ブラウザさえあれば開発できる! 理想の環境を断念した理由
当初、作成したい開発環境は図1のような構成を考えました。
この環境の利点はなんと言っても、ブラウザさえあればすぐに開発を始められることです。特に、早急に対応しなければならないことが生じた場合にブラウザだけで作業ができるので、iPadやAndroidタブレットでも作業ができるのは助かります。実際に、タブレット端末で作業するのは少々使いにくさがありますが、コードを確認するなどの用途であれば特に問題は感じませんでした。そして、開発者が利用するPCにはソースなどのファイルがまったく存在しないために、知的財産の流失にも考慮されています。さらに、サーバ上のアクセス権も必要最低限になっているために、外部からの想定しないセキュリティリスクも低く抑えられています。
セキュリティ面やエンジニアが手軽に開発に着手できる面では非常に良い構成だと思います。しかし課題がなかったわけではなく、結果的にこの構成は断念しました。
この構成を作る上で最も大きな課題は、サーバ上で動作するIDEの実用性とそのコストです。筆者の会社ではJetBrains社のIDEを使っており、Projectorという製品を使うとJetBrains社のIDEがサーバ上で実行できます。つまり、JetBrains社の各種IDEがブラウザを通じて同じように実行できます(図2)。
しかしながら、この製品は残念ながらこの記事を企画したあとに開発が継続されなくなってしまいました。開発が継続されなくなった理由として、ローカル上で実行するIDEと同じ操作性で使えなかったのが原因のようです。
たしかにほとんどの場合では問題ないのですが、使っていると日本語入力がうまく動かないなど細かいところで気になる点はありました。また、JetBrains社のIDEはメモリやCPUなども他のIDEなどに比べて求めるスペックが高く、サーバ側で実行するのに向いていないです。そして、各々のエンジニアが好きなIDEを使いたいという面からもこの構成は断念しました。
JetBrains社も別な方法で同じような構成を実現しようとしているようですので、今後のソリューションについても期待したいと思っています。また、軽量なIDEも開発を進めているようなので、いずれはJetBrains社のIDEが重いという課題も解決できることでしょう。