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エンジニアは武器を作る側か、その武器を使って事業を伸ばす側の二極化へ――DMM石垣さんに訊いたキャリア構築に必要なこと

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2021/11/17 11:00

目次

圧倒的な成果で信頼を獲得し、視座を上げることで次のステージへ

――たとえ志しても、なかなか「裁量と権限」を得ることは難しいと思われます。具体的にはどのようにして自身のプレゼンスを高め、「裁量と権限」を獲得していったのでしょうか。

 エンジニアとしてモノづくりに取り組み、それによって「裁量と権限」を獲得するには、「圧倒的に成果を出すこと」が必須だと入社時から思っていました。新卒社員なら、まずタスクを与えられてこなすのが第一ハードルだと思いますが、そこで好き嫌いをせず、”圧倒的”な成果をどれだけ早く出すかを意識して取り組んでいました。例えば、初めは8時間かかっていたものが2時間ぐらいでできるようになると、残り6時間でまだ顕在化していない課題を先回りして、どんどん拾って実践し、自分ができる範囲を広げていくようにしました。

 組織の中で動く上で最も重要なのは「信頼」だと思います。それも頭や口を動かすより、まずは行動して示し、実体化させることが必要なのでないでしょうか。例えば、どんなに頭が切れて「なすべきこと」「あるべきこと」を指摘できても、それがどんなに正しいことでも、口だけだと信頼されません。それをちゃんと行動で示して、圧倒的な成果を出して初めて「任せよう」と信頼を獲得できる。実際、事業部長になって多くの部下を持つと、リーダーやマネジメントを任せてみようと思う人を思い浮かべる時には同じように「信頼できるか」を第一に考えているので、あながち間違っていなかったように思います。

 秀逸なビジネスモデルを描ける人よりも、基礎体力とやり遂げる意思がある人の方が、方向性だけ確認すれば後はどんどん推進していける。そういう人に「裁量と権限」は集中していきます。人を引っ張っていく立場の人には、口だけではなくて、行動で示して実績を上げることを期待していますよね。エンジニアなら頭や口だけじゃなくて、手を動かしてモノを作る。それは事業をつくる、スケールするというフェーズでも同様だと思います。

――石垣さんご自身の今後については、どのようにお考えですか。

 実は、自分自身はいまだ「内発的なやりたいこと」は特にないんです。ただ業界的にはプロダクトもやり方もトレンドが変化する中で的確に対応するためには、視野を広げ、視座を高めることが欠かせません。かつての私は自分のことだけを考えていればよかったのが、チームや組織のことを考えるようになり、事業や社会課題について考えるようになり、それによって仕事のあり方も成果も大きく変わってきました。

 そして視座が上がるほど、求められるスキルや能力なども増えるので、自分がどの視座の段階にあって、その上に上がるにはどのような視野のポジショニングが必要なのか、どういう領域の知識スキルが必要なのかを常に意識しています。つまり、創りたいもの、進みたい方向を目指すというより、視座が上がれば自然と創りたいもの、進むべき方向も見えてくるのではないかと考えています。

エンジニアの「視座の高さ」と「外への意識」が事業をスケールさせる

――事業をつくる、スケールするということについて、テクノロジーがわかるエンジニアならではの経験や強みをどのように捉えていますか。

 まずミクロな部分では、コストに対する実感があることです。予算を管理する場面で、売上とコストのバランスを見て判断することが重要になりますが、多くの場合、コストの多くを占める人件費とサーバーコストをどうコントロールするかが大きなポイントになります。

 つまり、いざプロダクトがスケールした時に、エンジニア的な観点があれば、やみくもにコンテナの数を増やすのではなく、「減らすためにはどうすればいいか」「ライセンス料は適切か」という具体的な話をエンジニアと行えます。また、人員についてもプロダクトの規模から、適切なチーム編成が可能になります。もちろん、非エンジニアでもエンジニアとの連携で上手くいく場合もありますが、実際との齟齬が生じることも少なくありません。自分側に1つの案があり、エンジニア側の事情も理解しているというのは、協議する上でも強みになります。

