【3】磁気式スイッチのデータをトリガーにメール通知を送る
可視化が簡単にできると、このデータを活用したくなります。例えば閉まったタイミングで通知を送りたいといったケースです。今回はSORACOM内の「SORACOM Lagoon」でメールによる通知を実現してみたいと思います。
SORACOM Lagoonとは
IoTの開発を進めていくと、技術的な検証だけでなく、ビジネス面での検証も同時に行う必要が出てきます。実際に動くアプリケーションを作って、ユーザーに使ってもらいフィードバックを得るというのが理想ですが、クラウドの選定やアプリケーションの調査、契約といった手間がかかるため、ビジネス面での検証を後回しにしがちです。
SORACOM Lagoonは「ダッシュボード」と呼ばれるアプリケーション構築の基盤を持っており、データの活用に特化したサービスとなっています。表示元のデータはSORACOM Harvest内に格納されたデータを使うため、データのエクスポートをしたりする手間もなく、再利用もできます。データは「パネル」と呼ばれる仕組みで多彩な表現ができ、また、ルールを設定することで通知の仕組みも内蔵しているため、IoTアプリケーションでありがちな「可視化」と「通知」の両方を満たすことができるサービスです。
また、SORACOM Lagoonは2019年2月にFreeプランが登場しており、より気軽にお試しいただくことができるようになりました。
SORACOM Lagoonの設定を行う
SORACOM コンソールで左上の[Menu]>[ダッシュボード作成・共有]を選択します。
[SORACOM Lagoonの利用を開始する]をクリックします。
Freeの[選択する]をクリックしてチェックが付いたのを確認したら[続行する]をクリックします。
SORACOM Lagoonにおける管理者のパスワードを設定します。全てが✔になるようなパスワードを設定したら[利用開始]をクリックしてください。
注
このパスワードはSORACOMユーザーコンソールにログインする際とは別のパスワードを推奨します。
パスワードの登録が完了すると、SORACOMユーザーコンソールのルートアカウント(一番初めに登録したときのユーザー)のメールアドレスをIDとして、先ほどのパスワードを設定した「SORACOM Lagoon ユーザー」が作成され、一覧に表示されます。[SORACOM Lagoon console にアクセス]をクリックします。
これでSORACOM Lagoonの設定は完了しました。
SORACOM Lagoonにログインする
SORACOM Lagoonへは、Lagoon用ユーザーでログインします。先ほど作成されたユーザーでログインします。
SORACOM Lagoon ログイン画面を表示して、「SORACOM Lagoon ユーザー」のIDとパスワードでログインします。
SORACOM Lagoonダッシュボードが表示されます。
この画面が基本になります。ここからダッシュボードを作成してみます。
ダッシュボードを作成し「Clock パネル」を配置してみる
左のにカーソルを合わせると表示される[ダッシュボード]をクリックします。
ダッシュボードが作成され、「パネルを追加する」の画面が表示されます。まずは手始めに時計を追加してみます。[Clock]をクリックします。
「時計」が表示されるようになりました。このパネルはウィンドウのようにサイズや表示位置の変更が可能です。
また、最後には状態を保存するために右上の[ダッシュボードを保存]をクリックします。名前を適宜付けて保存してください。なお、この時計はSORACOM Lagoonを表示したPCやスマホの時計をそのまま表示しています。
ダッシュボードが保存されたか確認してみます。左メニューのにカーソルを合わせると表示される[管理]をクリックします。
すると、先ほどのダッシュボードがリストに表示されています。このダッシュボード(例だと[New dashboard Copy])をクリックすると、ダッシュボードの内容が再度表示されます。
SORACOM Lagoonのダッシュボード作成およびパネルの追加はここまでの手順を繰り返すことになります。
グラフを表示してみる
それではSORACOM Harvest内にすでに蓄積されているSORACOM LTE-M Button Plusのデータを表示してみましょう。
ダッシュボードの内容を表示した後、右上の[lagoon-add-panel](images/lagoon-add-panel.png)をクリックします。
その中に表示されている[Graph]をクリックします。
[Panel Title]をクリックして表示される[編集]をクリックします。
