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女性の学びを支援する団体や技術コミュニティの世界

自分の世界は自分の力で少しずつ変えられる! Rails Girls Japan 江森真由美さんに聞いたRubyコミュニティの世界

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 エンジニアとして働く女性の数は男性と比較していまだに少数。「同性が周りにほとんどいない」ことから、自身の将来のキャリアやスキルにおいて悩みを抱えている人も少なくないはず。こうした悩みを解消でき、スキルアップすることが可能な女性向け技術コミュニティの1つがRails Girls。Rails Girlsでは、プログラミング未経験の女性を対象にワークショップを開催している。設立の経緯やワークショップではどんなことを学ぶのか、設立にも携わり、エンジニアとして働くRails Girls Japanの江森真由美さんに話を伺った。

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当時はRubyがメインでRailsは書けない、それでも「大丈夫、できるよ」と後押しを受けオーガナイザーを務めることに

――Rails Girls Japanの設立の経緯から教えてください。

 Rails Girlsというグローバルなコミュニティがあります。2010年にフィンランドのヘルシンキでワークショップが開催されたのが始まりです。次第に世界各地に広がり、日本では2012年9月に東京にて初めてのワークショップが開催されました。当時オーガナイザーをしたのは原田洋子さんです。アメリカ在住ですが、日本帰国時に開催してくれました。

 当初は一般社団法人日本Rubyの会の方々が主にサポートを行いワークショップを開催していたのですが、各地で開催するようになり、2015年にRails Girls Japanとして改めて組織を立ち上げました。

Rails Girls Japan 江森真由美さん
Rails Girls Japan 江森真由美さん

――江森さんの現在のお仕事やエンジニアを目指したきっかけは?

 現在はケーシーエスキャロットのグループマネージャに就き、主に受託開発をしています。未経験でもプログラミングを教えてくれる企業でしたので、就職先に選びました。

 就活していた時はやりたい仕事が明確ではなく、数年働いたら専業主婦になりたいなと漠然と思っていました。でも結婚相手に人生を頼るリスクや子育てとの両立を想像すると、手に職をつけたほうが良いだろうと思ったのです。やりたいことよりは将来を見越して合理的に選んだという感じですね。

 学生時代にWindows 95の登場を見て「これからパソコンで世界が変わるんだろうな。世界がつながって家で仕事ができるんだ」と思いました。ただ私は中学、高校、大学と女子校で、文系でしたので未経験でもプログラミングを教えてくれるところを選びました。あと、幼なじみが情報系学部から外資系IT企業に就職していて、いろいろアドバイスをもらえた影響もありました。

――Rails Girls Japanの運営に関わるようになった経緯は?

 仕事で2004年ごろからRubyを使うようになりました。Rubyの地域コミュニティでAsakusa.rbがあり、2010年ごろから参加するようになりました。それまでプログラミングは会社の先輩に教えてもらうものだったのに、コミュニティだとわいわいと楽しそうで衝撃的でした。当初は女性の参加者は珍しく、1人ぽつんと壁際にいた感じでしたが、次第に話せる相手も増えてきました。

 イベント帰りのラーメン屋さんで「Rails Girls興味ない?」と誘われました(笑)。「私はRubyがメインでRailsは書けないのだけど」と伝えたのですが「大丈夫、できるよ」と激励され、3回目のワークショップでオーガナイザーを務めることになりました。

 東京のワークショップに参加した人が後に名古屋でオーガナイザーをするなど、人のつながりが生まれ、次第に仲間が増えていきました。2015年にRails Girls Japanを設立する時にも「やってくれる?」と誘われ、「喜んで」と応じました。

初心者向けのRails Girls、大事なのはコミュニティを通して成功体験を積むこと

――Rails Girls Japanの活動内容を具体的に教えてください。

 Rails Girlsのワークショップはプログラミング経験なしの女性を対象としています。大抵、金曜夜と土曜終日で開催します。金曜夜の会社帰りに立ち寄ってもらい、インストールだけを行います。最初の疑問や不安はここで解消できるようにしています。

 土曜は新しいプロジェクトを作成し、コーチがWebアプリの仕組み、オープンソース、GitHubなどを解説し、簡単なWebアプリケーションを作成してHerokuに乗せ、自分が作成したアプリケーションを世界に公開するところまで行います。

 ゴールはアプリケーション公開ですが、大事なのは苦手意識の克服です。「やってみたらできた」と成功体験を持ちかえることで、次に活かしてもらえればと思っています。

Rails Girls Japan
Rails Girls Japan

――開催はどのようにしていますか?

