はじめに
XMLの大きな特長は、データと表現を分離できるという点です。これは特に説明の必要もなく、一般的に言われていることです。しかし、XMLデータとXSLT(XSL Transformations)スタイルシートを組み合わせると、情報を動的に変換し、思いどおりの形式で提示するための強力なツールになります。
また、あるアプリケーションで作成したXMLドキュメントが、そのXMLデータ構造が違うために他のアプリケーションで処理できないという状況はよくあります。既存のXMLデータ構造を処理可能な構造に変換するには、XSLTを使用する必要があります。Microsoftは効果的なXSLT処理用ビルトインサポートの必要性を認識し、高度に最適化された一連のクラスを.NET Framework 2.0に組み込みました。この記事では、XSLT関連クラスを使用してリッチなASP.NET Webアプリケーションを作成する例を紹介しながら、.NET Framework 2.0が提供する豊富なXSLTサポートについて説明します。
概要
まず、System.Xml.Xsl名前空間に含まれているXSLT関連のコアクラスを次に示します。
- XslCompiledTransform
.NET Framework 2.0でXSLTプロセッサとして動作するコアクラス。XMLデータを、HTML、テキスト、他のXMLなど、他の構造に変換するためのクラスです。
- XsltArgumentList
不特定数のパラメータと拡張オブジェクトをXSLスタイルシートに渡せるようにします。
- XsltCompileException
XSLスタイルシートでエラーが発生すると、この例外がLoadメソッドによってスローされます。
- XsltException
XSLスタイルシートの処理中に例外が発生するとスローされます。
.NET Framework 2.0では、.NET Framework 1.xのXSLTで使われていたXslTransformクラスはサポートされていません。代わりにlCompiledTransformクラスが使用されています。このXslCompiledTransformでは、パフォーマンスだけでなく、XSLT 1.0仕様に対するサポートも改善されています。.NET Framework 2.0以降では、XSLTはXslCompiledTransformクラスから実行することをお勧めします。XslCompiledTransformクラスの設計はXslTransformクラスと似ているので、既存のコードをXslCompiledTransformクラスに移行することも簡単にできます。
サンプルコードを見る前に、必要となるXslCompiledTransformクラスの重要なメソッドについて簡単に説明します。
- Load
このメソッドには複数のオーバーロードがあり、URLを指定する文字列、XmlReaderオブジェクト、XPathNavigatorオブジェクトなどの多様なリソースからXSLスタイルシートをXslCompiledTransformオブジェクトにロードすることができます。
- Transform
Loadメソッドを使用してロードされたスタイルシートを使って、XMLデータを指定フォーマットに変換します。
実装
XSLTクラスとそのメソッドについては簡単に説明しました。ここで、シンプルなXSLTの例を見てみましょう。この記事の目的は、AdventureWorksデータベースからXMLデータの形式でデータを取得し、そのデータをXSLTを使って変換し、ブラウザでHTMLとしてレンダリングすることです。
シンプルなXSLT
この例では、カテゴリデータをXMLストリームとして取得して表示用のHTMLに変換するシンプルなASP.NETページを作成します。ASP.NETページを見る前に、まず「Category.xsl」という名前のXSLファイルを見てみましょう。
<?xml version="1.0" ?> <xsl:stylesheet version="1.0" xmlns:xsl="http://www.w3.org/1999/XSL/Transform"> <xsl:output method="html" /> <xsl:template match="/"> <HTML> <HEAD> <TITLE>Simple XSLT Transformation</TITLE> </HEAD> <BODY> <H2>Simple XSLT Transformation</H2> <table border="1" cellSpacing="1" cellPadding="1"> <center> <xsl:for-each select="//Categories"> <!-- Each record on a seperate row --> <xsl:element name="tr"> <xsl:element name="td"> <xsl:value-of select="ProductSubcategoryID" /> </xsl:element> <xsl:element name="td"> <xsl:value-of select="Name" /> </xsl:element> <xsl:element name="td"> <xsl:attribute name="align">center</xsl:attribute> <xsl:value-of select="ModifiedDate" /> </xsl:element> </xsl:element> </xsl:for-each> </center> </table> </BODY> </HTML> </xsl:template> </xsl:stylesheet>
このXSLファイルには、Categories
要素に含まれるすべての要素をループ処理するためのロジックが含まれています。ASP.NETページのコードを以下に示します。
<%@ Page Language="C#" %> <%@ Import Namespace="System.Data.SqlClient" %> <%@ Import Namespace="System.Xml" %> <%@ Import Namespace="System.Xml.Xsl" %> <%@ Import Namespace="System.Xml.XPath" %> <%@ Import Namespace="System.Web.Configuration" %> <script runat="server"> void Page_Load(object sender, System.EventArgs e) { string connString = WebConfigurationManager.ConnectionStrings ["adventureWorks"].ConnectionString; using (SqlConnection connection = new SqlConnection(connString)) { connection.Open(); SqlCommand command = new SqlCommand ("Select * from Production.ProductSubcategory as Categories " + " for xml auto,elements", connection); XmlReader reader = command.ExecuteXmlReader(); XPathDocument xpathDoc = new XPathDocument(reader); string xslPath = Server.MapPath("App_Data/Category.xsl"); XslCompiledTransform transform = new XslCompiledTransform(); transform.Load(xslPath); transform.Transform(xpathDoc, null, Response.Output); } } </script>
WebフォームのPage_Loadイベントでは、ProductSubcategoryテーブルからXMLの形式でデータを取得し、外部XSLTスタイルシート(Category.xsl)を適用してHTMLを生成します。次に、このHTMLをクライアントブラウザに直接書き込みます。これは、Response.OutputオブジェクトをTransform()
メソッドに渡すことによって実行されます。上記の例では、XPathDocumentクラスがハイパフォーマンスのXML文書処理用に最適化されているため、このクラスを使ってXML文書がロードされています。
ブラウザを使用してページに移動すると、次の画面が表示されます。