自分たちが得意な「パイプライン」を手がける
編集部
では現在の御社のサービスというのはそこの問題をクリアはしている。
清水
はい。弊社はCMSをサービスとして展開していますが、CMSというのはとてもいい商材だと思います。なぜならサイトを作りたいっていう人は世界中にいますから。
編集部
マーケットが非常に大きい。
清水
携帯に限定しても日本中にサイトを作りたい人はいます。実際、携帯のゲームを作っていたときに、よく来た依頼が「サイトを運営してくれ」とか、「サイトを作りたい」というものでした。また古くから各キャリアさんとのパイプもある。人的なパイプがあり、ソフトウェア的な資産もある。そういった面で、CMSを作って売るというのが今のところ自分にできる仕事の中で最もパイプライン的だと思ったんです。皆が今欲しがっていて僕が商売にできそうなものがたまたまコンテンツ管理システムだったのです。
編集部
CMSなら、10件受注があったら10倍儲かるということですね。
清水
そういう構図が簡単に作れる。ゲームの場合ってクオリティっていうのが全く明文化されておらず、しかも先ほど言ったようにクオリティが3倍になっても3倍売れるわけではない。完全にパイプラインとして破綻しています。だから、ビジネスに徹するならゲームを作りたいという気持ちは捨てなければならないと思いました。
今は僕個人の会社ではなく、社員も増えてきています。彼らの生活も支えなくてはならないので、僕ひとりが好きなことをやっていてはいけません。だから未だにゲームが好きで作っていますが、ビジネスとしてはトントンになればいいやくらいに思っています。ZEKEにしても、これはもともとゲームを作りたくて作った技術でしたが、普通の仕事にも生かせますから、その方が皆、幸せになるじゃないかと思ってやっています。
携帯のフルブラウザ化は現実的ではない
編集部
さて将来のことに話を向けたいと思います。携帯電話の進化についてまわるのがフルブラウザ化ですが、これはどのような形で実現するでしょうか。
清水
携帯のフルブラウザは普及しないと思います。フルブラウザが世の中に出て、実際どうなんだろうと
「サイトスニーカー」を使って自分達なりに実験してみたかったのですが、やっぱりいらないだろうという結論にいたりました。
編集部
携帯にはいらない。
清水
いらないというよりも、今のところ向いていないと思います。フルブラウザは携帯のように小さい画面で見るものではないな、と思います。
mixiの例が分かりやすいのですが、携帯の画面で、PC用のmixiを見た場合と、携帯用のmixiを見た場合ではやはり圧倒的に携帯用mixiサイトの方が見やすいのです。
清水
最近発売しているAQUOS携帯のように横画面ならば、フルブラウザもずいぶん見やすくなりますが、それにしてもマウスなどでカーソルで動かすというインターフェイスのものはあまり向いてない。
あとはRSSリーダーが携帯で発達してくるでしょう。RSSリーダーだったら携帯でもっと見やすくできるはずです。
編集部
今後の抱負を聞かせてください。
清水
マーケティングの面でもいろいろとアイデアが出てきているのですが、その1つに「マイクロコミニティの集合体」をつくっていこうと事業を進めています。例えばコミュニティを今からゼロの状態で立ち上げて
mixiや
GREEや
モバゲータウンと戦っていくのは経営戦略としては無謀なことで、ヤフーのSNS「
ヤフー・デイズ(Yahoo! Days)」でさえもmixiに勝つのは難しいと思います。
結局SNSを知らなかった、珍しかった時代にみんなが始めて使ったのがおそらくmixiやGREEやモバゲータウンであって、今からそれらをどれも使ったことのない人を引き込むのは非常に大変なことです。
「一回、mixiやったけど飽きちゃったよ」といってやっていない人の方が多いと思います。そういう人たちに対して「このたび新しいSNSできました」と訴えても魅力を感じてくれない。そうするとmixiをやっている人に「もっと良いSNSができましたよ」と紹介するしかないのですが、mixiをやっている人はmixiの人脈が全てなので、そこから一歩も出ることはない。結局いろいろなSNSが苦戦しているのはそういう理由ではないでしょうか。
Twitter(トゥイッター)と似たサービスもこれと全く同じ理由で、Twitterに勝つのは難しいですよ。そうじゃなくて、例えば10万部しか売れていない読者だけを囲いこむというような、もっとターゲットメディアにしぼったマイクロコミニュティなら成り立ちます。いろいろな人にとってメリットがあり、1つのシステムを共通化できれば、みなさん使ってくれると思います。
このようなSNSのASPみたいなものを事業としてやるつもりです。また展望としては、こうしたサービスにTwitterとセカンドライフの共通点であるユーザーが世界を変容させる機能を入れたいと考えています。それで他の人が儲けられる仕組みを作りたいと思っています。
編集部
セカンドライフが盛り上がっているのはビジネス的な要素が強いゲームだというのもありますね。ぜひUEの今後の事業に期待しています。どうもありがとうございました。
Ubiquitous Entertainment Inc.