Airship
Keynoteでも紹介のあったように、OpenStack Foundationの新たな取り組みとして、Airship、StarlingX、Kata Containers、Zuulの4つのパイロットプロジェクトが今回大きく取り上げられ注目されていました。
Airshipは、YAMLファイルの宣言的な記述をもとに、システムのライフサイクルマネジメントを行うソフトウェアです。物理マシンへのKubernetesのインストールやネットワーク設定、インストールしたKubernetes上へのコンテナのデプロイ・アップグレードなどを実施します。現在の開発はKubernetes上へ、コンテナ化されたOpenStackをデプロイするユースケースを第一に進められています(OpenStackデプロイにフォーカスして進められていますが、どのようなアプリケーションにも切り替え可能なようです)。
Keynoteセッションでは、AT&Tが5GのインフラをAirshipでデプロイし、遠隔地と通話するデモが行われました。AT&T以外にもSK telecom、Ericsson、99 cloudが現在評価を進めていること、AKRAINO Edge StackやEdge管理のStarlingXプロジェクト、MirantisやSUSEといったディストリビュータとのコラボレーションも進んでいると説明がありました。また、現在1.0 Release CandidateとなったAirshipの開発動向と、1.0までに対応する機能について紹介されていました。
フォーラムセッションでは、Airshipの物理マシン対応に関して、どこまでの対応が利用者に求められているかの意見の吸い出しが行われていました。物理マシンのインストールの仕組みが、現在はUbuntu MAASの機能に限られていますが、OpenStack Ironic機能と切り替えができるようドライバ化することが議論されていました。
その他、YAMLファイルの記述を解釈するAirship Deckhandの機能を説明するセッションも行われていました。YAMLファイルの内容を関数のようにルールに従って置換できる仕組みを持っていること、他のYAMLファイルを取り込み、必要箇所を上書きすることでレイヤのように動作し少ない記述で効率的に設定できる機能の紹介が行われていました。サイト全体の設定や個別ホストに対する設定を(Puppetのように)分離することや、特定のインストール作業単位でライブラリ化して管理することが可能になるとのことでした。
StarlingX
StarlingXはOpenStackを活用したEdge向けクラウドを構築するプロジェクトです。
Edge向けクラウドは従来のクラウドより低遅延、高パフォーマンスが求められるという特徴があります。例えば、一般的なサーバを提供するデータセンタでは100ms未満のレイテンシで運用されることが多いですが、Edge向けクラウドは10-40ms未満のレイテンシで運用されることが想定されています。
こういった要件や、その他Edge向けの各種サービス管理機能を提供するスタックとして、StarlingXプロジェクトが進められています。StarlingXプロジェクトではOpenStackの既存機能を活用しながら、不足箇所・改善箇所の対応が行われています。
China Unicom、Intel、99 Cloudのセッション「Comparison between Open Edge Projects (Akraino/StarlingX/OpenCord/vCO) modules v.s. ETSI MEC RA」では、前半は(StarlingX含む)AKRAINO Edge Stack、vCO、CORDの各オープン系Edgeプロジェクトの機能比較や、ETSI GS MEC(Mobile Edge Computing)のEdgeアーキテクチャと各プロジェクトのカバー領域について紹介がありました。
また発表の後半では、StarlingX Deep Diveというタイトルで、故障管理やシステム構成管理、VM-HAの高速化、コントローラHA最適化、構成管理(インベントリマネジメント)などのStarlingXで追加された機能の説明もありました。
本セッションでは、CORDとAKRAINOプロジェクトは実際のコードがあり、(まだPoCステージである)vCOプロジェクトより成熟していると語られていました。また、CORDはVNFやホワイトボックスハードウェアとの統合に注力している一方、(AKRAINO プロジェクトで使用されている)StarlingXは設定管理やサービス管理、ソフトウェア管理、ホスト管理に対応しており、すでにデプロイして試すことができるスケーラブルなEdgeソリューションと紹介されていました。