ベンダーを超えて本音で語る、クラウド開発導入成功のポイント
2日目の基調講演は「日本IBM、日本マイクロソフト、日本オラクルが本音で語る、”クラウド開発 コトはじめ”」と題したパネルディスカッション。マイクロソフトとIBMからゲストを招き、クラウドネイティブの開発について本音で語り合った。モデレーターは日本オラクル 大橋雅人氏、パネリストは「デプロイ王子」こと日本マイクロソフト 廣瀬一海氏、日本IBM 萩野たいじ氏、日本オラクル 野中恭大郎氏。
発端は日本オラクルが主宰するエンジニア向け勉強会「Blockchain GIG」。企業システムにブロックチェーン技術を導入することを目指す勉強会であるものの、登壇者の間で「裾野を広げる必要性がある」との認識が広まっており、今回のパネルディスカッションにつながった。
今はDXの追い風もあり、企業におけるクラウド活用は加速している。とはいえ、クラウドベースの開発に着手しはじめたばかりのエンジニアにとっては、何かと不安や戸惑いもあるだろう。ここでは開発の有識者が集い、クラウド開発を本格的に進める時のポイントについて探った。なお今回のメンバーは所属企業を代表する立場ではなく、エンジニアとしての個人的な経験や見解を語るために登壇している。
まずはモデレーターの大橋氏が「クラウドで開発するとしても、今までと同じではないか。何が違うのか」と問いかけた。廣瀬氏は「これまでを踏襲することも可能だが、それではクラウドのうまみが活かせない」と指摘。最初の一歩として、単にオンプレからクラウドにリフトするだけでもいいが、クラウドには各種マネージドサービスがあり、複数のクラウドベンダーにわたりサービスを取捨選択することもできる。
野中氏は「クラウドだと全てAPIベース。開発者がインフラにも関わり、スモールスタートから拡張して大きなサービスに発展することもできる。何よりも違うのはスピード」と挙げ、オンプレとの違いを多数指摘した。続いて萩野氏は「IaaSなら開発スタイルはあまり変わらないかもしれないが、PaaSならカフェテリア方式でサービスを組み合わせることもできる。コンテナなどテクノロジーは日々進化しているので、今はクラウド開発のベストプラクティスを模索している段階かもしれない」と話した。
現実的には既存システムとの兼ね合いもある。スタートアップがスクラッチから開発するならともかく、多くの現場には古くから稼働しているオンプレの既存システムがある。「絶妙なバランスで進めていく必要がある」と大橋氏は言う。
うまくいっている企業はどうしているか。廣瀬氏は「CCoE(クラウド活用推進の専門組織)を構成し、戦略的に進めている」と挙げる。DXは組織横断的に進めていく必要があるためだ。また廣瀬氏はクラウドサービスの「メニューだけで判断するのはリスク。味見すべし」と、まずは小さく始めてみるようアドバイスする。
いろいろと気軽に試せることはメリットではあるものの、逆にやることが増えて負担に感じる人もいる。野中氏は「興味あるものをとっかかりにドリルダウンするといい」とアドバイスする。好きなものからアプリを考え、そこからNoSQLやサーバーレスなど要素技術に踏み込むという考えだ。
廣瀬氏も「好きなことは大きな動機になる。それでもどこから始めたらいいか分からないという人には『自分が楽になるものから着手して』とアドバイスしている」と言う。野中氏はかつての現場で、ソースコード管理をSVNからGitに移行するためにトップと交渉したエンジニアを目撃した経験から「楽になるものから着手すること、偉い人を巻き込むことは大事」と同意した。組織の関わりで言えば、萩野氏はDXの取り組みで組織の課題を洗い出す時、立場が異なると利害関係が異なるので着地点を探す苦労を目にしていると話した。
大橋氏は「エンジニアとしてやれることは何か」と問いかけた。廣瀬氏は「便利になったことがあれば社内で共有して」と提案した。「自分はエンジニアだから」と考えると黙々と開発するだけになるかもしれないが、生産性を高める取り組みでも事業の貢献につながっている。
最後に一言ずつ、パネリストたちからメッセージを述べた。廣瀬氏は「クラウドサービスベンダーは複数あるが、それぞれ良さがあり、比較するものではない。いろいろ試して勘どころをつかみ、武器にしてほしい」、萩野氏は「どのサービスも直感的に使えるので、興味を持ったものを触ってみてほしい。おもちゃ感覚で楽しんで」、野中氏は「今オンプレしかできなくても現状から学べることもある。オンプレとクラウドの両方のスキルがあれば希少な存在になれる。将来も大事だが、現状の業務も大事にしてほしい」と話した。
大橋氏は「今回は『コトはじめ』をテーマにしたが、今後は実際に着手した後の課題解決についても語り合いたい。ITや日本全体を盛り上げるために企業の垣根を越えて貢献できたら」とまとめた。
あまりにあっという間で語り尽くせなかったのか、参加者は「またやりましょう!」と言い合いセッションが終わった。そして数日後には続編となる勉強会が告知された。まだまだ、このメンバーの語り合いは続きそうだ。
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