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イベントレポート(AD)

FileMaker Goでモバイルにデータベース運用
業務適用例のセッションで示された数多くの可能性

「FileMakerカンファレンス2010」レポート(2)

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 東京・秋葉原で行われた「FileMakerカンファレンス2010」では、キーノートセッションの他に、さまざまなセッションやワークショップ、FBA(FileMaker Business Alliance)のメンバー20社による展示などが行われた。本記事では、その中から話題のFileMaker Goに関連した2つのセッションの内容をレポートする。

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 東京・秋葉原で行われた「FileMakerカンファレンス2010」では、キーノートセッションの他に、7つのテクニカルセッション、3つのソリューションに関するセッション、さらには2つのビジネスに関連するセッションが行われた。さらにいくつかのテーマでスキルアップワークショップ、やFBA(FileMaker Business Alliance)のメンバー20社による展示などが行われた。本記事では、その中から、話題のFileMaker Goに関連した2つのセッションの内容をレポートする。

FileMaker Goに最適なソリューション
開発時に考慮すべき詳細なポイントを披露

 「FileMaker Goに最適なインターフェイスの考え方とソリューション開発のポイント」として、FileMakerの画像プラグインなどを手がける有限会社ファクトリーの西村早苗氏によるセッションが行われた。まず、iPhoneやiPad、iPod touchに対応したFileMaker Goでは、FileMaker Proと同様に、データベースに関連する処理の多くができることが示され、結果的にiPhoneやiPadのアプリケーション作成がFileMakerだけでできてしまうというメリットが示された。そして、FileMaker上で以前に同氏が作ったさまざまなデータベース、具体的にゲームや画像データベースなどが、少しの修正でiPhoneでも同じように使えることが紹介された。そして、どんな業務に使えるのかということで、「倉庫での在庫チェック」やイベント、学校、病院といった場面での適用可能な事例が紹介された。さらに、FileMaker Serverなどで公開されているデータベースが利用できることや、データベースをデバイス上に転送するためにiTunesが利用できることが紹介された。さらに、メールに添付したり、Webサーバ経由でのデバイスへの転送もできることが紹介された。

 開発するときの注意点としては、画面の違いやフォントの違い、タップ操作による違いが挙げられ、デバイス向きのレイアウトを作ることが推奨される。また、スクリプトステップの互換性や、デバイス上で使えない機能について検討が必要であることが指摘された。

 実際にデータベースを作成する場合に考慮すべき点についても解説がされた。まず、iPhoneやiPadはウインドウのサイズが固定されているので、それに合わせた作り込みが必要であることが示された。さらに、iPhoneとiPadに搭載されているフォントについて紹介があり、明朝体での指定がうまくいかない理由が示された。iPhoneには明朝体はなく、iPadには「ヒラギノ明朝ProN」が搭載されている。iPadではこのフォントを指定すれば、明朝体での表示が可能になるということである。フォントサイズについても、通常は12ポイント程度にするが、iOSデバイスではより大きい方が適切である。また、ボタンの縦や横のサイズは40ピクセル以上にし、オブジェクトの間に間隔を作った方が操作性が良いことも示された。さらにデバイスの回転に対応することや、オブジェクトの自動サイズ変更を効果的に使うことが示された。

 さらにスクリプトを作るときのポイントについても示された。iOSデバイスでは稼働しないステップがあることが紹介され、続いて別のデータベースを開くなどの機能を持った「fmp7script」プロトコルによるURLでの制御方法が紹介された。これを利用すればiOS上の別のアプリケーションから結果を受け取ることができ、その仕組みを利用してバーコードの読み取りができるようになっていることが紹介された。そして、これらの説明の裏付けとして、実際にデバイス上でのデモも行われた。

図1 有限会社ファクトリーの西村早苗氏
図1 有限会社ファクトリーの西村早苗氏
図2 過去に作ったデータベースをiPhoneでも使えることが実例として示された
図2 過去に作ったデータベースをiPhoneでも使えることが実例として示された

FileMaker開発会社が示すFileMaker Goの適用事例
さまざまなノウハウが凝縮された濃度の高いセッション

 「FileMaker Goを活用した業務効率化ソリューションの探求」は、日本のFileMaker開発会社を代表する4社より、FileMaker Goが実際に適用できそうな場面を想定したソリューションを作成して紹介するといったセッションだ。FileMaker Goを業務に適用するときの具体的なヒントというよりも、すぐにでも適用できそうな開発物や開発時に得られたさまざまなノウハウが紹介されるなど、FileMaker Goを単に新しいものとして紹介する以上に実用面での可能性と実現性にまで踏み込んだ内容となった。

 まず最初は、株式会社キー・プランニング代表取締役の木下雄一朗氏より、病院の診察予約を行うキオスク端末のデモが行われた。iPadをキオスク端末とみたてて、カードのバーコードを読み取ってログインを行い、時間を指定して予約が行えるというものだ。予約したことはメールで報告される。予約データはFileMaker Proで一覧できるなど、管理側の機能はFileMaker Proで実装するというものだ。木下氏は現在でも多くの病院がノートなどに手書きする予約が一般的であることを示し、自動化することでの業務効率向上を訴えた。また、iPadをキオスク端末として利用するためにはスクリプトでツールバーを消してよけいな操作ができなくする手法が使えることを説明した。一方、ホームボタンを押すことで別のアプリケーションに切り替えることができてしまうデメリットがあるが、iPadの純正ケースに入れたiPadであれば、ホームボタンの箇所にプラスチックのパネル入れるなどしてボタンを押しづらくするといった対処が可能であることが紹介された。

