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開発で培った知見は最初からフルオープン TISが技術ナレッジサイト「Fintan」で目指す世界とは

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 TISでは技術ナレッジやノウハウを「Fintan」というサイトで公開している。一般的にIT企業がエンジニアブログでノウハウを公開していることは多いが、Fintanは少し違う。どのような背景や目的があり、情報発信をしているのか。どんなコンテンツがあるのか。Fintanを運営しているテクノロジー&イノベーション本部の本部長 北直人氏と、テクノロジー&イノベーション本部でマネジメントをしながら、Fintanの運営を担当する秋里美和氏に聞いた。

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本来なら門外不出? TISのノウハウがあますことなくFintanで公開

──TISが運営する「Fintan(フィンタン)」とはどのようなサイトですか?

秋里:TISインテックグループの技術ナレッジやノウハウの共有サイトです。2018年から、開発現場で使えるナレッジを主に公開しています。現時点では270記事ほどあります。

 当初はアプリケーションやソフトウェア開発のナレッジ、SI活動における要件定義フレームワークやテスト計画書のナレッジなどがベースでした。近年TISの事業形態が多岐にわたるにつれ、新規事業開発、UI/UXデザイン、先端技術研究など領域が増えてきています。ナレッジだけでなく開発・研究事例も積極的に発信しています。最近では量子コンピューティングやXRなど、テクノロジーカットの発信も増えています。

Fintanトップページ。Fintanというユニークな名前は、ケルト神話に登場する知恵の鮭の名前から取られている。
Fintanトップページ。Fintanというユニークな名前は、ケルト神話に登場する知恵の鮭の名前から取られている。

──Fintanを始めようとしたきっかけは何でしょうか?

北:TISにおけるソフトウェア開発の基本戦略のなかで、比較的汎用(はんよう)性が高く長く使えるものは、コストをかけて開発し、誰もがすぐに再利用できる(Ready-to-use)状態にする、というものがあります。例えばTISがミッションクリティカルなシステム構築で培ったノウハウを集約したJavaアプリケーションフレームワーク「Nablarch」や、テストを計画する際に検討すべきトピックを網羅した「全体テスト計画ガイド」などです。これらすべてみんなで共有できるように用意した置き場がFintanです。

 Fintanは最初からインターネット上に置くことにしました。社内だと使い勝手が悪いのです。例えばお客さまに説明する時、委託先に渡す時、わざわざ持ち出しの申請をしなくてはなりませんでした。私たちはオープンイノベーションを進めているのですから、ポータビリティの観点から最初からインターネット上で公開しようと決めました。加えて、使ってもらえれば成果としても大きくなります。隠したところでメリットは生まれません。

TIS株式会社 常務執行役員 テクノロジー&イノベーション本部長 北直人氏
TIS株式会社 常務執行役員 テクノロジー&イノベーション本部長 北直人氏

──自社で使う情報を公開されているのですね。

北:公開しているので、TISで頑張って作りあげたものは退職しても使い続けられますよとメンバーに言っています。ただし表に出すのだから、ちゃんとしたものにして出しなさいとも。

秋里:だからドキドキします。ベテランも若手も、表に出すからには緊張感を持って作っていますね。

──CodeZine読者など、外部の開発者におすすめの活用方法はありますか?

秋里:カテゴリ」を見ていただき、まずはご自身の興味関心があるところを眺めていただくところからスタートしてほしいなと思います。例えばWebアプリ開発のエンジニアなら「Webアプリケーション開発」モバイル系エンジニアなら「モバイルアプリケーション開発、フロントエンドエンジニアなら「UX/UIデザイン」も参考になると思います。

TIS株式会社 テクノロジー&イノベーション本部 デザイン&エンジニアリング部 副部長 秋里美和氏
TIS株式会社 テクノロジー&イノベーション本部 デザイン&エンジニアリング部 副部長 秋里美和氏

──どんなコンテンツがよく読まれていますか?

