Contextとは
BuildContextの具体的な内容を説明する前に、まずはContextという言葉からプログラミングにおける抽象的な用途について言及します。
Flutterに限らずさまざまなフレームワークではContextという用語がよく利用されます。そして、多くの場合、それらもなんとなく利用されている状況です。そこで、まずはContextという言葉についてより深く考えてみます。特に、FlutterにおけるBuildContextの説明ではよくわからないという方は、このようなより抽象的に考えることで分かりやすくなると方もいると思います。
Contextの一般的概念
Contextを直訳すると「文脈」や「背景」や「状況」という意味があります。筆者もContextという言葉の意味と、プログラミングで使われるContextの意味がイメージできず非常に苦労したのを覚えています。しかし、このContextのイメージがつかめると、フレームワークがどのような構造で全体を管理したいのかという設計者の意思をイメージできるようになります。
例えば、ビジネスコンテキストという言葉を元に、より一般的なケースを考えたものが図1です。
例えば、ビジネスという用語の具体的な意味は非常に曖昧ですが、状況とその場において意味の範囲を考慮して多くの方は無意識に理解しているはずです。状況やその場とは、「流行」や「顧客」「予算」などなどさまざまなものについて話をしている間で共通となる背景や制限を考慮して複合的に理解しているはずです。
つまり、それらを厳密に定義せずにその場の状況に応じて全体を示す言葉が「コンテキスト」と言えます。
従って、同じ「ビジネスコンテキスト」を共有する場合には、「市場」と言っても明確な不変の「市場」の定義があるわけではなく、その場においての限定的な「市場」という意味になります。そして、その「市場」内における「競合」と言えば、その「ビジネスコンテキスト」を考慮した「競合」を意味することになります。
プログラミングにおけるContextとは
プログラミングの世界ではContextとは、そのフレームワークを使うプログラマから見た時の抽象的グループと理解することもできます。例えば、リクエストを受けて処理をするアプリケーションをする場合には、図2のようなコンテキスト構造をとることが多くあります。
各プログラムでは、リクエストのデータにアクセスしたり、データベースを利用したりします。一方、フレームワーク側から見た場合には、すべての機能やデータについて制限なくアクセスできることは好ましくありません。
そこで、実装するプログラムから見た「データベース」や「データ」にアクセスするための抽象的なグループ概念をフレームワークが提供します。そして、その場合に使われるのが「コンテキスト」という用語です。
また、グループ概念もプログラム上から見たときの「リクエスト」の上位に「セッション」、そして、その上位に「アプリケーション」というように階層を持っている場合があります。
このように階層構造を持たせることにより、各プログラムからそれらの制限と機能の範囲をより明確にしつつ、各機能をより安全に利用させることができるようになります。そして、それらの概念がフレームワーク設計者の概念を理解することにもつながるはずです。