 そして、マクロ的な部分では、テックカンパニーであるDMM特有の文化でもありますが、事業をソフトウェアとして捉え、データドリブンな事業判断がダイレクトにできるということがあります。例えば、プロダクトのユーザー属性はもちろん、ページ遷移やスクロールなど行動を全てトラッキングし、蓄積されたログデータをもとにKPIツリーを作り、仮説検証を繰り返していきます。こうした事業を構造化して数値ベースで考えることは、エンジニアリング的な観点や考え方が基盤になっています。そこはやはり、エンジニアリング的な知見や経験が役に立っていると感じますね。

――エンジニアリング的な知見や経験といった時、近年はノーコードなどプロダクト開発も大きく様変わりし、スキルセットにも変化が生じています。そうした状況を踏まえ、若手エンジニアは今後どのようなスキルや考え方を身につけるべきだとお考えですか。

 私もそうでしたが、若手エンジニアは日々の業務をこなすんで手一杯になり、はじめはどうしても組織の中ばかりを見て仕事をしまいがちです。新卒、若手・中堅に関わらず、”組織に染まる”のはあまり望ましい状態ではなく、もっと外を見ながら自分の市場価値を意識することが大切だと感じています。要はバランスですが社外を意識し、市場でも通用するスキルや知識を持っている人が社内で活躍することで新しい事業価値を生み、組織をスケールさせるのだと思います。もちろん、外ばかり向いてコミュニティ活動には熱心だけど、社内ではやる気がないという人もいるので、バランス感覚は大事だと思いますが(笑)。

 業界全体で言えば、数年ぐらい前からインフラレイヤーではAWSやGCPなどが登場して、以前のようなネットワーク設定をガッツリいじるような機会も少なくなりました。SaaSやPaaSも普及して、フロントエンドさえ作れればアプリケーションができてしまう時代になりつつあります。おそらく数年で、インフラレイヤーや機械学習の分野はAmazonやGoogleなどプラットフォーマーがさらに強くなるでしょう。そうなった時、エンジニアは”武器”を作る側か、その武器を使って事業を伸ばす側の二極化が進むのではないかと考えています。

 前者についてはもう完全にスペシャリストというか、低レイヤーまでしっかりと学んでいく必要があるでしょう。一方、後者の武器を使ってスケールする側は、私もそうですが技術をずっと突き詰めていくよりも、その技術を使ってサービスを作りたい人の方が多いはずです。そうなると、日々コードを書いてプロダクション環境に対してコミットしていなくても、新しい技術が登場した時にプロダクトや事業に使えそうだという勘所が重要になり、そのためにエンジニアリングに加えて、マーケティングやデータ分析、財務諸表など、幅広い知識が大量に必要になってきます。つまり、目の前のことをやるだけでなく、その周り、その上を意識した「視座の高さ」がこれからのエンジニアのキャリア構築には不可欠になってくると思います。

 視座を高めるためには、本を読むのもいいと思いますが、実際に高い視座を持つ人と話すことが一番早いと思います。例えば、DMMでは直属の上長と隔週に1回は1on1を行い、リクエストすれば他の人とも1on1を設定できるようになっています。そこで私は、Slackでいろんな人にアプローチし、時間をとってもらって話を聞かせてもらいました。以前だと、飲みニケーションなどで話す機会もあったと思うのですが、今はそれも難しいので、自分から働きかけていくことが大切だと思います。

――積極的に人とふれあい、視座を高めていくことがエンジニアとしてのキャリアにもつながるというわけですね。この度は、大変興味深いお話をありがとうございました。



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著者プロフィール

  • 伊藤 真美(イトウ マミ)

    エディター&ライター。児童書、雑誌や書籍、企業出版物、PRやプロモーションツールの制作などを経て独立。ライティング、コンテンツディレクションの他、広報PR・マーケティングのプランニングも行なう。

  • 鍋島 英莉(編集部)(ナベシマ エリ)

    2019年8月に翔泳社へ入社し、CodeZine編集部に配属。同志社大学文学部文化史学科卒。

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