China Mobileによる次世代技術の実用化検証
IoT(Internet of Things)や5G(第5世代移動通信システム)といった次世代技術が注目され、実用化が進められている中、本イベントでも、関連技術であるエッジコンピューティングやNFV(Network Functions Virtualization)に関する技術動向・導入事例を紹介するセッションが多くみられました。
エッジコンピューティングの分野では、OpenStack Foundation主催でエッジ運用向けソフトウェアスタックの開発プロジェクト「StarlingX」を進めており、エッジコンピューティング向けの仮想化基盤としてOpenStackが活用され始めています。また、OpenStackは、以前からNFVを実現するための仮想化基盤としても活用されており、本イベントでも、NFV環境でのデータ転送処理性能を上げるためにSR-IOVやDPDKなどのアクセラレーション技術と組み合わせたシステム構成例・技術検証について取り上げられていました。
ここでは、大規模ネットワークシステムを構築してNFV・エッジコンピューティングの技術検証を行った、China Mobileのセッション「China Mobile Experiment Network, Lessons learned for Network Restructure」について紹介したいと思います。
China Mobileは、中国の大手通信事業者です。近年では、IoTや5G通信を含む次世代ネットワークアーキテクチャNovoNetの実現に向けて、TIC(Telecom Integrated Cloud)と呼ばれる検証用クラウドを複数構築し、超低レイテンシ通信や、複数エッジ環境の構築・運用に関する技術検証にも取り組んでいます。2018年9月時点では、中国で4つのリージョンに合計7つのデータセンターを展開しており、TICの数としては計15クラスタとなる大規模環境で技術検証を行っています。

本セッションでは、TIC環境を使用したNFV・エッジコンピューティングについての検証結果や、得られた見解、今後の課題について発表されていました。その中から、通信事業分野におけるNFV向けOpenStackプラットフォームに関する検証結果と、NFV・エッジコンピューティングに関する今後の課題について、内容を紹介します。
通信事業分野でのNFV向けOpenStackプラットフォーム利用
通信事業での利用を想定し、OpenStackの機能テストや、ネットワーク転送性能テスト(OVS/SR-IOV)、可用性テスト(Hypervisor/VM/DB/NFVインフラストラクチャの制御を行うVIM)など、多様なテストを行ってOpenStackプラットフォームの検証を行っています。検証対象の環境として、国内外含めたOpenStackベンダー9社(Red Hatなど)の製品が使用されています。検証を行った結果、ほぼすべての製品において、機能要件を満たしていることが発表されました。一方、現時点では、可用性テストにおいて期待した結果が得られない製品が多く、通信事業での使用に向けては改善が必要であると述べていました。
エッジコンピューティングのデプロイ、運用についての課題
一般的に、エッジ環境はデバイスの近くに分散され、リソース量が限られるため、システムの軽量化が要求されます。そこで、コンテナの利用によるシステムの軽量化が選択肢の一つとなりますが、VMとコンテナを併用したシステムのデプロイ・運用については引きつづき検討が必要で、今後の課題の一つだと紹介していました。また、エッジ環境が地理的に離れた場所に分散されることにより、運用管理のコストが大きくなるため、人の手を介さないZero Touchプロビジョニングの実現にも力をいれていく必要があるということです。
NFVサービスの展開に向けて必要な検証事項
上述したエッジコンピューティングの課題解決に加え、通信事業の分野で求められるような高い性能を満たすようなNFVサービスを実現するためには、データ転送処理性能を上げるためのアクセラレーション技術を効果的に取り入れていく必要があります。具体的にはDPDK、SR-IOV、Smart NIC、FPGA、GPUなどといった技術が挙げられますが、今後の5G通信をサポートしていくためには、これらのアクセラレーション技術を適切に組み合わせて活用することが求められます。そのため、複数のアクセラレーション技術の組み合わせの中で最適解を見つけるための調査・検証が、今後の課題になると述べていました。
以上のように、今後のIoT、5G通信を利用した次世代技術に期待が高まる中、実用化に向けて解決すべき課題が明確になってきました。これからも、通信事業者や研究機関を中心に、実用化に向けた技術検証や利用事例が増えることが予想され、目を離せない状況が続きそうです。
