「ARISE university」で学び合いの文化を醸成
ARISE analyticsで求められるAIエンジニアのスキルについて、渡邉氏は次のように語る。「統計学、機械学習の教科書的な知識を突き詰めることはもちろんですが、一番大事なことはお客さまが抱えるビジネス上の課題をデータサイエンスの問題として変換できるスキルがあること。なぜなら、教科書的な問題が現実に落ちているわけではないからです。その上で解くための手法や実装力も必要です。例えば予測モデルを作るのであれば、PythonでPoCができるレベルのコードが書けることが重要です」(渡邉氏)
こう聞くと、敷居が高そうに感じるかもしれないが、同社には「ARISE university」という一人ひとりが成長できる教育体系が用意されている。ARISE universityはトレーニング、ラーニング、キャリアという3つのカテゴリーごとにさまざまなメニューを用意し、OJTを支える教育の仕組みとなっている。
入社時に用意されている「On-Boarding」カリキュラムもその一つ。新卒社員にはトータル4カ月に及ぶ集中カリキュラムが用意されている。最初の1カ月で社会人として必要なコアスキルを学ぶ。その後3カ月間は「データサイエンティストブートキャンプ」に参加し、データサイエンティストとして求められるベーシックな知識・スキルを学び、8月に各部署へ配属されるという。配属後は、四半期毎に自身の目標に対する振り返り(リフレクション)を実施している。
そのほか、金曜日の午前中は自己研鑽をする時間としており、各種勉強会やLightning Talk(LT)が実施され、2022年はすでに99もの勉強会やLTがラインナップされている。実際、渡邉氏も毎週、LTや勉強会に参加。もちろん発表者として登壇することもある。LTに参加する良さは「毎週、お客さまが現実に抱える課題をどう解決したかなど、実際に業務で使われた手法が紹介される。各チームが汗をかいた結晶は非常に価値のあるもの。それを共有してもらえるので、非常に勉強になる」と渡邉氏は話す。
さらに、自習支援や書籍補助などのメニューを用意。部活動の支援もその一つだ。渡邉氏が所属するKaggle部では、Kaggleを中心に国内外の分析コンペティションに参加している。「Kaggleのコンペに参加する際にはAWSを利用しているのですが、Kaggleへの挑戦は3カ月というスパンになり、大規模な処理になるため、インフラのコストが数十万円もかかります。この費用をサポートしてくれるので、非常に助かっています」(渡邉氏)
さらに、リーダーシップキャンプ、キャリアインタビュー、キャリアチャレンジなどキャリア開発支援メニューが用意されている。
制度が充実しているだけではない。向上心のある人たちが集まっているのもARISE analyticsの特徴だという。現場力を向上させるワーキンググループ活動や個人のスキルを向上させるようなギルド活動など、さまざまな活動が発足し、学びあいの文化が醸成されているのだ。
渡邉氏も「良さそうな本が出れば、Slackに『有志勉強会を開催しませんか』という流れがすぐできるんです。学ぶ文化ができているので、私も常に新しく出る論文や本をチェックしたり、データサイエンス界隈の有名人のSNSをフォローして情報をキャッチし、社内にシェアしたりということを自然に行うようになりました」と続ける。
データサイエンスを突き詰め、お客さまの課題を解決していきたい
今後、渡邉氏はAIエンジニアとしてどのようなキャリアを描いていこうと考えているのか。「2つ目標があります」と渡邉氏は語る。
「一つはデータサイエンスを突き詰めること。統計学や機械学習は、学問として興味深いと思っているからです。ARISE analyticsの社内にも同じような好奇心を持っているメンバーがいて、先のような学びの循環のサイクルもできているので共に成長できると思っています。
もう一つは、課題ベースの考え方を身につけること。つまりビジネス上の課題、お客さまの課題に対して適切な技術を目利きする力を養うことです。現実の課題はデータサイエンスの世界だけで完結していません。データサイエンス以外の要素を含めて、いろいろな要素が組み合わさって一つの課題になってしまっているので、うまく分解してデータサイエンスで解ける形にする必要があります。そのうえで、目の前の課題を解決するにはどういう技術が必要で、それが不足しているのであればどうやってキャッチアップしていくのかを考えられるようになりたいです」