 Rails Girls Japanが開催場所や日を決めているのではなく、開催希望があれば開催しています。やってみたい人はフォームに記入(「シャウト」する)して意思表明してもらいます。地方だと「エンジニアが少ないから一緒に勉強する仲間がほしい」が理由になる場合も。

 意思表明があると、Rails Girls Japanが意思表明してくれた人に開催するための方法などをご案内します。コーチは地域Rubyコミュニティの人にお願いしたり、足りなかったら他の地域から応援したりすることもあります。オーガナイザーは食事や会場セッティングを行い、コーチは2週間前に一通りガイドを流し、問題がないか確認してもらいます。

――主に初心者が参加するんですね。

 そうなんです。ワークショップは1回きりですが、継続して勉強したい人向けに「Rails Girls More!」という勉強会を東京、名古屋、長野、仙台にて開催しています。5月の連休中には「もくもく会」がありました。地域によってはWebアプリケーションの本を一緒に読む「輪読の会」もあります。

――Rails Girls Japanが活動するにあたり、どのような理念を掲げていますか?

 Rails Girlsの活動が2010年から世界で始まり、2012年からは国内で始動しました。2015年ごろにはいろんな言語で女性向けコミュニティが増えました。当初は「Girls」と女性を掲げることで男性差別や男性排除と目された時期もありました。

 決して男性差別が目的ではありません。女性のなかには技術やITへの苦手意識を強く持っている人がいます。これは育った環境の影響もあります。苦手意識を克服するには、まずは女性コミュニティで敷居を下げ、成功体験してもらう必要があると思います。だからアファーマティブアクション(積極的格差是正)のような、社会貢献を目的とした活動という側面もあると思います。ご理解いただければと思います。

 最初のハードルを越えて慣れれば、通常のコミュニティにも参加できると思います。男性を排して女性だけのコミュニティを作りたいわけではなく、苦手意識を克服し、最初の仲間を持ってもらおうと考えています。

――初心者から見てRuby言語の魅力はどんなところにあるでしょうか?

 Rubyは日本で作られた言語ですので、開発者に日本人が多く、国内に地域コミュニティも多いのが特徴です。分からないことがあれば日本語で聞けます。海外の開発者の中には日本語ができる人もいるんですよ。Rubyを使っていると「これ、あなたが作ったんですか!」と作者と遭遇することもあります。他の言語ではあまりない魅力かと思います。

 コミュニティに参加する魅力についてですが、新しい言語を学ぼうとするなら書籍を読む、ネットから情報収集するなどいろんな方法があります。1人でプログラミングして何かを開発することもできますが、コミュニティに参加すると作ったものを自慢したり、喜びを共有したりすることができるのが魅力になると思います。自分の中で小さくガッツポーズして終わりではなく、みんなでワイワイやるときっと楽しいと思いますよ。

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この記事の著者

加山 恵美(カヤマ エミ)

フリーランスライター。茨城大学理学部卒。金融機関のシステム子会社でシステムエンジニアを経験した後にIT系のライターとして独立。エンジニア視点で記事を提供していきたい。EnterpriseZine/DB Onlineの取材・記事や、EnterpriseZine/Security Onlineキュレーターも担当しています。Webサイト:http://emiekayama.net

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鍋島 英莉(編集部)(ナベシマ エリ)

2019年に翔泳社へ中途入社し、CodeZine編集部に配属。同志社大学文学部文化史学科卒。

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