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「ご機嫌で仕事に取り組む、成果を出す」は実現可能――そう語るSREエンジニアの北野さんにこれまでのキャリアを聞いてみた

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2021/07/07 11:00

目次

社内外を問わず「誰かのために役に立つ喜び」を原動力に

――どのようにして運用業務の効率化・自動化を進めていかれたのですか。具体的にお聞かせください。

 立ち上げ直後は、システム運用の高度化や自動化を推進していたものの、手作業でやっている部分が多く、自分しか知らないことがあることに課題を感じていました。主体的に他に引き継がないと、誰もその業務に触れないんです。そこで「Teachme Biz」を使って、サービスの手順書を作成し、チーム内で引き継ぎを行うようにしていきました。

 また、以前は依頼作業ベースで仕事が進んでいたものを、今はアプリケーションの開発者がプルリクエストを通じて、自分たちに必要な環境構築ができるようになりました。それができたことで、私自身の働き方も大きく変わっていきました。他にも、ソフトウェアの新しい更新分のお客さまへの展開を自動化するなど、それぞれの機能開発チームを中心に自然に行われるようになっています。

 そうした活動の中で大切にしているのは、まず1つ目に、業務の背後にある「前提知識」を明らかにすることです。例えば、ある運用業務が必要だとして、背景にはサービスの歴史的な経緯やシステムの制約条件があるとします。それは開発した人の中に暗黙知としてしか残りません。なのでそれをちゃんと伝えることが必要です。

 2つ目は「技術と組織の両面からアプローチすること」を怠らないことです。かつて、一部の業務で導入しっぱなし作りっぱなしになっているツールがありました。そうした状況が続くと、結局依頼されて作業するということになり、自分ばかりが対応することになってしまいます。そこで、最近は新しい技術は、必ず組織への浸透を意識しつつ導入するようにしています。例えば、ハンズオンをやって利用者を増やしたり、逆に簡便に使えるツールを開発して提供したりしています。

 また、これはSREの範疇ではありませんが、Pythonを使ったExcelの効率化や非エンジニアの人に向けてオンライン形式で講義をする活動も行っています。

非エンジニアに向けてオンライン形式での講義も実施
非エンジニアに向けてオンライン形式での講義も実施

――なぜエンジニアではない人も含めて、さまざまな人の仕事や開発の効率化・自動化に、熱意を持って取り組めるのでしょうか。

 先ほど、Ben Treynor Sloss氏の言葉を紹介しましたが、「システム運用業務」という部分が、別の言葉に置き換わってもいいんじゃないかと思ったんです。ただ、はじめはそこまで深く考えていなくて、趣味の延長で「Pythonを使ったExcelの自動化」という記事を、知人のWebメディアに寄稿したのですが、書籍化の話までいただくことになりました。

 さらに、著書『Pythonでかなえる Excel作業効率化』(技術評論社刊)を実践された人からのフィードバックがあり、「誰かのために役に立つ」ことがこんなに嬉しいことなんだと実感しました。その後、オンライン講義での登壇発表やメディアへの連載などに広がって、その延長線上に今がありますね。

 こうやっていろいろとやらせていただけているのは、正直なところ運が大きかったかと思います。それでも、自分自身の心がけとして持っているのは、「言葉にすること」と「小さくでもはじめてみること」です。例えば、日本初のSREカンファレンス「SRE NEXT 2020」を主催できたのもその1つです。「いつかそういうカンファレンスをやりたい」という気持ちはあったのですが、あえて口に出したことで賛同者が集まり、開催へと至りました。また、もともとチームのメンバーは勉強会を運営する中で集まった方なんです。始めから「SREカンファレンスをやりたい」というのではなく、小さな勉強会から始めて継続したからこそ実現できたのだと感じています。

フラットで協力しあえるエンジニアの世界で共に頑張りたい

――何をもって、どんどん自分が関わる領域を広げていく原動力にされているのでしょうか。

 ドライブがかかったきっかけは、やっぱり「人の話を聞くこと」ですね。かつて自分の中にもやっとしたものがあった時、いろんな勉強会やカンファレンスに参加しまくりました。デブサミに参加して、発表もよく見ていました。その中で、いくつか他社で導入したすごく面白い技術や事例などを聞いたことで、自分でもそれを実現したくなったんです。その時に一歩踏み出せたような感覚があって、あとは興味関心に導かれるままに広げていきました。

 そうして社内で初めて主催したプロジェクトのテーマは「パフォーマンス改善」でした。チームの壁なく5人くらいで集まっていろいろ話して……と言うと、他社の方から「上司ブロックがなくていいね」と言われるのですが、幸いスタディストはそうしたことがまったくなく、むしろ当時の上司は背中を押してくれました。その意味で、「自由にやりたいことをやらせてもらえる環境をみつけること」も大切かもしれません。私の場合、面談でそれを実感したのですが、他にも全体ミーティングなどで他部署の取り組みが事細かに聞けたり、日常的に横串でも連携できていたり。今もオンラインでミーティングをやっていますが。120名が集まった画面は壮観です。

 あとは「役に立つこと」をいとわないことでしょうか。「ご機嫌で仕事に取り組む環境」を実現する考え方には、社内外や業務の種類などの縛りはないのではないかと思います。なので、社内報の編集や、エンジニアの仕事ではないと言われることもやっています。それで協力してくれる人も出てくるし、全体が良くなればいいなと。スタディストのバリューの中に「フルオーナーシップ」というのがあるのですが、自分の領域を限定せずに、やれることはやろうという文化があるのも、「自分が足を伸ばして何でもやっていいんだ」という肯定感につながっているように思います。

 開発に限った話では、どこのチームのどの仕事でもプルリクエストを出せば貢献できる状態を目指しています。OSSの誰か知らない人と改善策をやり取りする感じでしょうか。それに近いことを開発チームの中で再現したいんです。実際、他チームのリポジトリにプルリクエストを投げることは日常的にはじめています。

――最後に「やってみたいけど」「役に立ちたいけど」と躊躇している若手デベロッパーにアドバイスやメッセージをいただけますか。

 私もまだU30なのでアドバイスというより、まずは「一緒に頑張りましょう!」と伝えたいです。私自身、たまたま書いたものが書籍になったり、カンファレンスを立ち上げたりと、能力を持っていている「すごい人」のイメージを持たれがちですが、実際そんなことはありません。先日も新しいプログラミング言語の勉強を始めたばかりで、その世界では完全に初心者ですし、年齢も経験も関係なく、ある領域では先生になったり、生徒になったりします。それがエンジニアの世界の楽しいところかなと思っています。ぜひ一緒に協力し合いながら、頑張っていきましょう。

――SREにも通じるメッセージですね。北野さん、貴重なお話をありがとうございました!



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著者プロフィール

  • 伊藤 真美(イトウ マミ)

    エディター&ライター。児童書、雑誌や書籍、企業出版物、PRやプロモーションツールの制作などを経て独立。ライティング、コンテンツディレクションの他、広報PR・マーケティングのプランニングも行なう。

  • 鍋島 英莉(編集部)(ナベシマ エリ)

    2019年8月に翔泳社へ入社し、CodeZine編集部に配属。同志社大学文学部文化史学科卒。

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