秋里:今は圧倒的に「ソフトウェアテスティング」カテゴリのコンテンツと、「エンジニアに『効く』デザイントレーニング」ですね。

 前者はTISの開発で実際に使うテンプレート、テストをどのような観点で計画するべきかというナレッジ、実際のテストにおけるチェックリストなどを網羅的にそろえています。TISのさまざまな開発プロジェクトの中で現在も使い続けているものですので、胸を張っておすすめできます。後者はエンジニアに必要なデザインスキルを体系立てて紹介しています。これまで一般にもあったようでなかったナレッジで、すごく人気です。

──他にも推しのコンテンツはありますか?

秋里:他に技術研修のコンテンツもおすすめです。「エンジニア育成・学習」というカテゴリにありますが、アプリケーションアーキテクチャの学習コンテンツクラウドネイティブ・アプリケーション開発の学習コンテンツなど、弊社の技術研修のトレーニングセットをそのまま出しています。門外不出のようなものですけど……。

北:門はフルオープンです(笑)

──新規事業開発に関するコンテンツもありますよね。

北:新規事業開発のためのステージ・ゲートプロセス」という、TISが新規事業を開発する際のベストプラクティスとなる開発プロセスを公開しているコンテンツは、本一冊分くらいのボリュームがあります。あまりに量が多くて、レビューするのも大変なくらいです。実践しながらフィードバックを反映して改善しています。インターネットのコンテンツならではのメリットですよね。

秋里:新規事業開発はまさに今、挑戦している真っ只中ですが、やはりものすごくつまずきます。つまずいて即座にコンテンツにもフィードバックするので、更新頻度が高いのですが、最新のベストプラクティスを見ていただけるのでおすすめです。

──他の企業でも技術ブログを運営しているところが多いですが、Fintanはどのような特徴がありますか?

北:他との違いは、Fintanは自分たちがシステム開発のノウハウを共有するための場所として始まったところです。その場所を社内のクローズドなネットワーク上ではなく、インターネット上に用意したというところが大きな特徴になると思います。

 もともとFintanのコンテンツは多くの開発現場で実際に使うことを目的にしているので、ツールやガイドは一度実践して改善したのちに掲載するようにしています。「Ready-to-use」なものはベテランが執筆する機会が多いですが、新人ならではの学びに関するブログ的な記事など、若手もどんどん書いています。

──事例をFintanに掲載する場合は、どのように進めていますか?

北:事例を掲載する場合は、内容について開発主管部門の合意を得た上で掲載しています。ほとんどのプロジェクトにはFintanに公開済みのノウハウやツールが持ち込まれているので、実践した結果がさらにノウハウとして公開され、ノウハウやツールも進化していくイメージです。

開発とアウトプットはセット 発信が振り返りにつながる

──Fintanを運営しているTISのテクノロジー&イノベーション本部(T&I)について教えてください。

北:T&Iは「技術による既存事業の強化」「将来の事業の核となる技術の研究開発」「先進技術を用いた将来に成長を見込める新規事業の立ち上げ」をミッションにしています。下部組織にはテクノロジー&イノベーション推進室、デザイン&エンジニアリング部、加えて開発基盤センター、戦略技術センター、インキュベーションセンターと3つのセンターがあります。人員構成ではエンジニアが3分の2で多くを占め、他にはデザイナー、リサーチャー、ビジネスに関わる人がいます。

秋里:T&Iのスローガン「Create and Boost Business with Technology」が表すように、技術で事業を創造し、加速させるところが特徴です。技術の開発、技術の研究、技術で新規事業に取り組んでいる組織が中心となって、Fintanを生み出しています。

──Fintanの運営にはどのような狙いがありますか?

北:1点目は「共有・再利用によるTIG(TISインテックグループ)の開発競争力強化」です。共有・再利用の効果が高いものはすべてFintanに掲載するという方針です。2点目が「共通認識の深化・拡大によるWin-Win関係の構築」で、あらゆる人々がコンテンツを活用することで成果を最大化し、生産性や品質を高める好循環を生むことを目指しています。3点目が「外部から見たTIGの技術力・イノベーション力の評価向上」で、我々の活動を広く世の中に知ってもらい、一緒に働く仲間を増やしたいと思っています。

──実際にFintanはどのような体制で運営していますか?

