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進化するエンジニア組織

「強いエンジニア組織を作りたい」野望を胸に、READYFORが取り組んだ「組織の乳化」と「スクワッド体制」とは?

エンジニアリングが組織に広がる世界観を実現


「組織の乳化」を宣言し、「スクワッド体制」を導入

 伊藤氏が「組織の乳化」の概念と出会ったのはREADYFORに入社後すぐのことだった。著書『エンジニアリング組織論への招待』で知られる広木大地氏の「2つのDX」というテーマの講演のなかで、「エマルジョン現象」への言及があり、CTOの町野明徳氏は、2019年10月のプロダクト開発定例でその概念を紹介した。伊藤氏はそのとき「目指していた世界観に近いな」と感じたのだという。

 「組織の乳化」とは、具体的にはどのような状態のことを指すのか。READYFORの定義では「組織の中にエンジニアリングが自然に溶け込んでいる状態」としている。一般的にはビジネスとエンジニアリングは二項対立で語られがちだが、実際、ビジネス側の都合をエンジニアリングに関わる人たちに直接落とし込むと、納期やコストがガチガチに決められて、降ってきた要件をただ作る状態になってしまう。これは伊藤氏が目指していた世界とは逆の状態であるが、伊藤氏は「そんな状態には陥りたくない」と自分たちで表明していくことが必要だと考えた。

 そう表明していくにあたり「乳化」という表現がしっくりきたと言う。水と油は放っておいたら分離してしまい、混ざり合うには界面活性剤のような動きをする人が必要。READYFORでも、エンジニアリングとビジネスが混ざり合っていることを理想と考えた。

 そこで伊藤氏は、2019年末に参加した経営合宿において、乳化について話題を出した。翌年2020年の年始の朝礼でも「READYFORは乳化を体現する組織になっていきたい」という話をした。非エンジニアも含むメンバーにも好意的に受け止められ、全社をあげて乳化に取り組んでいる。

 その後、全社ミーティングにおいて、伊藤氏がエンジニアリング戦略を話す際に改めて「乳化を実現するために我々エンジニアが何をやっていくのか」について説明を行い、会社全体に向けて「乳化を推し進めていこう」という表明を行った。

 さらにREADYFORでは2019年から2020年にかけて、組織体制として「スクワッド体制」を導入してきた。組織の乳化を目指すための取り組みとはまた別の文脈で導入されたが、結果、乳化を体現する施策になった。

 スクワッド体制は、Spotifyでも導入しているミッションに基づいた組織編成の手法で、組織を職能ではなくミッション単位で編成することに大きな特徴がある。「スクワッド体制を導入する他の日本企業では開発チームだけに導入するケースが多いですが、READYFORでは全社的にスクワッド体制を採用しているのが面白いところ」と伊藤氏は言う。

 伊藤氏の入社前まではエンジニアは少人数の1チーム。伊藤氏が入社時点ではエンジニアは10人で、ちょうどフロントエンドとバックエンドの2つのチームに分かれたところだった。

 READYFORでは、目標管理のためのフレームワークOKR(Objectives and Key Results)を以前より導入していた。しかし、フロントエンドチームのOKR、バックエンドチームのOKRといったように職能毎にOKRを設定していると、会社が目指したい方向と、チームのOKRをどのように整合性を取ればいいかのひずみが生じ始めてきた。

 伊藤氏はそこに問題意識を感じ、2019年の年末、翌年のOKRを決めるタイミングで、ミッションから落とし込んだチーム編成をCTOやプロダクトマネージャー、エンジニアリングマネージャーと一緒に考えることにした。考えていくなかで「これはいわゆるスクワッド体制ではないか」と気づき、CTO 町野氏からチーム編成やスクワッド体制の導入を経営陣に提案。全社的にスクワッドを進めていくことになった。

エンジニアとエンジニアでない人の双方が理解し合うために

 まずは「組織の乳化」を目指そうと表明し、スクワッドによってミッション単位のチーム編成に転換したREADYFOR。組織の乳化を実現していくために、さらにどのような取り組みをしていったのか。

 乳化を実現するには「ビジネスサイドなど非エンジニアがエンジニアリングを理解することと、エンジニアがビジネスを理解することの双方が必要」と伊藤氏は言う。

 エンジニア以外の方にエンジニアリングを理解してもらうには、伊藤氏が自らエンジニアリングを使った課題解決方法の啓蒙活動をした。

 READYFORの行動指針の一つに「隙(に)手間かける」がある。「空いた時間(隙)を作るためにこそ手間をかける」というこの行動指針により、社内のメンバーは、仕組み化したり、ルーチンワークを自動化したりすることへの意識はもとから高かった。しかし、「やりたいことはあるんだけど、どうしたらいいか分からない」という疑問は出てくるため、伊藤氏は、業務フローをエンジニアリングで解決する専任のエンジニアと一緒に、ツールの使い方ややりたいことの実現方法について、意識的に教えるようにした。具体的には、Slackと連携するアプリを作って見せたり、自動化ツールのZapierのようなSaaSを使って見せたりなどしてきた。

 逆にエンジニアがビジネスや業務フローを理解するのによかったことの一つに、BPMN(Business Process Model and Notation)を使っての業務フローの可視化がある。BPMNとはビジネスプロセスやワークフローを可視化するためのモデリング手法だ。

 通常はエンジニアやシステムの要件定義をする人が、実際にその業務をしている人がヒアリングをしてモデルに落とし込むことが多い。しかしREADYFORでは、実際にその業務を行っている人がBPMNを作れるようにした。

 「これも啓蒙することで、自分で業務をやっている人たちがBPMNを使えるようになりました。そのほうが翻訳ロスが少ないんですよね。するとエンジニアは簡単に、業務フローがどうなっているのかを理解することができます」

 どちらの啓蒙活動もあまりにスムーズにいき、伊藤氏は正直驚いたそうだ。

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経理とエンジニアが一つのスクワッドとして開発

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この記事の著者

近藤 佑子(編集部)(コンドウ ユウコ)

株式会社翔泳社 CodeZine編集部 編集長、Developers Summit オーガナイザー。1986年岡山県生まれ。京都大学工学部建築学科、東京大学工学系研究科建築学専攻修士課程修了。フリーランスを経て2014年株式会社翔泳社に入社。ソフトウェア開発者向けWebメディア「CodeZine」の編集・企画・運営に携わる。2018年、副編集長に就任。2017年より、ソフトウェア開発者向けカンファレンス「Developers...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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