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救急医療の現場で動き始めたDXの舞台裏(AD)

なぜ医療現場のDXは進まないのか? FileMakerが支える、救急医療システムの開発を阻む意外な"壁"

一人でも多くの命を救うためのシステム開発とは? 救急医療の現場で動き始めたDXの舞台裏 第2回

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15人のエンジニアのうち、5人が医師

 2022年7月現在、TXP Medicalのエンジニアは15人。内11人がFileMaker専任のエンジニアだ。「FileMakerエンジニア11名のなかで5人が私と同様、医師で臨床業務との掛け持ちです。彼らには病院側とやり取りする際のフロントに立ってもらうことが多いです。医療現場の要望を聞いて感覚的にシステムに落とし込むことにおいて医師エンジニアは卓越しています」(園生氏)

 そのほかのメンバーは、臨床工学技士や看護師の資格を持っていたり、電子カルテの開発経験のあるエンジニアなど、医療業界に関する知識を持っているメンバーが多いが、FileMakerの開発経験がある異業種エンジニアもいるという。医師との兼業エンジニアが現場の要件を適切にヒアリングし、それを開発経験豊富なエンジニアがシステムとして仕上げていく。

 TXP Medicalが開発しているのはNext Stage ERだけではない。ICU患者ダッシュボードNext Stage ICUのほか、救急隊連携システム、ドクターカーアプリ、問診システム、処置室音声入力アプリなどのオプション機能も開発している。医療機関や救急隊に提供されているアプリは、FileMakerだけですべてが開発できるわけではない。例えば、救急隊からの情報を受けるところや問診アプリはWeb関連技術を使って実現している。このため、医療業界の経験がなかったり、FileMaker以外のITエンジニアも、JavaScriptや、Python、R言語など TXP Medicalでは活躍する余地はたくさんあるという。

Next Stage ICU の重症度スコア/臓器別アセスメント画面。基幹システムからのデータ収集や、重症度スコアの計算は自動化され、アセスメント記載も可能だ。
Next Stage ICU の重症度スコア/臓器別アセスメント画面。基幹システムからのデータ収集や、重症度スコアの計算は自動化され、アセスメント記載も可能だ。

 救急医療システムの開発には、一般的なシステム開発と大きな違いがある。第一に24時間365日、止めることが許されないシステムであること。第二に紙が競合になることだ。一般的な業務システムの場合、処理の時間が延びたとしても慣れの問題として認可される。

 一方、救急医療システムの場合は、患者にとってベストな方法をとるべきという考えが浸透しているため、リリース当初から紙と同等のスピード感や価値を提供しないと認めてもらうことが難しい。そして最も大変なのが医師は医療用語で話すことも多いため、各医療現場のコミュニケーションの難しさだという。

 「例えばSOFAスコアという救急治療で一般的に使われる臓器障害の評価法があります。それを表示する画面を作ってと言われると、医師や急性期に携わる医療スタッフなら必要なフィールドなど画面イメージがすぐ思い浮かびますが、業界知識が無ければ随時現場の医師にヒアリングしながら設計・開発することになります。そうなると現場の医師は忙しいので、面倒に感じてくる。それでITエンジニアとの距離が縮まらないんです」(園生氏)

 このため、医療機関の実情に併せてTXP Medical所属の医師がアドバイザーとなり導入支援していることが成功に繋がっているという。

Next Stage ERはまだ完成形とは言えない――挑戦し続ける組織

 「現場で救えなかった命を、医療システムで救う」。これがTXP Medicalの使命である。そのためには、一つひとつの現場に留まる情報を、テクノロジーでつないで、医療業界全体の基盤をつくることが必要になる。病院向けのNext Stage ERは、形として出来上がってはいるが、オンプレミス前提の医療機関のアップデート業務など運用効率化や、最新機能のタイムリーなリリースなどの観点から、解決すべき課題もある。それでも、園生氏率いるTXP Medical の開発チームは進化の歩みを続けている。

 iPhoneを活用したアプリは、さらなる機能拡張を計画している。「現在のアプリでは音声入力をボタンで起動し、クラウド側でテキスト化した結果を返す仕組みとなっているため、リアルタイムに患者の情報がデータ化される未来にはまだまだ遠い。Siriなどの音声コマンディング機能を使ってハンズフリーでリアルタイムに情報を書き込む、画像解析APIを使って、患者の状況をトラッキングする、そういうアプリの実現にも足を踏み入れたばかりです。まだまだ発展途上なので、医療DXに貢献できるよう、進化させていきたいですね」(園生氏)

豊田市消防本部で実際に NSER mobile を使用して入力している救命救急士
豊田市消防本部で実際に NSER mobile を使用して入力している救急救命士

終わりのない飽くなき追求から生まれる医療DX

 医療業界全体のDXには、医療情報システムの本丸である電子カルテが大きな壁になっているといわれている。そのなかで、実際に電子カルテだけでは業務を回しにくい救急という領域でデジタル化を一気に推進しDXを実現していくことで、医療業界全体に新風を吹かせることが期待される。

 「医療にかかわるシステムは直接的にも間接的にも命に関わります。つまり命を救うシステムとも言えます。そういう社会的意義の高いモノづくりの最前線で働けることはやりがいになります。人力を介さずに患者の状態や医療の進捗状況が完全同期されてデータ化されているという救急システムの理想の姿は、まだ私たちも達成できていません。さらなる自動化を進め、処置の実施と共にすべてがデータ化される世界を目指していければと思います」(園生氏)

 命を救うシステムだからこそ、ハードルは高いと思う人も多いかもしれないが、TXP Medicalでは、命に関わるところ、関わらないところと領域をわけて、各エンジニアがよりよい温度感で開発できるような環境になっているという。

 「他分野で開発していたエンジニアも、ハードルを感じる必要はありません。命を救う、社会的意義の高く、さらに現場のダイナミクスを感じられる仕事に関心のある方は仲間に加わってほしいです」(園生氏)

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この記事の著者

中村 仁美(ナカムラ ヒトミ)

 大阪府出身。教育大学卒。大学時代は臨床心理学を専攻。大手化学メーカー、日経BP社、ITに特化したコンテンツサービス&プロモーション会社を経て、2002年、フリーランス編集&ライターとして独立。現在はIT、キャリアというテーマを中心に活動中。IT記者会所属。趣味は読書、ドライブ、城探訪(日本の城)。...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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