[メトリック]タブの中でデータ表示したいSIM(SORACOM LTE-M Button Plus)を選択すると、データが表示されます。
表示するデータの範囲や、グラフの表示の更新期間の変更方法は、右上のをクリックして、以下のように設定します。
- 自動的に更新したい場合→自動更新を選択して[適用]
- 表示期間を変更したい場合→例えば[過去15分間]をクリック
注
SORACOM LagoonのFreeプランで設定できる自動更新の最小は60秒となっています。それよりも短い期間で設定したい場合は有料にはなりますが、Makerプラン、もしくはProプランをご検討ください。
パネルの編集を終了する場合は右上のをクリックします。
ダッシュボードに戻ると以下のように折れ線グラフが追加されています。
最後に右上のダッシュボードの保存を行いましょう。
アラートを設定してみる
閉まったときに発せられるデータを基にアラートを送信するようにしてみましょう。
アラートの通知先を設定する
まず、アラートの通知先を設定します。
左のにカーソルを合わせると表示される[通知チャンネル]をクリックします。
[New Channel]をクリックした後、以下のように設定していきます。
-
名前:任意(サンプルでは
email-channel
としました) - タイプ:_Email_
- Email Addresses:通知先に設定したいメールアドレス
設定したら[保存]します(送信テストも可能です)。
アラートのルールと送信を設定する
ダッシュボードを表示し直して、グラフの[Panel Title]をクリックして表示される[編集]をクリックします。
先ほど行ったグラフの編集画面になりますので[アラート]タブをクリックします。その後[アラートを作成]をクリックします。
ルールが設定できるようになるので、以下のように設定します。
-
名前:任意(サンプルでは
Door close
としました) - 条件:_last()_(最初はavg()と表示されているはずなので、クリックすると選べるようになります)
-
IS ABOVE
の値:0
これで「過去5分間で、最後の値が0を上回る」というルールができ上がりました。
[ルールを確認]で、すでに存在しているデータを対象にチェックすることができます。firing:
がtrue
となればルールが実行されます。false
であれば実行されないので、新たにデータを作るか、条件を調整してください。
最後は通知先を設定します。[通知]をクリックした後、[送り先]で先ほど設定した_email-channel_を選んでください。
最後に右上のダッシュボードの保存を行いましょう。
SORACOM Lagoonからの通知を確認してみる
ドアを閉めたときには、SORACOM Lagoonのパネルが赤くなり、そしてメールが届きます。
注
SORACOM LagoonのFreeプランは、アラートの評価が60秒ごととなっているため、データが発生してから通知が出るまで60秒ほどかかります。より早く通知が欲しい場合は有料となりますがMakerプラン、もしくはProプランをご検討ください。
おわりに
SORACOM LTE-M Button Plusと磁気式スイッチを組み合わせた「冷蔵庫の扉が閉まった回数を計測する仕組み」をSORACOMサービスだけで構築してみました。もちろんこれで終わりではなく、発展形としては別のセンサーと組み合わせた現場のデジタル化を行うことや、また、高度なクラウドサービスとの連携が考えられます。
SORACOM LTE-M Button Plusは、今回紹介したSORACOM HarvestやSORACOM Lagoonだけでなく、クラウド連携のための認証情報を付与する「SORACOM Beam」や「SORACOM Funnel」といったサービスを利用することで、外部のクラウドサービス活用も簡単に行うことが可能です。
今回のボタンの仕組みを基に、SORACOM Beamを使ってLINEに通知を送ることや、SORACOM Funnelで Amazon S3にデータを保管する方法は、2019年5月14日と15日の2日間にわたって配信されるオンラインセミナー「Let’s IoT プロトタイピング ~ ドア開閉をモニタリングしよう」でもご紹介するので、こちらもぜひご覧ください。
今回はデバイス中心の解説となりましたが、他のデバイスを用いたIoTシステム開発においてもSORACOMのサービスを活用することで、皆さんは現場のデジタル化をどのようなセンサーで実現するのかということに、(楽しく)集中していただければ大変うれしく思います。
もちろんSORACOM LTE-M Button Plusは「ボタン」としても機能するため、手軽に始めつつ、機器のIoT化を進めることも可能です。いろいろなところで試してみてください。