図3 キオスク端末での診察予約画面をデモ(株式会社キー・プランニングの木下雄一朗氏)
図3 キオスク端末での診察予約画面をデモ(株式会社キー・プランニングの木下雄一朗氏)

 続いて、株式会社エミック代表取締役の松尾篤氏より、経費精算システムの適用例が紹介された。経費精算では領収書の添付が通常は必要になり、どうしても紙のやりとりが発生してしまう。しかしながら、FileMakerからカメラを利用して領収書の写真を撮影し、データベースに画像を入力することでペーパーレスな精算処理ができ、遠隔地にいても余分な事務処理が発生しないというメリットとともに紹介された。写真画像はそのままではなく、別のiOS対応アプリケーションで切り取りや明るさの修正などを行えば、鮮明な画像にできることも示された。また、書籍の管理では、書籍に必ず印刷されているバーコードを読み取り、楽天ブックスのAPIから書籍名を取り出すといった作業ができることも実際にデモで示された。松尾氏はFileMaker Goに関する情報を提供する「FMGo情報局」というサイトも運営しており、Twitterでのフィードも含めてFileMaker Goに関するノウハウ提供を行っている。「FileMaker Goは持ち運べるFileMaker」であるとして、今後に強い期待を抱いていると話された。

図4 カメラで領収書を取り込み、画像をデータベースに流す(株式会社エミックの松尾篤氏)
図4 カメラで領収書を取り込み、画像をデータベースに流す(株式会社エミックの松尾篤氏)

 3番目は、株式会社バルーンヘルプシステム開発部の佐合紀和氏より、交通費精算を含む営業支援システムが紹介された。その日の訪問先から使用する交通手段を提示し、日報としてそれぞれの訪問先での営業結果をレポートする。そして、交通費の精算処理のための明細データをWebより取得してデータベースに格納するということができるシステムがデモされた。また、見積書などをPDFで生成し、出先で印刷するためにはセブンイレブンの店頭で印刷が可能なnetprintを利用することで紙の書類を用意できることも説明した。さらに、バーコードを使った会員管理ソリューションについても紹介された。会員証に会員番号などをバーコード印刷しておくことで、会員自身がiPhoneなどでバーコードを読み取り、さまざまなサービスを提供できることが示された。

図5 営業支援システムの動作を実際にデモした(株式会社バルーンヘルプの佐合紀和氏)
図5 営業支援システムの動作を実際にデモした(株式会社バルーンヘルプの佐合紀和氏)

 最後は株式会社寿商会専務取締役ITソリューションチームリーダーの若林孝氏による、電子ペーパー会議システムの紹介が行われた。電子会議では、共通の資料を参加者に提示する必要があるが、FileMaker Goでログインをしてその資料の提示を行い、メモをTwitter風に読み書きできるシステムをデモした。これには、Google AJAX Language APIを使い、英語を日本語に翻訳する機能も組み込まれている。また、文書ファイルの提供は、本格的なWebサーバを立てなくてもFileMaker ProのIWPの機能を利用して行うことも可能であることや、Windowsでのコマンドの指定方法、スクリプトの冒頭に警告音を入れてスクリプトの開始を具体的に示す、などのノウハウも紹介された。最後に「FileMaker Goによって自由で幅の広いソリューションが可能になった」と高く評価できることを説明した。

図6 会議資料を見ながら、メモを書き、翻訳までできるような仕組みをデモ(株式会社寿商会の若林孝氏)
図6 会議資料を見ながら、メモを書き、翻訳までできるような仕組みをデモ(株式会社寿商会の若林孝氏)

日本でのFileMaker最大のイベントに成長
運用面での課題残すも今後に期待

 FileMakerカンファレンスの全体までのレポートはできない点はご了承いただきたいが、FileMakerの開発者やユーザにとって有益なイベントになったのは間違いない。最近では各地にユーザグループが発足し活発に活動を続けている。ユーザグループのような気軽なイベント、そしてTechNetメンバーに提供されているワークショップでしっかり勉強するということに加えて、FileMaker社からのアナウンスメントや同業者が集まる機会としてのカンファレンスで、より一層のコミュニティ集約が可能になっている点で高く評価できるイベントである。米国では毎年Developer Conferenceが開かれているものの、日本からの参加は決して多くない。そのような中で、日本のコミュニティを活性化させる大きなきっかけとしての役割は果たしたと言える。

 一方、今回はFBAメンバーによる展示のスペースがあまりに狭く、またセッション会場の人の流れと共通化されていることもあって、ゆっくりと展示スペースで話を聞くことが難しく、会場の出入りもスムーズでなくなるといった点があった。これは出展する側も、来場者側にもマイナス点である。セッション前のアナウンスの不整合など、準備面でもいくつか課題があった。

 いずれにしても、FileMaker社が主導する多くの人が集まるイベントは重要であることは間違いない。また、翌日に開催された全国ユーザグループミーティングも全国各地のユーザグループが集まり、北陸や四国でのユーザグループ結成や、カンファレンススピーカーへの質問大会など、リラックスした雰囲気で交流を深めることができた。FileMaker Goという新たな製品による新たな期待がビジネスへつなげるには、イベントを通じた告知は1つのキーになるはずだ。多数のユーザを集めた今年の成果を、FileMaker社も関連会社もビジネス的な結果につなげることが重要である。

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【AD】本記事の内容は記事掲載開始時点のものです 企画・制作 株式会社翔泳社

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https://codezine.jp/article/detail/5551 2010/11/03 14:00

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