IT業界全体がSSLにコミット
最近ではIT業界全体がSSLの活用を広げていこうという動きがあります。
Appleの場合
今秋リリースが見込まれているiPhone/iPad/iPod touch向け新OS「iOS 9」で導入されるApp Transport Security(ATS)では、アプリにSSL通信が強制され、非SSLの通信はエラーになります。明示的にATSを無効にしたり、非SSL通信を許可する例外ドメインを指定したりすればまだ非SSL通信が可能ですが、デフォルトをSSL通信にしていく意図が感じられます。
Mozillaの場合
Firefoxブラウザを提供するMozillaは「Deprecating Non-Secure HTTP」と題した2015年4月30日のブログ記事で、今後のブラウザ新機能はSSL環境のみに提供していくとしています。今後非SSL環境ではFirefoxブラウザの機能が十分に活用できなくなる可能性があります。
Web業界全体の動き
Mozillaに限らず、非SSL環境に新機能を提供しない動きはすでに始まっています。例えばより高速な通信を実現するHTTPの次世代プロトコル「HTTP/2」は規格上非SSL環境もサポートしますが、現状のブラウザ実装ではSSL環境のみをサポートしています。また今回紹介するService Workerのように、SSL環境でしか利用できないHTML5の技術も登場しています。
このようにIT業界全体がSSLへのコミットを強めています。今後最新のWeb技術を活用するためにはSSL環境が必須になる時代がすぐそこまで来ているといえるでしょう。
SSL利用のハードルは下がっていく
「そうはいってもSSL対応は面倒」という向きもあるでしょう。現状WebサーバーをSSLに対応するためには、SSL証明書を業者から有償で購入してWebサーバーに設定する作業が必要でした。しかしSSLの重要性が高まっていく中、より手軽にSSLが利用できる環境もまた整いつつあります。
無料かつ自動でSSLを設定できる期待の新星「Let's Encrypt」
「Let's Encrypt」は、Webサーバーに無料かつ自動的にSSLを導入することを目標とするオープンソースプロジェクトで、2015年9月に利用可能になる予定です。
Let's Encryptを用いると、リスト1のようなコマンドを実行するだけで対応Webサーバー(Apache、Nginx)にドメイン「www.example.org」のSSLを設定できるとされています。
sudo letsencrypt -d www.example.org run
また証明書の有効期間を監視し、自動的に更新する機能も備えています。Let's Encryptの証明書は無料で提供されることとあわせて、WebサーバーへSSL環境を導入するハードルが大幅に下がることが期待されています。リリースが楽しみなプロジェクトです。
今すぐSSLを使いたい人へのGitHub Pages
もうすこし安直に、かつ今すぐSSLを試したいという人にはGitHub Pagesが便利です。GitHub PagesはGitHubにHTMLなどWebコンテンツファイルをプッシュすると、SSL対応のWebサーバーとして利用できるサービスです。
利用法はシンプルで、まずGitHubに「<ユーザー名>.github.io」という名前でリポジトリを作成します。
次に、HTML/SSL/JavaScriptなどのWebコンテンツ一式をリポジトリのmasterブランチにコミット・プッシュします。具体的にはWebコンテンツ一式を配置したローカルのフォルダでリスト2のコマンドを実行します。
# Gitリポジトリ初期化 git init # リポジトリにファイルを追加 git add --all # コミット git commit -m 'Initial Commit' # リモートリポジトリ設定 git remote add origin https://github.com/<ユーザー名>/<ユーザー名>.github.io.git # プッシュ git push -u origin master
リスト2を実行してプッシュしたWebコンテンツは「https(またはhttp)://<ユーザー名>.github.io/」というURLでWebブラウザからアクセスできるようになります。
GitHub PagesのWebコンテンツはSSL(https://~)と非SSL(http://~)のどちらでもアクセスできます。https://~のURLでアクセスすると、ブラウザに鍵マークが表示されてSSLのアクセスが確認できます。なお図7で利用しているSSL接続を確認できるWebページのHTMLファイルは、本記事のサンプルコードに含まれています。
GitHub Pagesはリポジトリ単位で設定することもできます。任意のリポジトリに「gh-pages」というブランチを作成してWebコンテンツをプッシュすると「https(またはhttp)://<ユーザー名>.github.io/<リポジトリ名>」でWebアクセスできるようになります。リポジトリごとの説明ページを公開するときに便利です。