kizasi.jpというサイトをご存じだろうか? たくさんのブログをほぼリアルタイムで検索し、「今語られていること」を瞬時にランキング化する。今までとは違う情報分析の仕組みはどのようにして生まれたのか、開発者にインタビューしてきた。
kizasi.jpは、膨大な量のブログ記事をほぼリアルタイムで解析し、「今、どんな話題で盛り上がっているか」をランキング形式で教えてくれるサイトだ。しかもその情報は毎日蓄積しながら常に再計算されているため、話題の時系列推移情報を知ることもできるという。膨大な情報をいかにして収集・分析しているのか。kizasi.jp技術部門の開発者である稲垣氏、瀬戸口氏、桑原氏にインタビューをしてきた。
kizasi.jpのはじまり
編集部
本日はよろしくお願いします。まず始めに、kizasi.jp開設の経緯について教えてください。
稲垣
元々私は、株式会社シーエーシーの研究部門にいまして、そこのマネージャー兼センター長でした。3年前に「次世代型の検索エンジンを作ろう」という研究プロジェクトを起こしまして、瀬戸口と2人で始めました。桑原の方は一昨年合流しまして、3人でやるようになりました。
編集部
最初は研究プロジェクトだったんですね。
稲垣
ええ。その後、会社内の「イノベーションプロジェクト」というものの中の1つの題材として、kizasiサーチエンジンを事業化することが決まり、研究部門から事業準備室に移りました。それから1年半くらいかけて開発とビジネス展開の下準備をし、今年の1月から分社化して、
株式会社きざしカンパニーとなりました。
編集部
みなさんはどんな仕事を担当されているんですか?
稲垣
主に技術のマネージメントと、kizasiエンジンのコア部分の開発を担当しています。
瀬戸口
私自身の仕事としては、クローリングから中のシステムのメンテナンス部分など。エンジンコア以外を全体的にやっています。
桑原
私はWebサイトのデザインやエフェクトなど、インターフェイス部分のプログラミングをしています。
編集部
きざしカンパニーの運営体制はどうなっているのでしょうか。
稲垣
技術チームとビジネスチームに分かれて仕事しています。
桑原
技術チームとビジネスチームが半々で、全体で20名ほどですね。
kizasi.jpとは?
編集部
さっそくですが、kizasi.jpとはどんなサイトなのでしょうか?
稲垣
ブログで今話題になっている言葉を知ったり、その言葉がどんな文脈で語られたのかということを関連語から知ることができます。また、その言葉が注目された時期を時系列で分析することもできます。
kizasi.jpトップページでは、今一番話題になっている言葉と関連語、時間での変化をグラフが表示される
編集部
kizasiエンジンを使うと、具体的にどんなことがわかるのでしょうか?
稲垣
例えば、「YouTube」というキーワードを月ごとに見てみると、2006年5月は関連語として「スプー」という単語が出てきます。この当時、スプーのお絵かき歌がいたちごっこでアップされたり消されたりして、ブログの世界が盛り上がっていたんですが、この結果は「YouTube」という単語のそばに「スプー」という単語が数多く現れたことを示しているんです。
編集部
つまり、当時YouTubeについて語られるときは、その多くがスプーの話題だったということでしょうか?
稲垣
その通りです。そしてこれが翌月になると「極楽とんぼ」、相方が号泣した動画の話題ですね、これが上位に出現します。10月あたりになると、YouTubeをGoogleが買収したことにより「Google」というキーワードがあがってきます。このようにして、時間と共に語られる文脈が変わってくるということを分析することができるんです。
編集部
なるほど。
稲垣
他の例として、例えば「宿題」というキーワードを元に夏休みである8月頃を見てみると、夏休みが終わりになるにつれて「終わっていない」というキーワードが上がってくる。これはつまり、宿題というキーワードと他の言葉が同時に文脈に現れる、「共起度」の変化を示しているんですが、だんだんとつながりが強くなっていくのがわかります。
編集部
夏休み終わり間際になると多くの学生達が「宿題が終わらない」というブログを書くということですね。
稲垣
ええ、そういった分析をすることができます。もう少しビジネスよりの話ですと、ネスレジャパンさんの「キットカット」(KitKat)。この「キットカット」という言葉が、1月15日のセンター試験のときにピークを迎えるんです。周囲にある言葉も受験に関係ある言葉で「合格」「センター試験」「きっと勝つ」「サクラサク」といったものが並び、みんな、受験の文脈で「キットカット」を使ったということがわかります。
編集部
それは面白いですね。
稲垣
kizasiを使うと、言葉が時間ごとにどういう風に変化しているかをリアルタイムで見ることができる。こういった特徴を生かし、ビジネス展開としてはマーケッター向けにASPサービスを提供しています。例えば、キャンペーンの前後で商品がどんな語られ方をしているか、また、キャンペーン中の注目度や、自分たちが伝えたかったコンセプトみたいなものが消費者に伝わったか、といったことを検証できるんです。