秋里:多少の変動はありますが、基本的には4名前後で運営しています。コンテンツ執筆は運営とは別として、T&Iのほか、TISインテックグループのさまざまな組織から寄せてもらい、サイトに掲載しています。あとサイトの見せ方や改善はT&Iエンジニアが中心となり、トライアンドエラーを繰り返しています。自分たちの資産なので好きなようにチャレンジできるのも特徴です。

──コンテンツを執筆する側のエンジニアの意欲はどうですか?

秋里:最近「みんなでFintanを盛り上げたい!」と声をかけたら、「こんな企画をやりたいです」と自主的な申し出が増えてきました。すごくうれしいです。アウトプットしようという文化が根付き始めました。

北:若手が「自分も」と言い出し始めたのはここ最近です。Qiitaでも何でも、何を出すか出さないかを考えるより、始めから出し続けるように意識してもらいたいですね。

秋里:Fintanに書くことで、案件を終えた後の振り返りになるというのもいい効果だと思います。案件とアウトプットはセット。他の案件と完全に内容がかぶっていれば別ですが、私たちが携わる開発にそういうことは滅多にありませんので。インターネットにアウトプットしていく習慣、出しても平気だというマインドにしていけるように意識しています。

北:公開することはいいことしかないです。悪いことは思いつきません。

エンジニアたちが自主的にアウトプットする文化が芽生えてきた

──Fintanを運営することで起きた、いい変化はありますか?

秋里:こうした技術情報発信をしていることで、「TISさん、こんなことできるんですね。一緒にやりませんか」お客様からお問い合わせをいただくことはこれまでも何度かありました。

 社外にいるときから興味をもってくれて、TISにジョインしてくれた仲間もけっこういます。就職活動している学生さんで「Fintanめちゃめちゃ見ていました」と言ってくださる方も増えてきています。

北:エンジニアも変化しています。当初は、Fintanに執筆することは追加の負荷、オーバーヘッドになると感じる人もいましたので、出てくるコンテンツもわずかでした。しかしコンテンツは、公開だけではなく、次につないでいくことが目的です。そうしたアウトプットの理解や意識はできてきています。今ではアウトプットが増えてきています。

 それぞれどこかでFintanのコンテンツで恩恵にあずかっているはず。今度はそれを自分から返していこうという気持ちになってきたのだと思います。

秋里:企業に所属していると個人の活躍は外から見えにくいです。中にはたくさんすごい人が居るのに。そこでFintanでは「できるだけ個人名を名乗ろう」と促しています。最近では学生向けに活動を発信してくれた若手メンバーに対して、学生さんが「あの記事を書いていた人ですね!」と感激してくれたこともありました。個人のブランディングやモチベーションアップにつなげてもらいたいと思います。

──これからどんな方向を目指していきたいですか?

秋里:より多くの方に認知・活用していただけるサイトを目指したいです。現在MAU(月間アクティブユーザー)では2万ほどです。2024年には10万と目標を掲げています。より多くの人にご覧いただけるように、コンテンツ拡大、PRやサイト改善をしっかりやっていきたいと考えています。「現場で培ったナレッジ・ノウハウを発信する」という軸は変えることなく、見せ方やPRは状況に応じてフレキシブルに変化させていこうと思います。

──最後にFintanに興味を持った方へメッセージをお願いします。

秋里:CodeZine読者のように開発や技術に携わる方であれば、まずは興味ある範囲からご覧ください。これからも積極的に発信していこうと思いますので、ぜひウォッチしていただければうれしいです。

北:みんなに活用してもらえるとうれしいです。例えばSpringやReact Nativeについて、みんな悩むところがあると思います。そこで私達の考えや、取り組んできた設計などを発信することで、業界全体の理解や生産性が高まる、ぐるっと回って我々のところにも帰ってくると考えています。ですので、活用してもらうのが一番うれしいです。

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【AD】本記事の内容は記事掲載開始時点のものです 企画・制作 株式会社翔泳社

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