセスが可能 | |
画面外の通知ポップアップサポート(※注1) | タスクメニューの通知など、Silverlightの画面外への表示が可能 | |
画面外からのドラッグ&ドロップ(※注1) | 画面の外からドロップしたファイルを読み込んだりすることが可能 |
ブラウザ外実行で、信頼されたアプリケーションとしてインストールされた場合にのみ有効
図1はSilverlight 3の連載でも紹介した、各バージョンで追加された機能の一覧にSilverlight 4を追加した図です。
以前のSilverlightについては、次の連載を参照してください。
Silverlightの日本におけるシェアは、どの程度伸びているのでしょうか。Silverlight 3の連載の1回目に参考にしたRich Internet Application Statisticsで、日本におけるSilverlightのシェアを確認してみると、2009年8月時点では35%足らずのシェアが、2010年6月では75%以上になっています。Flashのシェアにはまだまだ及びませんが、順調にそのシェアは伸びているようです。